仕事に遅刻しそうになって慌てる父。ふとその足元を見た私が「お父さん、靴下が左右違う柄だよ―!」と指摘すると、父は「わー。同じ靴下、どこだ〜?」と叫びます。
あたふたする父がおもしろすぎて、私は朝から大爆笑。そのあと一緒に家を出て、父は仕事へ、私はランドセルを背負って学校へ。両親が離婚してから父と2人、慌ただしいながらも楽しく暮らしていました。
実母とは離婚後ほとんど会う機会はなかったのですが、やはり思春期になると身体の発達や生理など父に言いにくいことも増えていきます。そして数年後……。
父が連れてきた新しい「お母さん」は、若くてとても可愛い人で、すごく嬉しかった記憶があります。優しくてキレイなミドリさん。
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ミドリさんの優しさに包まれ、私が彼女のことを「お母さん」と呼ぶのに時間はかかりませんでした。
一緒に買い物に行けば「仲良しの姉妹」と間違われ、学校行事では友だちに「キレイなお母さん」とうらやましがられ……。私はどこか自慢げな気持ちでした。
父から再婚話を聞かされたときは、「どんな人が来るんだろう」とドキドキしていました。けれどミドリさんに出会ってから、確実に私の生活は潤いに満ちるようになったのです。ミドリさんの優しさに触れて、今まで自分がどれだけ「お母さん」という存在に憧れていたのか分かりました。そんな私の気持ちを知っていたのかは分かりませんが、ミドリさんは何よりも私のことを第一に考えてくれていたのでした。こんな居心地の良い実家を、私は大好きになったのです。
【第2話】へ続く。
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