勝負の4年目を迎えるF1ドライバー角田裕毅と芸能界随一のF1ファン・堂本光一のスペシャル対談!「今年はトップチームにも伝わるような走りをしたい」

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2024年01月11日 06:21  週プレNEWS

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角田選手のF1デビューイヤー以来の対談は大いに盛り上がった。「角田選手は愛嬌があって、海外でも人気が高い理由がわかる」と光一

『週刊プレイボーイ』本誌での連載は最終回となる「堂本光一 コンマ一秒の恍惚」。そこでゲストとしてアルファタウリ・ホンダから参戦する日本人F1ドライバー、角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手を招き、スペシャル対談を行なった。

昨シーズンの最終戦アブダビGPでは一時トップを周回し、8位入賞を飾った角田選手。そして今シーズンは、姉妹関係にある王者レッドブルとの結びつきが強化されることで、チームの飛躍が期待されている。

F1参戦4年目を迎える角田選手と、芸能界随一のF1ファン・堂本光一が、お互いの仕事への取り組み方や2024年の抱負を語り合った!

* * *

■毎戦100パーセント出し切る! 明確な目標があった

堂本 角田選手にとって参戦3シーズン目の2023年は、ニツク・デ・フリースがチームメイトとなり開幕を迎えました。デ・フリースはF1直下のF2選手権やフォーミュラEでチャンピオンを獲得し、評価が高かった。角田選手にとっては、真価が問われるシーズンになると思っていました。

角田 デ・フリース選手は前年にウイリアムズからF1にスポット参戦して、いきなりポイントを取りました(9位入賞)。前評判がとても高く、周りはすごく騒いでいましたが、僕自身は負ける気はしなかったです。コース上で勝てばいいんだと思っていました。

堂本 プレッシャーを前向きにとらえていたんですね。

角田 そうです。F1は、あるレースでうまくいかなかったりすると、世界中のファンやメディアから叩かれます。でも次のレースで良い走りをすると、評価が百八十度変わりもする。そういうアップダウンのある世界なので、「こんなに騒いでいいの? 僕がデ・フリース選手に勝ったら、どうするのかな」と思いながら戦っていました。

堂本 F1はチームメイトがいて、毎戦、白黒がつく厳しい世界です。そんな中、角田選手は前半戦、クルマの能力をフルに引き出し、常にチームメイトのデ・フリースを上回る速さを見せてくれました。

でもシーズン途中にデ・フリースが解雇され、後半戦からF1で優勝経験が8回あるダニエル・リカルドが加入しました。試練を乗り越えたら、また新たな試練が待っていたような感じだったと思います。どんな気持ちでしたか?

角田 チームメイトが代わったからといって僕の気持ちに変化はありませんでした。というのも、自分の力を毎戦100パーセント出し切るという明確な目標があったからです。過去2年間、シーズンの終わりに「すべてのレースで100パーセントの力を出し切れたか?」と自分自身に問いかけたときに、出せていなかったレースが正直、何戦かありました。そういう戦い方をしていると後悔するし、走りにも表れます。

昨年は常に100パーセントの走りをしてコンスタントに結果を出し、レッドブルだけでなく、ほかのチームからの評価も上げることを目指していました。だからチームメイトが代わってもやることは同じです。リカルド選手の加入は逆にチャンスだと思っていました。速くて評価が高いリカルド選手を倒すことができれば、僕自身の評価がさらに上がります。いい機会だと思ってレースに臨んでいました。

堂本 ファンやメディアからは臆測を含めてさまざまな声が上がります。でも角田選手には明確な目標があって、それを達成するために戦っていたから、周りに左右されることはなかった。23年の角田選手はご自身が掲げた目標を間違いなくクリアしていたと思います。

角田 昨シーズン、レッドブルは別格でしたけど、それ以外は大接戦でした。予選では中団グループのタイム差はほとんどなくて、マシンの調子が悪かったとしても1周をうまくまとめられればポジションが2、3番手変わります。実際、最終戦のアブダビの予選では、ミラクルで6番手を獲得できました。

一年を通して見れば、ミスは何度かありましたが、コンスタントにクルマのパフォーマンスを引き出し、高いモチベーションを保って戦えました。

堂本 中団グループの接戦は、ファンとしては見ていて本当に楽しかった。レッドブルは異次元でしたから、決勝中に優勝争いがほぼ決まってしまうと、いつも角田選手のラップタイムをF1のアプリで追いかけながら応援していました。

角田 ありがとうございます!

■チームと角田選手が改善すべき点

堂本 最終戦のアブダビGPで角田選手は一時首位を周回して、夢を見せてくれました。最終的には8位入賞し、ファン投票による「ドライバー・オブ・ザ・デイ」を獲得しました。

角田 「ドライバー・オブ・ザ・デイ」はファンの方に認められた証しですので、うれしかったですね。もちろん本当の意味でドライバーとして認められるにはもっとコンスタントに活躍し、実績を積み上げていかなければならないと思っています。

堂本 角田選手はアブダビで参戦3年目の集大成を見せてくれたと思います。でも、ほかのドライバーがツーストップ作戦をとる中で角田選手はワンストップで、我慢を強いられる戦いになりました。ファン目線では、アブダビの角田選手には速さがあったので、もっといい戦略があったのではないかと思いながら見ていました。

角田 チームの欠点が戦略面にあるというのはわかっています。でも、そこは僕自身の課題でもあるんです。タイヤに関しては、レース前のデータでどれぐらい摩耗するのか?という予測はある程度できます。でも実際のレースになって、タイヤの消耗が想像以上に激しかったりすることもある。

そういう状況の変化を、ドライバーは無線でチームに伝え、チームは作戦を変更することがあります。でも僕がチームにうまくインフォメーションを伝えきれなかったことがあり、戦略を立案するストラテジストが状況を判断できなかったことが何度かありました。

堂本 そこがチームと角田選手が改善すべき点なんですね。

角田 はい。僕がアップデートしなければならないところです。逆にリカルド選手はそこが強くて、彼からいろいろなことを学びました。いくらマシンが速くても戦略がうまく機能しなければ結果は出せません。そこは次のステップですが、それ以外に堂本さん目線で僕のどこを変えたほうがいいと思いますか?

堂本 エエッ! 僕からF1ドライバーに対して言うことなんて何もないですよ(笑)。

角田 僕はレーシングカーを走らせるのは好きですが、実はF1はあまり詳しくないんです。デビュー前にサーキットでF1のレースを何回か見たことがありますが、昔からF1が好きでテレビや雑誌をチェックしていたわけではありません。逆に堂本さんはF1をよく見ていると思うので、「成功しているドライバーはこうだったよ」というアドバイスはありませんか?

堂本 いやいや、本当にないです(笑)。現在のF1は、昔と比べて表彰台に上がるのはもちろん、入賞するのも本当に大変だと思います。2000年代の前半ぐらいまでは、チーム間の競争力の差が大きかったですし、マシンやエンジンの信頼性も低かった。でも今は、マシンの性能が突き詰められていて、ドライバーのレベルも高い。

そんな中で、ドライバーはマシンの限界を引き出すために、針の穴に糸を通すような走りをしなければならない。23年に関していえば、角田選手は限界ぎりぎりの仕事をされていたと思いますが、それでも入賞に届かず、ポイント獲得まであと一歩の11位や12位(合計6回)が多かった。それがファンとして、すごく悔しかった。

角田 前半戦は、トップ8が決まっていたようなものでした。レッドブル、メルセデス、フェラーリ、アストンマーティンの4チーム、8台が上位を占め、入賞圏内の最後のふたつを残りのチームで争っていた。さらに中盤戦からはウイリアムズやマクラーレンが強くなってきて、僕たちがトップ10を狙うのはすごく難しかったですね。

堂本 それでもアルファタウリは後半戦に怒濤のアップデートを重ねて、かなり競争力が上がってきましたね。

角田 1回のアップデートの効果が小さかったので、結果に表れたのは後半戦に入ってからですが、もしかしたらアップデートの回数は僕たちが一番多かったかもしれません。22年シーズンは4回ぐらいしかアップデートを入れなかったのですが、23年はほぼ全戦で何かしら新しいパーツを入れていました。

24年型のマシンは速くなると思います。レッドブルとの関係がこれまで以上に強化されますので、そこはすごく楽しみです。アルファタウリは毎年、シーズンが終わると「来年のマシンは良くなる」と言っていますが、今回はけっこう、信憑性は高いと思います(笑)。

堂本 これまで長くチームを率いてきたフランツ・トスト代表が昨年限りで退任されました。24年はチーム体制が大きく変わるんですよね?

角田 そうですね。アルファタウリはイタリアとイギリスに工場があって、イギリスはレッドブルのファクトリーの近くにあります。主にマシンの空力を開発していますが、施設を拡充している最中ですので、24年はマシンが良くなってくれることを期待しています。

■角田選手から質問。F1のどこが好き?

堂本 そういえば初めて対談したとき(21年春)、トレーニングが嫌いだと言っていましたが、今は好きになりましたか?

角田 相変わらず嫌いです(笑)。でもトレーニングはちゃんとしていますよ。F1はフィジカルが大切だということをF1マシンに乗り始めてから痛感しました。レース中に疲れたら集中力が落ちてきて、それは当然パフォーマンスに影響します。成績を出すために必要だと割り切って、トレーニングに取り組んでいます。昨年の1月にドバイでトレーニング合宿をして、そこでかなり追い込んでやったのですが、自分でもフィジカルが強くなったと感じます。

堂本 じゃあ今年もドバイで合宿はするんですか?

角田 はい。その分、年末年始に休める時間が減ってしまいますが、やるしかありません。その点、堂本さんも休みが少ないと思いますが、オンとオフの切り替えはどうしていますか? 僕はうまく切り替えができなくて困っています。何かいい方法はないですか?

堂本 僕はあまりオンとオフを切り分けていないんです。気持ち的にも仕事をしているときのほうが安定している感じがします。逆に仕事をしていないときのほうがいろいろ考えてしまって、乱れてしまう。僕は12歳ぐらいから今の仕事をしているので、ある意味、それが自然なことになっているんですね。切り分けようと考えた瞬間にいろんなことが頭をよぎって、リズムが崩れてしまうんです。

角田 僕とは正反対ですね。オンとオフを切り替えないという感覚は、自然と身についていったんですか?

堂本 そうですね。10代の頃の忙しさは今では許されないようなものでした。睡眠時間は毎日数時間で、ずっと休みなしという生活だったので。

角田 マ、マジですか!?

堂本 そうなんです(笑)。当時はまだ子供で世の中を知らないので、それが当たり前だと思っていました。今でも忙しいときはありますけど、あの頃に比べたら余裕だなと感じます。そんな生活の中で、F1を見ているときがすごくいい息抜きの時間になっています。

角田 F1はどういうところが好きなんですか?

堂本 芸能の世界で仕事をしていると、普通ではなかなかできない経験がいろいろできます。でもF1だけは別です。僕がどうあがいたってF1マシンに乗ることはできないし、ましてや世界で20人しかいないF1ドライバーにはなれません。絶対に自分が入れない、手が届かない世界なので、純粋にファンとして楽しむことができます。

だからドライバーはもちろん、マシンを設計するデザイナーやエンジニアの方も、ただただ尊敬のまなざしで見ています。それにF1はドライバーもマシンもエンジンもすべてが究極で、常に進化している。F1を見ていると、まだ自分は全然、究極じゃないなと感じます。F1からは仕事では感じられない刺激をたくさん受けているので、レースは欠かさず見ています。

角田 でもヨーロッパのGPならまだしも、北米や南米のレースは、日本では早朝の時間帯に放送ですよね。毎戦チェックするのは大変じゃないですか?

堂本 僕は舞台があるときは規則正しい生活になるのですが、それ以外はメチャクチャなので(笑)。僕らの仕事は時間が不規則です。例えば、舞台が1ヵ月あるとすれば、開演時間に合わせて生活をするのでルーティン化されていきますが、それ以外はもう......。僕は、今日は朝の9時に寝ました。

角田 エエッ!

堂本 だからブラジルやメキシコはライブで見ていましたよ。

角田 それはすごい。僕はレースが開催されるどこの国に行っても、必ず朝日を浴びることをルーティンにしています。朝日を浴びることで脳がリセットされて体が時差を勝手に調整してくれるのですが、ナイトレースのラスベガスGP(時差17時間)のときは、それができませんでした。まさに堂本さんの生活スケジュールで、朝9時ぐらいに寝て、日が沈むタイミングで起きていました。肉体的にはキツかったですね。

堂本 僕は基本、日が昇ると「そろそろ寝ないと」という感じですから、毎日時差ぼけをしているようなものです(笑)。

角田 それで疲れやだるさを感じたり、体調がおかしくなったりしませんか?

堂本 それはないです。翌日、大事な仕事があって朝早く起きなければならないときは、逆に寝ないで体を追い込んだりすることもあります。

角田 うーん、全然意味がわかんないです(笑)。

■パフォーマンスに磨きをかけたい

堂本 F1は究極のスポーツでありエンターテインメントだと思っているので、日本でF1が盛り上がってほしいし、角田選手のことも知ってもらいたい。なんでメディアはもっと取り上げないのかな、と悔しいんです。今年は、角田選手の活躍にこれまで以上期待しています。

角田 僕は活躍して結果を出すことぐらいしか日本の社会やスポーツ界に貢献できません。僕はしゃべることはあまり得意じゃないですが、ドライビングに関しては自信があります。今年のマシンの出来が良ければ、パフォーマンスを限界まで引き出して表彰台に上がりたい。表彰台に立てば、メディアに取り上げてもらえる機会もおのずと増えると思います。それをきっかけに、F1を見てくれるファンの方も増えてくれるはずです。

もし序盤戦が良くない状況でのスタートになったとしても、その後、良い成績を残すための準備期間だと思ってしっかり戦います。昨シーズンの後半戦のように安定感のある走りをして、トップチームにも伝わるような走りをするのが目標です。F1でデビューして4年目、さらにパフォーマンスに磨きをかけていきたいですね。

堂本 24年シーズンは2月末に開幕してすぐに日本GPが第4戦として開催されます(決勝4月7日)。角田選手から前向きな言葉をたくさんいただいたので、今からシーズンの開幕が楽しみになってきました。

角田 今年も応援よろしくお願いします!

(スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/AKM ヘア&メイク/大平真輝)

●角田裕毅 Yuki TSUNODA
2000年生まれ、神奈川県出身。鈴鹿サーキットレーシングスクールを経て、16歳で四輪レースデビュー。その後、FIA-F4選手権でチャンピオンを獲得し、19年に渡欧。21年にスクーデリア・アルファタウリ・ホンダからF1デビュー。参戦3季目の最終戦アブダビGPでは8位入賞に加え、自身初の「ドライバー・オブ・ザ・デイ」獲得
公式Instagram【yukitsunoda0511】
公式X【@yukitsunoda07】

●堂本光一 Koichi DOMOTO
1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした87年頃からF1のファンに。昨年12月にKinKi Kids17枚目のアルバム「P album」、47枚目のシングル「シュレーディンガー」をリリース。2024年1月から福岡・博多座、1月から2月に大阪フェスティバルホールにて、ミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』の日本版を上演予定
公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】

★『堂本光一 コンマ一秒の恍惚』が『週プレNEWS』に移行して連載継続!!★

『週刊プレイボーイ』本誌で2016年10月にスタートし、7年3ヵ月続いた『コンマ一秒の恍惚』ですが、本誌での連載はここでいったん終了。今後は『週プレNEWS』に連載の場所を移行して継続することになりますが、特別なゲストをお迎えしての対談などは、本誌へ出張してくることがあるかも!?

Web連載は月2回の更新を予定しており、第1回は今回の角田選手との対談で掲載できなかった部分を特別版として掲載します(1月18日配信予定)。「この連載が続いてうれしいです。これからも究極のスポーツでありエンターテインメントのF1の魅力を少しでも多くの方に伝えていきたい」と光一さん本人も意欲的に語っていますので、これからもお楽しみに!

構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(対談) 写真/桜井淳雄

【写真】角田選手からの意外すぎる質問に堂本光一もタジタジ

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