県予選メンバー外の”応援団長”から劇的逆転勝利のヒーローへ 帝京長岡が誇る“一体感”

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2023年12月29日 22:06  サッカーキング

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帝京長岡の谷中習人[写真]=小林渓太
 第102回全国高校サッカー選手権大会・1回戦が29日に行われ、帝京長岡(新潟)は長崎総科大付(長崎)に3−2で勝利。途中出場から2ゴールを決めて、劇的な逆転勝利に貢献した帝京長岡の谷中習人(3年)が、試合後にメディア取材に応じた。

 帝京長岡は長崎総科大付に先制点を許したあと、前半終了間際に1−1の同点に追いつく。しかし、後半59分に再び失点を喫し、1−2とリードを許してしまった。試合時間は残り30分を切り、逆転のためにはあと2点が必要な状況。この場面で帝京長岡の交代カード1枚目として投入されたのは、3年生の谷中習人だった。

 谷中は今大会の新潟県予選で出場時間ゼロ。メンバーにも入ることができず、スタンドから応援団長として仲間たちを応援していた。選手権での活躍を夢見て、帝京長岡に入学したが、3年生になっても「AチームとBチームをいったり来たり」という立場だった。

 しかし、Aチームに入れなくても、仲間とともに腐らず、まじめに練習に取り組んできたと谷中は胸を張る。

「チームは県大会で優勝しましたが、そのメンバーに自分が食い込めていないという現実をしっかり受け止めて、そこからまたサッカー以外のことも取り組んできました。いつ試合に出てもいいように、普段から準備してきましたし、チームに声をかけることだったり、プレー以外のところも、とにかく『チームのために…チームのために…』という気持ちで練習をしてきました」

 チームへの献身的な姿勢が実を結び、選手権本大会はメンバー入りを果たした。谷中はメンバーが発表された時のことを、こう振り返る。

「『選手権に出たい』という思いで帝京長岡に入学して、3年間を過ごしてきたので、メンバー発表で自分の背番号が言われたときは、涙が出るくらい嬉しかったです。途中から出て、流れを変えたり、ゴールを奪うことが得意な選手だと思うので、得点が欲しいタイミングで(起用するために)自分を選んでくれたのかなと思います」

 迎えた選手権の初戦。谷中はベンチから虎視眈々と活躍の時を狙っていた。

「『途中から投入する』と昨日から言われていました。自分たちが苦しい時間帯やビハインドを負ったときに出場するということも分かっていました。そして、チームが失点して呼ばれたので、『絶対に自分が途中から入ってゴールを奪って、チームを勝たせてやる』という気持ちでピッチに入りました」

 61分に投入された谷中は、その言葉通り、アグレッシブに動き回り、ボールを引き出し、試合の流れを変えていった。そして、投入からわずか6分後に同点ゴールを奪取。勢いそのままに、試合終了間際の後半アディショナルタイム2分には、値千金の逆転ゴールまで奪って見せた。

「夢みたいでした」

 ゴールを決めたあと、谷中はスタンドへと駆け寄った。スタジアムが大歓声に包まれるなか、谷中を中心に歓喜の輪ができた。

「いままでBチームでの活動が多かったので、辛い時でも一緒に上を向いて、Aチームを目指してきたメンバーがスタンドにいました。気持ちと体が勝手に動いて、スタンドの方に向かっていました」

 試合はこのまま3−2で終了。予選までスタンドで応援団長を務めていた谷中が、一躍、帝京長岡のヒーローになった瞬間だった。

「いつも自分はスタンドから選手を見る立場だったので、ピッチに立って見回した景色は何にも代えがたいというか…。こういった環境のなかでずっとプレーしたいし、ゴールを決めてみたいなと、あらためて思いました」

 ただ、谷中は自身のゴールの喜びよりも、チームの2回戦進出を心から喜んでいるようだった。「自分のゴールでチームが勝てたことは嬉しいです。ただ、途中から試合に入ったので、それまでに走って、戦ってくれた選手たちがいたからこそ、自分が決められたので、他の選手たちに感謝したいです」と、チームメートへの感謝の言葉を繰り返し口にする。そして、チームの一体感こそが、帝京長岡が持つ最大の強みだと胸を張った。

「これまでBチームでやってきたメンバーはすごく仲が良いし、辛いときも一緒に乗り越えてきました。そういった選手たちとサッカーを全力でやれたことがモチベーションになったと思います。『(サッカー部員)147人の一つのチームとして、いろいろなチームに勝てればそれでいい』という考えでやってきたので、上を目指しながら、誰もめげずにBチームで頑張ってこれました」

 次戦は清水エスパルス内定のU−18日本代表FW郡司璃来らタレントが揃う市立船橋。難しい相手との対戦が続くが、谷中は自信をのぞかせた。

「市立船橋さんは強豪校ですし、力のあるチームだとわかっています。それでも自分たちもやってきたことがありますし、チームの一体感を意識して、一人ひとりが全力で走って、まずは自分たちがこれまで見たことのないベスト4以上の景色を見れるように、そして、日本一を目指しながら頑張っていきたいと思います」

 新潟県勢初の決勝進出、そして、日本一へ。チームの一体感を武器に、帝京長岡の挑戦は続く。

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