角田裕毅、アブダビの衝撃!など「成長を感じさせた」2023年 F1ジャーナリストは「ミス以上に見るものをワクワクさせた」

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2023年12月30日 14:21  webスポルティーバ

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2023シーズンF1トピックス10(中編)

◆F1トピックス10・前編>>「ベッテルを抜いて歴代3位」「驚異のルーキー現る!」

 3月5日にバーレーンで開幕を迎えた2023シーズンのF1は、世界各国を8カ月半かけて転戦し、11月26日のアブダビで閉幕した。

 中国GPが新型コロナウイルスの影響でキャンセルとなり、エミリア・ロマーニャGPも豪雨による中止で予定されていた史上最多24戦のカレンダーは全22戦になったものの、F1サーカスは各国でさまざまなドラマを生んだ。

 2009年からF1を現地で全戦取材するジャーナリスト・米家峰起氏に2023シーズンのトピックスを10点、ピックアップしてもらった。

   ※   ※   ※   ※   ※

【4】大興奮のモナコGP。42歳のアロンソが大奮戦!

 アルピーヌからアストンマーティンへ移籍したフェルナンド・アロンソの発奮も、2023年の大きなトピックのひとつでした。

 フェラーリやメルセデスAMGがつまずいたシーズン前半はアストンマーティンが2番手のチームとなり、タイヤマネジメントのよさやアロンソ自身のレース巧者ぶりを遺憾なく発揮。連続して表彰台を獲得し、大いに存在感を示しました。

 アストンマーティン自身が「2026年のタイトル争い」をターゲットとしており、まだまだ発展途上であるため、シーズン中盤以降は開発の遅れもあって苦しいレースが続きました。ですが、モナコGPではマックス・フェルスタッペン(レッドブル)と超僅差の予選を繰り広げ、近年稀に見る「予選名勝負」を見せてくれました。

 決勝では雨が降ってきた時に天気予報の読みを間違えなければ優勝していたはず。ただ、豪雨のオランダGPではしっかりと戦略を決めて、久々の表彰台を獲得しました。サンパウロGPでもセルジオ・ペレス(レッドブル)との激しいバトルの末に最終ラップで抜き返し、再び表彰台を奪取しています。

 結果、2023年は合計8回もの表彰台を獲得。ドライバーズランキング4位に入るという結果だけでなく、劇的なレースを見せる役者ぶりでも「名手アロンソ、ここにあり」を遺憾なく見せつけたシーズンだったと言えるでしょう。

【5】アブダビの衝撃。角田裕毅がキャリア初のトップ快走!

 3年目の角田裕毅(アルファタウリ)は、総じて言えば予選での速さがあり、決勝でも成熟したレース運びを見せていました。

 たしかにメキシコシティGPやオランダGP、シンガポールGPで接触など、避けられたミスもいくつかあったため、まだまだ未成熟だという印象もあります。

 しかし、チームリーダーとしての意識が強かったシーズン序盤戦のマシン性能を上回るような走りっぷりや集中力、マシン性能が上がったシーズン終盤戦のダニエル・リカルドを圧倒する入賞の数々、そしてアメリカGP最終ラップのファステスト記録など、プラスの面に目を向ければ十分に成長を感じさせる1年だったと言えます。

 そのなかでも最終戦アブダビGPで、ランキング7位を奪還するためにチーム一丸となって1ストップ作戦で6位を獲りにいったレースは、レースそのものだけでなく「レース週末全体の内容」という点で最も印象的でした。

 結果こそ8位に終わり、2ストップ作戦を採っていれば7位だったのに、という声もありました。ですが「結果がすべて」というなら、7位フィニッシュでもランキング7位は獲れないので「結果は敗北」だったのですから、1ストップで大逆転の6位を狙うとチームが判断を下したことは尊重すべきです。

 そのなかで角田は、タイヤをうまく保たせて走り、5周にわたってトップを快走。最後は8位まで後退したものの、今までなら抜かれていくことにフラストレーションを爆発させていたであろうシチュエーションでも耐えて、最終ラップにルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)を抜き返す走りを見せました。

 シーズン中盤やメキシコシティGPでもすべてあのようなレースができていれば、たしかに完璧なシーズンだったでしょう。が、いくつかのミス以上に見るものをワクワクさせてくれたのが、2023年の角田裕毅だったと思います。

 まだまだ足りないことは本人が一番よくわかっており、2024年は自身の「完成形を見せる」と断言してくれました。あのアブダビGPのレースを終えた直後にその言葉が出たことに、彼の最大の成長を見た気がします。

【6】ラスベガスGPの初開催、エミリア・ロマーニャGPの中止

 2023年はラスベガスで初めてのグランプリが開催されました。ラスベガスの豪華絢爛なカジノホテルが建ち並ぶ「ラスベガスストリップ」をF1マシンが駆け抜ける市街地サーキットです。

 これはF1のオーナーであるリバティメディアの悲願であり、今のアメリカでのF1人気沸騰を象徴するようなグランプリでした。レースはフェラーリの奮闘もあってエキサイティングな展開になりましたが、興行面ではいくつかの課題も見えました。

 まず、観戦チケットやホテルの高騰で、結局かなりの部分が売れ残ってしまったこと。これは初開催のレースではよくあることですから、2024年以降は次第に落ち着いてくるかもしれません。

 初日の金曜フリー走行では、排水バルブのフタに問題が生じてマシンがヒットするという事故が起き、スケジュールが大幅に遅れるという事態もありました。これは単純に準備不足と確認不足であり、主催者だけでなくサーキットにゴーサインを出したFIAにも責任があります。

 また、当初はあまりにコーナーが少なく直線ばかりのコースレイアウトに疑問の声もありました。しかし実際に走ってみれば、決してシンプルで簡単というわけでもなく、そんなに悪くないレイアウトだったのではないでしょうか。

 問題は、異常な寒さのなかで、なおかつ夜22時からスタート(予選に至っては24時スタート!)するような、極めて異例な環境です。

 11月のラスベガスが極寒なのは当初からわかっていたことで、タイヤやブレーキをうまく機能させるのも難しければ、パワーユニットなどはオイルの過冷却を防ぐためにラジエターに対策をしなければならないほど。異例の深夜帯スケジュールも、アメリカ・ネバダ州にいながら日本時間で生活することが現地スタッフたちに求められ、決して好評ではありませんでした。

 その一方で、カタールGPは異常な高温多湿でのレースとなりました。なおかつ新設の縁石が鋭利すぎてタイヤへのダメージも問題となって、18周制限を設けてレースをする異例の事態に。こうしたエンターテインメント優先、もっと言えばビジネス優先のレース開催は、決して見ていて気持ちのいいものではありませんでした。

 それに対して、大洪水に見舞われたイモラでのエミリア・ロマーニャGPは、現地が動き出す前の早い時点で中止の決断を下しました。F1関係者にも観戦を予定していた人にも、そしてなにより地元の人たちにも負担を最小限に留めることができたのはよかったと思います。

 2024年は新規で開催されるレースはないものの、中国GPが2019年以来5年ぶりの開催、そして日本GPは初めての4月開催と新しい要素もあります。初の年間24戦と過密日程に対する懸念の声もあるので、何事もなくシーズンが終わりを迎えることを願うばかりです。

(後編につづく)

◆F1トピックス10・後編>>角田裕毅の次は岩佐歩夢or平川亮or宮田莉朋?

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