F1新時代、2024年の焦点《前編》 ドライバーのシート争奪戦「2年後の大変革へ」今季前半戦が勝負

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2024年01月30日 10:51  webスポルティーバ

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F1新シーズン注目ポイント10(前編)

 2024シーズンで75回目を迎えるF1世界選手権は、3月2日にバーレーンで幕を開ける。今年のスケジュールは世界各国を9カ月かけて転戦し、12月8日のアブダビで閉幕する。

 今年はどんなドラマが待っているのか。2009年からF1を現地で全戦取材するジャーナリスト・米家峰起氏に「2024シーズンの焦点」を10点、ピックアップしてもらった。

   ※   ※   ※   ※   ※

【1】今シーズンもレッドブルの独走か。それとも大接戦?

 昨シーズンはレッドブルが22戦21勝の独走に終わりましたが、2024シーズンは果たしてどうなるのか?

 レギュレーションが変わらなければ、チーム間の格差は縮まっていくというのが「F1界の摂理」というものです。2年続けてマシン開発につまずいたフェラーリとメルセデスAMGも、昨年序盤にその失敗を認めてマシンコンセプトを変更し、2024年は白紙の状態から正しいコンセプトに沿って開発したマシンで挑んでくるだけに、レッドブルとの差は縮めてくると思います。

 もっと正確に言えば、少なくとも昨年のレッドブルRB19は超えてくるでしょう。でなければ100パーセント勝てないことは明らかなわけで、彼らもそんな勝負はしません。

 問題は「レッドブルがどこまで進化してくるか」です。

 2022年型の軽量化など小さな改良で臨んだ2023年と違い、2024年はレッドブルも大幅にマシンを刷新するとチーム関係者から聞いています。2023年はもっと接戦になると覚悟していたようですが、ライバルたちのつまずきもあって予想以上の独走となったため、レッドブルは早々に2024年型マシンの開発へとリソースをシフトすることができたからです。

 もちろん、ライバルたちもレッドブルの進化は想定したうえで、それを上回るような開発目標を設定しているはず。ですが、そのレッドブルの向上幅は予想よりも大きなものになるかもしれません。そうなれば、レッドブルが最速のマシンであることに変わりはないはずです。

 それでも、フェラーリやメルセデスAMGといったトップチームが2023年よりもレッドブルに近い場所にいれば、レース展開のなかで戦略による逆転や波乱に乗じた優勝を果たせるチャンスは格段に増えるはずです。

 そうなれば、マックス・フェルスタッペンの4連覇も決して容易ではなくなります。過去2年間よりプレッシャーのかかる状況でも、成熟したフェルスタッペンがミスのない完璧なレース運びを見せるのか、そこに一矢報いるドライバーとチームが現れるのか、楽しみにしたいと思います。

【2】トップ3からトップ5へ。F1サーカスは新・戦国時代

 昨年は前半戦にアストンマーティン、後半戦にマクラーレンが躍進を見せ、トップ5チームが表彰台争いを繰り広げるという展開になりました。

 レッドブルの独走ばかりが注目されがちでしたが、5チームが常に表彰台を争うというのは近年稀に見る大接戦。トップ3(レッドブル、フェラーリ、メルセデスAMG)以外のチームがこれだけ上位争いに加わるというのは、パワーユニットが導入された過去10年ではなかったことです。

 つまり、レッドブルとフェルスタッペンの独走を除けば、2023年はF1史に残るほどの接戦だったことになります。

 そしてこの状況は、2024年も変わらないどころか、さらに接戦になると予想されます。これはもともと、接戦状況を生み出すことを想定して決めた「2022年規定」がうまく機能しているとも言えます。そのレギュレーションに大きな変更がないため、各チームのマシンはさらに"正解"に向かって集約していくからです。

 昨年マシン開発に失敗したマクラーレンは、開幕前の時点でそれを察知して開発体制を刷新し、後半戦に大躍進を果たしました。しかし、実際に投入した大型アップグレードはオーストリア(第10戦)とシンガポール(第16戦)の2回だけで、それを確実に成功させたことが躍進につながりました。

 シーズン終盤戦はマシン開発を止めたため、アップデートを続けたメルセデスAMGに再び逆転される展開になりましたが、2024年に向けて正しい方向に進んでいることは明らか。さらにはディレクター陣を新規に獲得し、刷新した技術体制が本格稼働するほか、2024年型マシンは念願の自社風洞で開発が進められており、さらなる躍進が期待できます。

 一方のアストンマーティンも、2023年は後半に失速したように見えたのは、ライバルたちが躍進したため。彼らは2026年にトップに立つことを目標に、一歩ずつ前進していく計画です。

 昨年前半には新ファクトリーが稼働を始めました。マクラーレン以上に新たなリソースを使って開発した初めてのマシンは2024年型ということになり、彼らの計画でいえば「2024年は常に表彰台を争う」というポジションになります。2025年に優勝争い、2026年にチャンピオン争い、という目標を達成すべく、今年はさらに着実な一歩を進めてくるはずです。

 マクラーレンとアストンマーティンの躍進が物語るのは「カスタマーチームでも上位争いに加われる」ということです。パワーユニットは2025年まで開発が凍結されており、基本的な仕様に変更を加えることはできません。性能に関しても、4メーカーで常用最大パワーにはほとんど差がなく、回生時間の差はあるものの、それは決勝での競争力がメイン。

 マシン設計という点において大きな差が出にくくなったことで、カスタマーチームでもワークスと変わらない競争力を持ったマシンを開発することが可能になってきました。その状況は2024年も変わらないため、もしかするとマクラーレンやアストンマーティン以外のカスタマーチームも躍進を果たし、トップ5どころかトップ6の争いになる可能性もありそうです。

【3】次のエースは誰だ? 2026年を睨んだドライバー市場

 F1は2026年に車両・パワーユニットともに「大変革」が待ち構えており、アウディやフォードの参戦も含めて大きな変化を迎えます。

 それゆえにドライバー市場は、2026年ではなく前年度の2025年から新時代に向けた体制へと移行し、チームの基礎固めをしておくのが定石となるでしょう。つまりF1ドライバーたちにとっては、2025年のシート争いこそが重要な意味を持っています。

 そしてその2025年のシートが決まるのは、2024年の夏休み前後。ということは、2024年の前半戦の走りが大きな決め手になるわけです。

 レッドブルはフェルスタッペンという絶対的エースの座は決まっていますが、セカンドシートは未知数。フェラーリはシャルル・ルクレールをエースに据える意向のように見えますが、カルロス・サインツとのタッグで行くのか、はたまた違うドライバーを獲得するのか。メルセデスAMGはルイス・ハミルトンでの継続か。

 ランド・ノリスはマクラーレンのまま2026年を迎えるのか、トップチームへ移籍するのか、それとも成長著しいオスカー・ピアストリが追い越していくのか。アストンマーティンはフェルナンド・アロンソ継続か、ランス・ストロールに成長が見られなければどうするのか......。

 2026年以降の「F1新時代」に向けて、チームもドライバーも決断を迫られるのが2025年であり、そこに向けた勝負が2024年前半に訪れます。新時代のドライバーラインナップがおぼろげながらに見えてくるのが2024年だとも言えるでしょう。

(中編につづく)

◆中編>>「角田裕毅、4シーズン目で初の表彰台を掴めるか」

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