「隣の生徒は死に僕は生き残った」米銃撃事件から2年、「トラウマを乗り越えたい」と少年<動画あり>

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2023年12月12日 21:01  Techinsight Japan

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今月8日、2021年11月30日に起きたオックスフォード高校での銃撃事件の裁判が行われた。法廷で被害者家族や生き残った生徒らの訴えをうなだれて聞くイーサン・クランブリー被告(17)(画像は『ABC News 2023年12月9日付「Ethan Crumbley sentenced to life without parole in deadly Oxford school shooting」』のスクリーンショット)
米ミシガン州オックスフォード郡で今月8日、2021年11月に起きたオックスフォード高校での銃撃事件の裁判が行われ、イーサン・クランブリー(Ethan Crumbley、17)に仮釈放なしの終身刑が言い渡された。イーサンは当時15歳と未成年だったものの、生徒4人を殺害、教師1人を含む7人を負傷させ、量刑が言い渡される前には被害者家族や生き残った生徒らがつらい胸のうちを次々と語った。米ニュースメディア『Detroit Free Press』などが伝えた。

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「私は悪い人間です。決してしてはいけない酷いことをやってしまった…。どんな刑であっても被害者家族が望むなら受け入れる。なぜなら彼らには幸せになって欲しいから。彼らには安全で安心できると感じてもらいたい。彼らをこれ以上、不安な気持ちにさせたくはない。」

これは2021年11月30日にミシガン州オックスフォード高校で起きた銃撃事件で、殺人罪やテロの罪で成人として起訴されていたイーサン・クランブリー(17)が8日、裁判官に量刑を言い渡される直前に述べた言葉である。


この日は朝8時半過ぎから被害者影響陳述が6時間以上にわたって行われ、亡くなった4人の生徒の家族や生き残った生徒らが、「イーサンによって平凡な日常が奪われ、津波のようなトラウマと悲しみに襲われた」と切々と訴えた。

その中で、当時9年生(日本の中学3年生)で、死亡したジャスティン・シリングさん(Justin Shilling、当時17)と一緒にトイレに隠れていたというキーガン・グレゴリーさん(Keegan Gregory、当時15)は、「あの日を境に、僕やほかの多くの人の人生は永遠に変わってしまった」と語り、こう明かした。

「あの日、普通の9年生として学校に行った僕は、学校を出る時、全く違う人間になっていた…。そして今でも、『自分だけ生き残ってしまった』と罪の意識に苦しんでいる。」

銃撃事件が起きた際、キーガンさんは12年生(高3)だったジャスティンさんとたまたまトイレにいたそうで、別々の個室で便座の上に乗り身を隠したという。

キーガンさんはこの時、トイレから家族に「助けて! 銃撃…。僕はトイレに隠れている。オーマイガー! 助けて! ママ」とテキストメッセージを送っており、事件の様子を伝えていた。

しかしその後、すでに3人に致命傷を負わせていたイーサンがトイレ内に侵入。トイレのドアをキックするとまず、ジャスティンさんに個室から出てくるように指示した。そしてその直後、キーガンさんは銃声を聞き、家族に「あいつが彼(ジャスティンさん)を殺した。オーマイガー」とメッセージを送ったという。

するとイーサンは次に、キーガンさんにも個室から出てくるように指示し、恐る恐るドアを開けたキーガンさんはジャスティンさんが床に倒れているのを目にしたそうだ。

キーガンさんはその後、イーサンに「壁に向かって立つように」と言われたものの、「どうせ死ぬなら」とイーサンが銃を下ろした隙を見て全速力で逃げ出したという。

キーガンさんは当時のことを、「自分を守る術もなく、追い込まれた。でも『自分は生きたい』と願い、できるだけ速く走った。そうしてなんとかトイレから脱出したが、廊下のあちこちに生徒が倒れ、辺りは血の海だった。それを見て『何人かは死んだのだろう』と思ったが、とにかく外に出るまで走り続けた」と振り返る。

そしてそれ以来というもの、キーガンさんは経験したことがないようなトラウマに襲われるようになったそうで、このように明かした。

「あの日、ジャスティンの命は絶たれてしまい、自分の命が奪われる可能性もあった。彼が撃たれた時は、ショックと信じられない気持ちで打ちのめされた。そして、それは次第に恐怖に変わり、僕の心は悲しみで満たされた。」

「僕の代わりに亡くなったジャスティンには一生、感謝してもしきれない。またジャスティンの家族が悲しみに暮れているのに、自分だけが生き延びてしまったことへの罪の意識を感じることがある。」

キーガンさんはその後、悪夢にうなされて眠れぬ夜が続いたそうで、「この世の中に安全な場所はない」と恐怖に震え、人を信じることができなくなったという。また不安とトラウマに悩まされ、オックスフォードの学校には通えなくなってしまった。

そんな息子の姿を目の当たりにしたキーガンさんの母メーガンさん(Meghan)は、「息子はあの事件を生き延びた。でも帰宅したあの子の目を見た時、『それまでの息子とは違う』と気付いた。息子は抜け殻のようになり、まるで石だった。感情を持たない、完璧な石だった」と当時のことを語っており、それ以来というもの事件のことを考えない日はないという。

一家は最近、フロリダ州に引っ越したものの、家族全員がトラウマを抱え、キーガンさんは今もカウンセリングを受けているそうで、メーガンさんは「法廷でなんの感情も見せず、薄ら笑いさえ浮かべるイーサンを許すことはできない。少なくとも今はね」と語る。

そしてキーガンさんは、「イーサンは僕やオックスフォードのコミュニティから多くのものを奪った。彼が二度と、誰かを傷つけることがないようにして欲しい」と訴え、こんな希望を述べた。

「僕はまだ回復の途中だ…。でも2021年11月30日のことは、加害者が望んだような最悪の銃撃事件として思い出すのではなく、4人の尊い命が奪われた日として記憶に残したい。そして自分を含めたみんながこれを乗り越え強くなり、亡くなった4人がやり残したことを遂行できるように願っている。」


なおイーサンは、死亡したジャスティンさんやハナ・セント・ジュリアナさん(Hana St. Juliana、当時14)を至近距離から撃っており、裁判官は「これは処刑。イーサンはミシガン州で最悪の学校の銃撃犯として名を残し、自身の犯罪がどれだけ社会にインパクトを与えるのか見届けたかっただけ。真のテロだ」と述べ、事件当時15歳の被告としてはこれまでで最も重い「仮釈放なしの終身刑」を科した。


ちなみに犯行に使われた銃は、イーサンの父親が事件の数日前にクリスマスギフトとして息子に買い与えたもので、両親は「息子の精神が不安定なことを知りながら銃を与え、事件を阻止できなかった」と過失致死罪で訴追され、来年1月23日に裁判が予定されている。



画像は『ABC News 2023年12月9日付「Ethan Crumbley sentenced to life without parole in deadly Oxford school shooting」』『Sports Illustrated 2022年12月29日付「After Surviving a High School Shooting, He Was ‘An Empty Shell. No Emotion.’ Now What?」(Simon Bruty/Sports Illustrated)』『Detroit Free Press 2023年12月8日付「Ethan Crumbley sentenced to life in Oxford High School shooting: Updates from court」』『CBS News 2023年11月16日付「Iowa teen convicted in beating death of Spanish teacher gets life in prison: “I wish I could go back and stop myself”」(JIM SLOSIAREK / AP)』『Kechi 2022年12月10日付Instagram「To the 60 angels of Dec 10 2005:」』『Uncle Sam Zeif #Douglasstrong 2018年2月15日付X「Scariest part of it all was knowing my little brother was right above me and not knowing if I would ever see him again.」』『Radar Online 2017年10月5日付「Las Vegas Shooter Targeted Secret Government Planes In Addition To Victims」』のスクリーンショット、『FOX 32 Chicago 2023年3月23日公開 YouTube「Reporter covering Denver school shooting reunited with student son in viral moment」』のサムネイル
(TechinsightJapan編集部 A.C.)
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