Jリーグ秋春制移行の記者会見要旨…野々村チェアマンが説明「Jリーグの理念に立ち返る」

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2023年12月19日 22:49  サッカーキング

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 Jリーグは19日に理事会を開催し、「2026−27シーズンからシーズン移行を実施することを決め、残された課題を継続検討していく」ことを正式に決定。理事会後の記者会見で、Jリーグの野々村芳和チェアマンがメディアからの質問に応じた。

 Jリーグは創設以来、日本の春先に開幕し、基本的に年内にシーズンが閉幕するカレンダーを採用してきたが、2026−27シーズンは2026年8月1週頃から新シーズンが開幕し、12月2週頃の試合後から2027年2月3週頃の試合までがウインターブレーク期間、2027年5月最終週頃に閉幕するスケジュール(秋春制)となることが決定した。

 以下、野々村チェアマンのコメント。

秋春制移行の経緯と理由の説明

「10か月以上、たくさんの関係者の方たちとお話をしてきた。今までないくらい、実行委員以外にも500人くらいの方と、日本サッカー、Jリーグをどのような方向性にしていきたいのかを話し合ってきた。そのなかで導き出したのが、『世界の市場で勝負していきたい』、『世界の舞台で戦うリーグに変えていきたい』という答えで、今回のシーズン移行の話に至った。

日本の夏場におけるパフォーマンスの低下が、明らかなデータとして出てきて、これは本当に変えないといけないと思った。自分の現役時代には、本気で世界を目指していた選手がそれほど多くはなかったが、今の日本代表や選手たちを見ると、本気で世界を目指している。かつ、小さい子どもたちも目指しているし、これからは指導者も目指していくはず。そのなかで、クラブを担っている我々が、本気で世界を目指すことにどれだけコミットできていたかということを自問自答した。実行委員の人たちも様々な背景があり、いろいろな意見がある中で、長く議論を重ねることで、段々と足並みがそろってきたと感じている。

当然、背景やクラブのサイズなどが違い、意見はいろいろあると思う。ただ、ある時期から『Jリーグをどうしていこうというか』という点では、一枚岩でやってこれたと感じている。Jリーグは公益社団法人であることも含め、Jリーグの理念(編集部注:※1)に立ち返らないといけないという結論が自分の中で出た。(1つ目の理念である)『サッカーの水準をどう上げていくか』というなかで、谷型のカーブ(編集部注:※2)を描くなかで選手をプレーさせるわけにはいかないと感じた。また、2つ目の理念である「国民の心身の健全な発達への寄与」の部分が大事だと思っている。夏のサッカーの在り方も考えていかないといけない時期にあると思う。

一方、僕は札幌で長く生活しているのでわかるが、冬のスポーツ環境が進化したかというと、ほぼ進化していない。多くのスポーツをしたい子どもたちが、冬場の3、4カ月スポーツができない環境を、これを機に変えないといけないと強く思っている。サッカーのシーズンを変えるということよりも、大きな責任が僕らにはある。気候変動が大変な中で、サッカーがどういうスタンスを見せて、もっと良いスポーツ環境を整えて、『国民の心身の健全な発達への寄与』できるような改革をしていきたい。それを踏まえ、今回、大きな数字でシーズンを移すということは大きな意味があることだと思って、今回の結論に至った。

繰り返しになるが、たくさんの関係者と話す中、それぞれの人の意識もだいぶ高みを目指すようになっていった。これで終わりだとは全く思っていなくて、ここからが大事でスタートだと思う。3、40年後に日本のスポーツ文化が良くなった、サッカーが世界に追いつけて、子どもたちがより大きい夢を描けるようになったと言ってもらえるように、Jクラブと協力しながらやっていきたい」

【編集部注】
※1)Jリーグの理念は3つ。『日本サッカーの水準向上及びサッカーの普及促進』、『豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与』、『国際社会における交流及び親善への貢献』と定められている。

※2)谷型のカーブとは、シーズンの真ん中にパフォーマンスが落ちること。気温の上昇とともに、選手の走行距離やハイインテンシティ(高強度)走行距離が顕著に低下するデータが測定されている。秋春制移行により、シーズン中のパフォーマンスが谷型のカーブから山型のカーブになることが期待される。

理事会での議論について

「全会一致で決まった。(今後の懸念についての理事会での議論は)特にはないが、いずれにしても決めたらすべてがスムーズにいくとは思っていない。Jリーグの多くのクラブが賛成をしているが、賛成していたとしても課題はあると思った上で賛成。走りながら一つ一つ乗り越える決断をすべきとの声が大半だった。

みんなで目指す方向性を議論したうえで、課題があって不安だと思う人もいれば、乗り越えていこうというマインドの違いもあると思う。みんなで走りながら、理事も含め、Jリーグとクラブで協力してやっていこうという流れになった」

秋春制への移行期について

「2024-2025シーズンは通常のシーズンを行う。0.5年の期間をどういった特別な大会にするかは、引き続き、検討していく。0.5年分のクラブの収入をどう確保するのかと同じように、リーグの収入をどう獲得するのかも、大事なポイントになる。

そのためには、競争力のある、見ている人もヒリヒリするような特別な大会が必要で、それはクラブとも確認できている。内容に関しては、年明けすぐなのか、場合によっては来年をかけて決めていくのか、というところは決まっている」

降雪地域の財源確保について

「降雪地域の財源は、Jリーグでは一定のところで100億円くらいは用意できている。ただ、Jリーグがすべてやるわけではなく、『世界との競争力を保つために必要なもの』という文脈で考えると、サッカーファミリー全員のためのものでもあるので、JFA(日本サッカー協会)も含めて環境を整備するということで、話はまとまっている。

かつ、サッカー界だけの問題ではないと思うし、企業や自治体も含めて、どういうスキームで、どういう場所にスポーツの施設を作るのかは、仲間を増やしながら、これからもやっていく。100億円がなくなったら辞めてしまうのではなく、将来的にシーズンを通した良いスポーツ環境を作っていくことを継続してやっていきたい。その意思確認もできている。

『施設だけ』の整備というよりは、冬の観戦環境を含め、温かい観戦環境は必要なので投資していく。そして、仲間が増えれば、暑熱対策含めた暑い時期の環境整備もできるようになっていくと思う」

「JFAの金額はJFAから聞いてほしいが、相応な金額だし、ワンタイムの話ではない。10年、20年と降雪地域だけではないところにも、これからスポーツ環境の整備、投資をしないといけないと思っている。また、降雪地域の定義も様々なので、ここがよくて、ここがダメとかではない。日本スポーツ界全体の文脈を考えれば、誰と誰が協力できて、『ここの場所なら、ぜひ作っていきたい』という地域の声を聞いて、選定しないといけない。すぐにできるものではないので、何年かかけてそういう場所を作っていく。そこに対して僕らがサポートするイメージ」

秋春制に反対しているJクラブの意見について

「大きな変革をしようとすれば、100−0は絶対にないと思う。地域やクラブの背景などがあって、いろいろな意見があるのは当然のことだと思っている。そういう意見があったからこそ、より議論が深められたところもある。

もちろん、基本的にもろ手を挙げて賛成にならなかったこともあると思うが、『日本サッカーを良くしていきたい』という思いや熱量は、大事な部分だったと思う。そういう意見があったからこそ、前に進んだり、新しく考え方が生まれたりは、間違いなくあった。

クラブの方にも聞いてほしいが、基本的には、もしそういう決断に至ったのであれば、一緒に良いサッカー界を作っていくという意思表示をいただいている。ここから課題を乗り越えて、一緒に進んでいけると思っている」

雪国のクラブが切り捨てられるというサポーターの不安について

「事実の説明がどれくらい届いているかは、常に我々も、自分自身に疑問を持ちながらやっている。4、5月くらいの時点で東京から発信しても、多くの地域に届いていないという実感もある。僕らが動いて、地域に行って、メディアの皆さんに説明することも相当やってきて、これからもやっていきたい。それと同時に、クラブが目の前のサポーターにどういう風に事実を説明をしていくかも大事な部分だと思っている。『冬にサッカーをたくさんすることではない』ということすら伝わっていないところもあるので、ゼロからまだまだ説明をする作業はやっていかないといけない。

たしかに、6、7月は観戦に良い時期ではあるが、世界的にはワールドカップがあったり、『シーズンの真ん中で、最もパフォーマンスを高めないといけない時期に谷になってしまう』という、一番大きな課題を解決しないといけない。6、7月は世界のシーズンと同じように、休むという選択をせざるを得ないと思っている」

収益を上げなければいけないという覚悟

「覚悟は当然ながらある。ただ、僕らだけが持っていても、あまりいい効果は得ないと思っていた。なので、数カ月で議論するよりは、1年間をかけて、現場で一緒に戦っているクラブの皆さんも覚悟を持っていただく必要があった。そのための1年間だった。僕の肌感覚では、クラブスタッフやフロントサイドの覚悟は変わってきたと思う。

放映権を上げることに関しては、いくつかの角度、方法でやらないといけないが、最も大事なのは、『フットボールの質を本当に上げられるか』というところ。フットボールファーストで選手に最も高いパフォーマンスを発揮させてあげることが、いろいろな価値を生むうえで、一番大事だと思っていて、そこから本気で取り組むと考えてもらいたい。

移籍金の収入に関しても、シーズンを変えたらすぐに問題が解決するものではなく、様々な角度からいろいろな取り組みをしていかないといけない。1兆円以上の(移籍金)マーケットから、どれだけJリーグが獲得できるか。その意識の醸成が何よりも大事だと思う。同じ環境で競争するという意識がまずスタートラインに立つことなのかなと思う」

「0円移籍」の懸念について

「まずJリーグは世界で勝負することを目指さないといけない。ゼロ円で移籍されてしまわない努力は、クラブ強化担当者に絶対に求められること。そういうマインドに立って、世界と勝負できる強化部長やGMがどれだけ増えるかが大事な部分だと思う。

とはいえ、意識を変えただけで、すぐに世界との競争で勝てるとも思わないので、今はきっと対処法が必要になるのかもしれない。ただ、リーグとして本当に目指すのは、対処療法ではなく、根本の部分の改善。Jリーグがスタッフも含めて、世界と戦えるようになれば、懸念はなくなると考えている」

これまで破談になっていた話が、なぜ今、賛成多数になった?

「フットボールファーストという部分を考えたとき、パフォーマンスが下がることは絶対に良くないという考えを持つ人が多かったことが一因だと思う。そして、今まで目標が国内のコンペティションをどう勝つかを徹底してきた中で、選手の意識も変わり、世界を意識せざるを得なかったことが一番大きかったと思う。加えて、気候変動の問題も、実際にしっかり向き合わないといけない課題であるという思いも強くなったと思う。

昨年までの過去10年間を見ると、最初の5年で試合が大雨などでの中止になったのは14試合あった。そのあとの5年は、58試合に増えている。雨で試合が流れているのは7、8、9月が多い。今のシーズンで8、9月に試合が流れると、12月の第1週でシーズンが終わるので、それ以降にはずらせない。これからどんな気候変動が起こるか読めないなかで、中止になる試合が多くなったとしても、8月スタートであれば、8、9月で中止になることになっても、後ろに逃がす日程はかなりある。気温とパフォーマンスは相関関係にあるので、世界を戦ううえで、そこに日本も手を付けないといけないという流れになったと思う」

ウインターブレイクの競争力維持について

「2ステージ制の議論は一度も出ていない。ウインターブレイクをどう過ごすのかは重要なポイントだと思っている。(シーズン中なので)選手は休むわけではないし、体を動かすし、降雪地域は南方の沖縄や宮崎で試合や大会を行うことなどが現実的な話だと思っている。気候変動と施設充実がどれくらいになるか次第だが、ウインターブレイクが少しでも短くなるような努力をしていきたいという意見はクラブからも出ている。自然環境も含め、その努力はしていきたい。

1月、2月のウインターブレイクは、リーグ戦はやらないが、パフォーマンスを維持するための大会や環境はリーグとしても整備していかないといけない。そこで休んでしまって、パフォーマンスが落ちるとはまったく思っていない」

このニュースに関するつぶやき

  • 除雪して天皇杯や高校サッカーをこなしていた年があったけど、国立(都内)だからできたのかな?
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