『進撃の巨人』は“大人”も活躍する物語だった……ひっそりと世界を救った影のヒーローとは

1

2024年01月02日 07:00  リアルサウンド

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

写真

※本稿は『進撃の巨人』の最終話までの内容を含みます。ネタバレにご注意ください。


 『進撃の巨人』の主役といえば、同時期に訓練兵団を卒業した「104期生」の少年少女たちが真っ先に思い浮かぶ。彼らの活躍によって、未曽有の危機に陥った世界が救われたことは今さら言うまでもないだろう。


(参考:【写真】「別冊少年マガジン」12月号発売の付録は『進撃の巨人』特製クリアファイル" )


  しかし実はその影では、何人もの大人たちが世界を救うために奮闘していた。ひっそりと活躍した“影のヒーロー”がいなければ、物語はもっと最悪の結末を迎えていたかもしれない……。


  作中で最初に登場した偉大な大人としては、ドット・ピクシスを挙げられる。彼は「駐屯兵団」の司令官でありながら、変人として知られており、ほかの大人にはない柔軟な考え方を示してきた。それを象徴するのが、トロスト区攻防戦での出来事だ。


  巨人の襲来によってパニックが広がるなか、エレンが巨人化の力を持っていることが露呈。「駐屯兵団」の隊長であるヴェールマンは、リスクを排除するためにエレンの処刑を決断し、アルミンの決死の説得にも一切耳を貸そうとしない。


  しかしそこに駆け付けたピクシスは「相変わらず図体の割には小鹿のように繊細な男じゃ」と言いながらヴェールマンを制止し、エレンたちと対話することを選ぶ。さらに「エレンの力でトロスト区の壁に空いた穴をふさぐ」という夢物語のような作戦を採用し、すぐさま実行に移すのだった。エレンの戦略的価値が知れ渡ったのは、この作戦あってのことだ。もしピクシスがいなければ、『進撃の巨人』の物語はここで終わっていたかもしれない。


  ちなみにアニメ版では、ピクシスは巨人襲来の直前まで貴族の城でチェスの相手を命じられていた。しかし超大型巨人の出現というニュースを聞くなり、引き留めようとする貴族を意に介さず、戦地に向かっており、より一層優秀さが強調されている。


  また、トロスト区攻防戦では多くの犠牲者が生まれたが、「兵士を失った」と表現することを拒み、自分の命令によって命が失われたことを強調。そこで放った「人類が生きながらえるためならわしは、殺戮者と呼ばれることもいとわん」というセリフは、作中屈指の名言だろう。


  ピクシスがキーマンとなったのは序盤だけでなく、王政編においても重要な役を演じていた。同エピソードでは、エルヴィンが王政に対するクーデターを画策し、周囲の人間を巻き込んでいったが、当初ピクシスは計画に乗り気ではなかった。人類の未来にとって、王政を維持する方が望ましい可能性も捨てきれなかったからだ。


  しかしウソの情報を流し、王政の関係者たちを試すことで、権力が腐敗しきっていることを理解。その場でクーデターへの協力を決断するのだった。他人の考えに流されるのではなく、自分の頭で真実を見極めようとする姿は、ピクシスの聡明さを象徴している。


■未来への希望を育てた英雄、キース・シャーディス


  もう1人の偉大な大人として、104期生の恩師にあたるキース・シャーディスの名前も挙げておきたい。彼は「訓練兵団」の教官を務める人物で、鬼教官と呼びたくなるような厳格さで知られる。入団式の最中、芋を食い始めたサシャを見咎め、「死ぬ寸前まで走れ」と罰を与えたのも他でもない彼だった。


  有望な戦士たちを数多く鍛え上げたシャーディスだが、終盤では微妙な立場に置かれるように。イェーガー派が反乱を起こし、兵団支部を乗っ取る事件が起きた際、フロックに扇動された訓練兵たちによってリンチを受けてしまう。


 「ひよっこたち」と挑発した直後に地面に倒れていたため、この場面はギャグのようにも見えるのだが、実際にはシャーディスなりのやさしさが表れた名シーンだった。あえて暴行を受けることで、訓練兵たちがイェーガー派の逆鱗に触れることを避けようとしていたからだ。その後、イェーガー派に寝返った元訓練兵が巨人に襲われているところに現れ、立体機動装置によって救出する活躍も見せている。


  さらにアルミンやライナーたちが「地鳴らし」を止めるために行動を起こした時には、ひそかに彼らが港を出発できるようにサポート。イェーガー派の増援を食い止めた上で、テオ・マガトと共に身を呈して巡洋艦の爆破を行なった。


  シャーディスの行動がなければ、アルミンたちが港を出ることは不可能だったそうで、マガトからは「あんたは後に世界を救った英雄の1人となるだろう」と称賛されている。


  なお、シャーディスにも未熟な時代があり、「調査兵団」団長としての失敗や、エレンの母・カルラとのすれ違いなども描かれていた。エレンの身を案じ、姿勢制御の試験で立体機動装置に細工を施したことも印象深い。あるいはそんな人間味あふれる人物だからこそ、精神的な成長が胸を打つのかもしれない。


 「地鳴らし」を止めて世界を救ったのはアルミンたちの功績となったが、その裏にはピクシスやシャーディスなどの足跡がたしかに刻まれている。決して派手ではないが、歴史に残らない英雄たちの活躍があったことを忘れるわけにはいかないだろう。


(文=キットゥン希希)


    ランキングゲーム・アニメ

    前日のランキングへ

    オススメゲーム

    ニュース設定