石川祐希が振り返る激闘のパリ五輪予選「早く出場を決めたこともプラスには考えていない」

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2023年12月25日 10:11  webスポルティーバ

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石川祐希のAttack The World vol.9

 バレーボール男子日本代表は9月30日から10月8日にかけて行なわれたパリ五輪予選(OQT)で、2008年の北京五輪以来、16年ぶりに自力で五輪切符をつかみ取った。主将としてチームの中心に立ち続けた石川祐希は、代表が始動した春先から「必ず五輪切符を取る」と宣言してきた。その言葉を有言実行した激闘の10日間。石川に見えていたもの、そして、その先に見えているものとは――。

【OQTでの出場権獲得に「ほっとした」】

――石川選手は、春先からずっと「ここ(OQT)で必ず五輪切符を取る」と言葉にし続けてきました。その理由は?

「理由は特にないんです(笑)。本当に取ると思っていたので。『取りたい』じゃなくて『取る』と決めていたので、ずっと言い続けていた。それが理由です」

――スロベニアに勝って五輪出場が決まった時は、石川選手も涙を浮かべていました。プレッシャーも相当なものだったのではないでしょうか。

「プレッシャーは、ゼロだったかと言われるとそうではないですけど、僕個人としてはそれほど感じていなかったです。でも、僕が『必ず取ります』と言うことで、チームにはプレッシャーをかけていましたね。

 涙があふれたのはプレッシャーというよりも、ずっとOQTに懸けてきましたし、本当に難しい予選を通過できて『ほっとした』という感じです。実際に結果を見ると、イタリアが五輪出場権を取れなかったですし、一番難しい大会というのもわかっていましたから」

――今挙がったイタリアもそうですし、強豪国にとっても厳しいOQTを勝ち抜けたことは、日本代表にとってどういう経験になりそうですか?

「自信にはなりますが、それ以上でもそれ以下でもないと思います。ここで出場権が取れたからといって、五輪でも結果が出るわけではありません。(早く出場を決めたことで)五輪のための準備期間が長いというのも、正直なところあまりプラスには考えていません。逆に今回は出場権を取れなくて、来年のネーションズリーグをずっとフルメンバーで戦ってランキング上位をキープして、出場権を獲得して五輪本番に臨んだほうがチームとして固まっているかもしれない。そこは結果でしか判断できないです。

 今回で出場権が取れたことのメリットを挙げるならば、体を休める期間を作れるということと、少し気持ちが楽というところでしょうか。今は、僕は自分のシーズンに集中して戦えているし、他の選手もシーズンを思う存分戦えるのがいいところだと思っています」

【2戦目での敗戦した時の状況】

――OQT初戦のフィンランド戦で負けることも想定している、と以前から話していましたね。結果としてはフィンランドに辛勝して、2戦目でエジプト相手に負けました。あの出だしはどう感じていましたか?

「個人的には、僕の体が動かなくて、思うようなプレーができませんでした。なので、ちょっとびっくりしていました。でもチームとしては、他の選手のプレーは悪くなかったので、そんなに心配はしていなかったです。

 エジプトに負けた時も、すごく心配したという感じではなかったですね。『選手がちゃんと前を向いていれば大丈夫だ』と思っていました。エジプト戦の後は、関田(誠大)さんの精神状態が唯一の不安要素でしたが、(エジプト戦の翌日の)試合がなかった休養日の1日で切り替えてくれたので、それもなくなりました」

――ご自身のパフォーマンスは、腰を痛めて練習があまりできなかった影響が大きかったと思います。どのような状態だったのでしょうか。

「気持ちと脳は今まで通りだったので、それに体が追いついてない、動いていないという感じでした。僕の中では『これだけジャンプしている』と思っていても、実際は全然ジャンプできていない。いつもだったらもっと高い位置でボールをヒットできて、長いコースに打っている。頭の中ではそのジャンプをしているんですけど、実際はまったく跳んでいないから、ブロックされたり、ブロックに引っかかったりというのが続きました。それが、試合が進むにつれてズレが少なくなってきて自分の状態が上がり、チームの状態も上がってきました」

【パリ五輪に向けて日本代表が強化すべき点は?】

――ここ数年の日本代表チームを見ていると、東京五輪くらいから、狙った試合にピークを合わせられるようになってきたと感じます。何か要因はありますか?

「選手、スタッフを含めて、どの大会で一番いいパフォーマンスを発揮できるように持っていくか、という目標設定をしっかりしているので、それが大きいと思います。常にその目標の大会のことを考えながら練習や試合をしています。

 でも、計画を立ててもその通りにならないことはあります。個人のスキル、能力が上がってこないと、そういったことをコントロールするのは難しい。ここ何年かはうまくピークを持っていけているので、個人の能力が上がり、チームとしてもどんどん成長して強くなっていると思います」

――パリ五輪ではメダルも期待されています。本番までに日本代表チームとして強化しなければいけないところはどこでしょうか?

「ブロックは引き続き強化していかなければいけません。チームとしてブロックがある程度機能すれば、世界の上位とも戦えると思っています。レセプションの数字は非常に高いですし、ディフェンスも僕たちの武器です。もっと全体的にミスが出ないように、コンスタントに精度を高めていく必要がありますが、サーブも全員がいいものを持っています。なので、やはり大きなところでいうとブロックを成長させたいですね」

――開催国枠で出た東京五輪と、自分たちで出場権をつかみ取ったパリ五輪。迎える心境は違いますか?

「あまり変わらないです。OQTがあったので、そこに対する臨み方は違いましたけど、東京五輪の時と同じように『来年も五輪がある』という感覚です」

――現時点で、パリ五輪での目標は立てていますか?

「1次リーグや2次リーグを突破する、というのもありますけど、やっぱりメダルを獲ることが大きな目標になってくると思います」

――それもまた、あえて言葉にして発信していくんでしょうか。

「パリ五輪のことを口にするのは、来年の代表シーズンに入ってからですね。自分がイメージできるようにならないと、なかなか難しいんですよ。代表シーズンが始まってないうちに『メダル獲ります』と言っても、僕自身に響かない感じなので。代表のスイッチを入れるのは、また来年です」

(vol.10:イタリア9季目は「ハード」 それを乗り越えるために「削った」ものとは?>>)

【プロフィール】

◆石川祐希(いしかわ・ゆうき)

1995年12月11日生まれ、愛知県出身。イタリア・セリエAのミラノ所属。星城高校時代に2年連続で三冠(インターハイ・国体・春高バレー)を達成。2014年、中央大学1年時に日本代表に選出され、同年9月に代表デビューを飾った。大学在学中から短期派遣でセリエAでもプレーし、卒業後の2018-2019シーズンからプロ選手として同リーグで活躍。2021年には日本代表のキャプテンとして東京五輪に出場。29年ぶりの決勝トーナメント出場を果たした。

公式X(旧Twitter):@yuki14_official>> 公式Instagram>>

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