レトロなローカル列車から眺める日向灘の絶景! 九州南東部を走る、風光明媚な「JR日南線」の旅

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2023年12月08日 21:21  All About

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九州の宮崎駅から志布志駅を走るローカル線、JR日南線。太平洋沿いを走るイメージがあるが、山間部を走る区間も意外にあり、車窓は変化に富んでいる。普通列車に乗って、ゆっくり旅してみよう。
宮崎駅を発車して、日向灘(太平洋)を眺めながら南下するJR日南線。もっぱら宮崎県内を走行するが、最後は少しだけ鹿児島県に入り、志布志駅が終点となる行き止まりのローカル線だ。海の絶景が見られるイメージがあるものの、山間部を走る区間も意外にあり、変化に富んだ車窓が展開する。今回は、普通列車に乗って、のんびり旅してみたい。

黄色い列車に乗って宮崎駅を発車

高架の宮崎駅。日南線に直通する列車は、2面4線というそれほど大きくはない駅の2番線から発車する。

宮崎駅が終着の上り列車から大勢の通勤通学客が吐き出されると、その車両が折り返し油津行きとなる。2両編成の先頭車両のみが、ひときわ目立つ黄色の塗装だ。

ヘッドマークのように丸い青地の円に白いイルカがジャンプしているようなイラストが海岸沿いに走る日南線をイメージしている。車体側面の窓下には、大きなNICHINAN LINE の文字。

国鉄時代から使われている古びたキハ40形ディーゼルカーも、こうして派手な塗装をまとうと新鮮だ。ただし、車内は普通のキハ40形と同様、4人向かい合わせのボックス席が並び、レトロな感じは否めない。

全てのボックス席が埋まるものの、相席にはならないくらいの混み方で列車は定時に重々しいエンジン音を響かせて宮崎駅のホームを離れた。進行方向左側に海が見えるので、そちらのボックス席に陣取ったのだが、東を向いて座ることとなり、朝なので眩しいことこの上ない。

宮崎駅を出るとすぐに大淀川を渡る。県庁所在地の駅近くだけあって、河岸にはホテルやマンションが立ち並び、都会の風景だ。

沿線にはリゾート地が点在

一駅だけ日豊本線を走り、南宮崎駅から日南線に入る。とはいっても、相変わらず架線の下を走る電化区間だ。

これは、宮崎空港へ向かう区間が特急電車の走る電化路線だからで、次の田吉駅を出ると、電化している宮崎空港線が左へ分岐していく。こちらは、いよいよ単線非電化のローカル線へと進んでいく。ローカル線とはいえ、運動公園駅、子供の国駅、青島駅とリゾートエリアらしい駅が続く。

並行する道路脇には背の高いヤシの木が植えられ南国ムードいっぱいだ。多くの人はクルマや観光バスで訪れるようで、日南線は蚊帳の外。週末を中心に観光特急「海幸山幸」が走っているが、乗車日は平日だったので乗ることはできなかった。

それでも、普通列車に観光客は乗っていたようで、青島駅に到着すると、かなりの人が降りていき、車内は寂しくなった。

青島には青島神社があり、海岸の奇景は「鬼の洗濯岩」として知られる。車内から見ることはできないので、次回は途中下車してみたい。

いよいよ海岸に沿って走る

青島トンネルを抜け、内海駅を過ぎると、ようやく海岸に沿って走るようになる。もっとも線路際は雑草が生い茂り、しばしば視界を妨げるのがうっとうしい。小内海駅は築堤上にあり、ホームから海がよく見える。小規模ながら「鬼の洗濯岩」のような風変わりな海岸風景が見えるのもいい。

このあと短いトンネルが続くので海岸線を走るにもかかわらず海はよく見えない。伊比井駅を出ると、山間部に分け入る。3670メートルもある谷之城トンネルは日南線では一番長いトンネルだ。この前後はトンネル内を含めて直線区間が5キロ以上続く。これは、JR九州の在来線では最長の直線区間である。

九州の小京都を経て、油津へ

しばらく山間部で広渡川に沿って走った後、酒谷川を渡ると飫肥(おび)に到着する。飫肥は「九州の小京都」と呼ばれる城下町で、落ち着いた街並みが観光客を引きつける。飫肥杉でも知られ、日南線を走る観光列車「海幸山幸」の車内には飫肥杉がたっぷりと使われている。

やがて、車窓にコスモス畑が見えてくると「ようこそ日南市へ」の看板が見え、日南駅に停車した。その次が、列車の終点・油津駅。ホームに降りても、志布志行きの列車はまだ姿が見えないので、とりあえず駅舎に向かう。

面白いことに駅舎の壁は真っ赤に塗られ大きくCarpと書かれている。プロ野球・広島カープが早春にキャンプをこの地で行っているため、ファンの要望で2022年に駅舎をリニューアルしたとのこと。列車で油津駅を訪れるファンに人気となっている。

あとで知ったことだが、日南線の木花駅は読売ジャイアンツ仕様、南郷駅は埼玉西武ライオンズ仕様となっている。プロ野球のキャンプ地は日南線沿線に多く、春先はプロ野球の熱心なファンでにぎわいそうだ。

閑散とした単行列車に乗り換えて終点へ

30分ほど待つと、志布志から折り返し列車が到着して、志布志行きとなった。この先は利用者が少ないようで、ディーゼルカー1両のみの単行。それでも、数人が乗り込んだだけで、席は自由に選べた。

発車すると、しばらくは日向灘に沿って走る。七つの岩が重なるように見えることから「七つ八重」(ななつばえ)と呼ばれる岩礁群と大島が浮かぶビュースポットを通過。日南線で一二を争う車窓だと思う。猪崎鼻(いざきばな)という岬のたもとを過ぎ、観光列車「海幸山幸」の終点・南郷駅まで海岸線に沿って絶景が続く。

南郷駅からは海とは離れ山間部を通過する。山の中を抜け、山々に囲まれた盆地を走り、小さな駅にひとつひとつ丹念に停まっていく。このあたりの中心地・串間駅に停車すると、再び海岸近くを走る。

宮崎県の最南端であり、これまで日向○○という名の駅があったと思っていたら、突然、大隅夏井という駅名が現れる。大隅という名でわかるように、いつのまにか鹿児島県に入ったのだ。

海の対岸に山並みが見える。このあたりは志布志湾である。やがて港が見え、大きなフェリー「さんふらわあ」が停泊しているのが見える。そして、列車はゆっくりと終点・志布志駅のホームに滑り込んでいった。

終着駅・志布志には何がある?

ホームの先には志布志駅の小さな駅舎があり、ここで線路は途切れている。かつてはもう少し先に駅があり、その場所は鉄道公園となっていた。そこから、日豊本線の西都城駅へ向かう志布志線、同じく日豊本線の国分駅へ向かう大隅線が延びていたのだが、すべて廃止となってしまった。かつてのにぎわいは消え、寂しい終着駅だ。

志布志は2006年に志布志町を中心とした町の合併が行われ、志布志市が誕生。それで、駅の周囲は志布志市志布志町志布志という地名になった。「志」があふれる街ということで、志布志だらけの地名が観光スポットとなる愉快な場所だ。

志布志駅が九州鉄道の旅のフィナーレであれば、来た道をまた戻るのではなく、志布志港から大型フェリー「さんふらわあ」で大阪へ戻るのも一興だ。駅前からバスに乗って志布志港へ。フェリーの船内でゆったりと食事をしながら、日南線の旅を振り返り、九州を後にしよう。

野田 隆プロフィール

名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。All About 鉄道ガイド。
(文:野田 隆(旅行作家))

このニュースに関するつぶやき

  • 油津南郷間の車窓。真冬1月に乗りましたが、陽光きらめく青い海にソテツの木。春みたいでした。南国宮崎を実感できる路線です。
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