深見東州『強運』、なぜロングセラーとなったのか? 徹底した営業戦略と書店の事情

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2024年01月05日 19:30  リアルサウンド

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異例のベストセラー『強運』

  年末年始になると、自己啓発系やスピリチュアル関連の本が数多く出版されている。その中でも出色のロングセラーといえるのが、深見東州による『強運』(たちばな出版)ではないだろうか。通勤電車の車内にもよく広告が掲載されているので、タイトルだけなら一度は目にしたことがある人も多いかもしれない。そう、『強運』の二文字がドーンと大きく書かれ、「あなたの運がドンドンよくなる」というキャッチコピーで有名な、あの本だ。


  たちばな出版のホームページによると、現時点での発行部数は累計191万部に達しているという。初版は1998年というから、実に25年以上にわたって売れ続けているロングセラーであり、これまでにコミック版や文庫版も出版されているほどだ。また、深見東州の本では『大金運』もベストセラーだし、著者名で検索をしてみると、他にも数々の自己啓発本やスピリチュアル的な本を数多く出版しているのがわかる。いったい、深見東州とはいったい何者なのだろうか。


  深見東州は、コスプレ姿の講師や摩訶不思議なキャラクターが目を引くユニークなポスターと“怒涛の英語”のキャッチコピーで知られる大学受験予備校「みすず学苑」の創立者であり、「HANDA Watch World(ハンダウォッチワールド)」などの時計店を営むミスズの経営者でもある、半田晴久のペンネームである。半田は自己啓発書本の出版や講演活動を数多くこなし、教育や福祉、環境保護などの社会貢献にも取り組むなど、多岐にわたる活動で知られている人物だ。


気になる『強運』の中身とは

  そんな深見の書籍『強運』は、その名の通り、運を強くする方法や考え方について述べた書籍である。人生において良い運を引き寄せるための心構えや実践的なアドバイスが紹介され、個人の思考や行動が運を左右するという考えをベースに、ポジティブな思考や感謝の心を持つ重要性を強調している。深見は書籍にユーモアを盛り込むことでも有名だが、この本も特有の味わい深い文体のおかげで、サクサクと読み進めることができる。


  『強運』ではこれまで成功した人物たちの例や、古今東西の哲学、宗教的な見解を引用しながら、いかにして自己の内面を豊かにし、周囲と良好な関係を築くかという点に焦点を当てている。自己反省や周囲への思いやりを持つことで、運を自らの手で良い方向に導くことができるという方法が紹介されているのが特徴だ。


  他にも、運が良い人とそうでない人の違い、運を良くするための具体的な方法や心構えが著されている。ポジティブな思考や感謝の心を持つことの重要性を強調しつつ、実践的なアドバイスを通じて、読者自身の人生をより良いものに変えることができるというメッセージが記されている。多くの読書が実践したくなる内容になっているのも、人気の理由ではないだろうか。


なぜ『強運』は売れ続けているのか?

  さて、都内にある大手書店に向かうと、『強運』の扱いが別格であることに気づく。タイトルが目に付きやすいように平積みにされていたり、特設コーナーが設けられている例もあるのだ。書店員に話を聞くと、『強運』は常に棚にあるベストセラーだと話す。


 「深見東州さんの『強運』は、たちばな出版という半田晴久さんが経営する出版社から発行されています。私が通勤で利用している中央線の車両ドア部分にもよく広告が貼られていることもあってか、レジにいると年配の方から学生、女性のビジネスパーソンまで幅広い年齢層の方が購入していく姿を見かけますね。運を上げることをテーマにした本は、不況化や社会情勢が不安定な時になると売れる傾向にあります。今はまさに、そんな状況とマッチしているのかもしれません」


  書店員が言うように、確かに『強運』の広告は電車の中で一際目に付く。思えば、「みすず学苑」も電車広告の知名度が突出して高い。たちばな出版やミスズは、日本有数の電車広告を巧みに駆使した宣伝手法をとっている企業といえるかもしれない。また、少し専門的な話として、書店員は書店ならではの興味深い事情も明らかにしてくれた。


「出版社が指定する本の分類を表す4桁のCコードというものがあって、このコードを見て書店員は棚に本を仕分けしていきます。『強運』のコードは、0073になっています。最初の0は一般、次の0は単行本で、最後の70は分類で言うと芸術総記なのです。深見さんにとってこの本は、心理学というよりも芸術的な本という位置付けであったということが興味深いですね。でも、『強運』が書店に届いたら、Cコードを見ないで大概心理学やスピリチュアルコーナーの棚に置く書店員が多いと思いますが」


 Cコードを見ずとも書架にすぐに並べられるほど、『強運』がどのような本であるのか、書店員が熟知しているということだ。それほどの知名度が高いということは、紛れもないベストセラーである証しといえよう。


徹底したマーケティングとニーズの発掘

  たちばな出版の公式サイトには「代表取締役社長 半田晴久より挨拶」として下記の文言が寄せられている。



  確実に収益を確保する部分と夢とロマンを求めるところ、両方あるのが常に新しい発展と脱皮をする会社だと考えております。


  特に出版社というのは、創造的な人たちが必要です。あまりに数値を追求したり、四角四面だと物作りの人たちは枯れてきます。ときどき、思い切った遊びをやって活性化する。そして常に創造的な人を募って斬新なものを作っては徹底して売り込む。これが我が社のモットーとしているところです。



  こうした発言からも、半田が経営センスの持ち主であることがわかるだろう。『強運』は徹底したマーケティングによってニーズを掘り起こし、新しい発想と徹底した営業戦略によって生み出されたベストセラーといえるのかもしれない。


 


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