漫画業界注目!「MANGA甲子園」なぜ話題?『白山と三田さん』くさかべゆうへい“創作技法”公開への思い

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2024年02月01日 12:11  リアルサウンド

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 NTTドコモが運営する映像配信サービス『Lemino』で配信されている漫画家リアリティ番組、「MANGA甲子園」が話題である。舞台は“令和ときわ荘”。プロの漫画家を目指す若き男女6名が2ヶ月間共同生活を送りながら、人気漫画家から出される課題を前に悪戦苦闘しつつ、人間としても成長していく姿を描いている。


  漫画家志望者たちが互いに切磋琢磨しながら漫画に向き合う光景は、まさに手塚治虫、藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫など数々の有名な漫画家を生んだ“トキワ荘”を彷彿とさせるものだ。そして、漫画家を支える重要な存在である編集者の実態までリアルに描かれていることで漫画業界からも注目を集めている。


  なぜなら、番組内で一流の漫画家や現役の編集者が明かす、プロの極意はどれも参考になるからだ。こうした構成ゆえ、プロの漫画家はもちろん漫画家志望者、さらには編集者を目指したい人にとっても必見の内容になっている。


  今回は「週刊少年サンデー」で先日完結を迎えた『白山と三田さん』の作者であり、第3課題「笑える漫画を描け」にて審査員として登場した、くさかべゆうへい氏にインタビューを敢行。初めて漫画の審査員を務めた感想から、日頃プロの漫画家として大切にしている心構えや信念を聞くと共に担当編集者の森脇氏に漫画業界から見た番組の魅力などをじっくりと聞いた。


■審査員のオファーに驚き

――まずは、「MANGA甲子園」の番組側から、審査員のオファーがあった時の印象を教えてください。


くさかべ:依頼が来たのは『白山と三田さん』の連載がはじまって、1年半くらいのタイミングでした。僕も連載を始めたばかりの新人漫画家ですから、自分でいいのだろうかと、びっくりしたことを覚えています。というのも、数年前までは僕も出演者同様に雑誌に投稿を続け、審査される側の立場でしたから。


――そんな先生が、初めて審査する側に回ったわけですよね。


くさかべ:うまくできるか不安はありました。ただ、ベテランの作家さんとは違う、僕の立場や見方ならではの審査ができれば意味があるのかなと思い、引き受けることにしました。


――先生が審査の際に注目したことはなんでしょうか。


くさかべ:読みやすい漫画になっているか、という点をしっかり見ましたね。コマ割りもそうですし、一コマに入っている吹き出しの量は適切か、などは漫画の読みやすさに繋がるポイントです。こうした基本を大切にして漫画を描くことを、僕は日頃から凄く意識しています。


――くさかべ先生が出したお題は「笑える漫画を描け」でしたね。くさかべ先生のこのお題に対する思いや、参加者に対して持っていた期待などを教えてください。


くさかべ:笑える漫画というだけでもテーマが広いので、挑戦しがいがあるのでは、と思ったからです。実際、僕もどんな作品が仕上がるのか想像もつかなかったので、審査の日が来るのが楽しみでしたね。


■作品は忖度なしで厳正に審査

――1位にパンダネコさんの『すべてはプリンのため』、2位に三好真太郎さんの『妄想中』を選ばれていました。これは一切の忖度なしで、先生が自ら選んだのでしょうか。


くさかべ:本気で審査をしました。1位、2位はすぐに決まったのですが、3位以下は僅差ながらどれも力作ぞろい。順位をつけるのはかなり悩みました。


――1位、2位の選定理由を教えていただけますか。


くさかべ:『すべてはプリンのため』は読み進めていくほど面白くなっていき、最後まで笑いが続く構成で、読みごたえがありました。『妄想中』も良かったのですが、1位との差は全体的な笑いの量が少ないことですかね。作者がここで絶対に笑わせるぞ、と狙って描いたシーンは本当に面白かった。でも、それ以外にも、小刻みに笑いが挟んであればなお良かったなと思いました。


――3位から6位の漫画のなかで印象に残っている漫画、参加者はありますか?


くさかべ:蒼乃さんの『最高に可愛い先輩の話』はギャグで笑わせるというより、キャラクターの関係性を大切に描いた、読者をほっこりさせる笑いでした。僕が普段描いている笑いと違う方向性で楽しませていただきました。作品に順位がつくのはいいことだと思います。上位の人は素直に嬉しいと感じるでしょうし、残念ながら下位だった人はこれを機に奮起すると思いますから。僕も新人賞に投稿していた頃、どうして入賞に至らないのか真剣に分析していましたからね。


■くさかべ先生の下積み時代

――くさかべ先生は、2021年から「週刊少年サンデー」で『白山と三田さん』を連載し、先日100話で完結しました。異色のギャグ漫画であり、ラブコメ漫画としても評判になりました。デビューまでの苦労話を伺いたいです。


くさかべ:編集者に見せて初めてギャグ漫画が向いていると気づきました。僕はデビュー前、『NARUTO』などのバトル漫画が好きで、同じようなタイプの漫画を描いていました。ところが、編集さんに読んでもらうと、そこそこのウケしかもらえませんでした。


――先生がギャグ以外の作品を描いておられたとは、驚きです。漫画家さんはしばし、「描きたい漫画」と「描ける漫画」の狭間で苦悩するといわれますが、先生にとって転機はなんだったのでしょうか。


くさかべ:それまでは真面目なテンションでアクション漫画を描いていたので、ちょっとコメディ要素を入れてみたんです。『ワンパンマン』のような感じですね。そしたら、キャラクターが面白いと編集さんに言ってもらい、それならばとキャラの個性を活かしたギャグ漫画を描いてみたら、初めて自分で面白いと実感できる漫画が描けたんですよ。編集さんからの反応も良く、その後はギャグ漫画の研究を重ね、新人賞に入賞できました。


――先生も描ける漫画のジャンルを見つけるまで、試行錯誤を重ねたんですね。


くさかべ:もちろん、描きたくないものを無理やり描く必要はないのですが、自分はこれしかできないと思い込みすぎない方がいいと思います。「MANGA甲子園」の出演者にも、ギャグを一度も描いたことがない人がいたかもしれませんが、苦手意識があったものに挑戦してみたら、案外描けたりするかもしれない。僕の「笑える漫画」というお題も、そういった気づきのきっかけになればと思いました。


■頭を使わずに読めるギャグ漫画の素晴らしさ

――くさかべ先生はギャグ漫画の魅力をどのように考えていますか。


くさかべ:何も考えずに読めることかな(笑)。僕はあくまで、漫画は暇つぶしで読むものだと思っているので、頭を使わずに笑えるギャグ漫画って素晴らしいと思うんです。


――そういった魅力的なギャグは、どのように発想するのですか。


くさかべ:『白山と三田さん』は田舎が舞台なので、田舎の人が共感できそうなギャグが思いついたら、ネーム(注:下描きを始める前にコマ割りやセリフを描く漫画の設計図のようなもの)の段階で入れていきます。ギャグを考えるのは大変で、特に連載をはじめた頃は思うようにいかず苦労した時期もありますが、1年くらい経ってコツを掴んでからはすんなり進むようになりました。


――作品が完結した今、どのように感じていますか。


くさかべ:僕自身が満足のいく終わり方ができたのが良かったです。もっとあれをやっておけば良かった、という後悔のようなものはなく、描きたいものを描き切れたと思っています。とりあえず大変だった週刊連載を無事に終えられたので、少しはゆっくりできるかなという思いでホッとしています(笑)。


――早くも、先生の次回作に期待してしまいます。


くさかべ:次の連載はまだ何も考えていないのですが、僕は漫画家に大切なことって、描き続けることだと思うんです。だから、次も長く続けられるような漫画を描いていきたいですね。


■もし、くさかべ先生が「MANGA甲子園」に出演したら

――「MANGA甲子園」は参加者自身のドキュメンタリーとしての面白さもありました。参加者たちは共同生活を送る中で、友情やぶつかり合い、恋愛なども経験しています。もし、くさかべ先生が「MANGA甲子園」に出演するとしたら、どんな参加者になると思いますか。


くさかべ:僕はデビューまで6年ぐらいアシスタントをしながら、自分の漫画を描いては、投稿する日々が続いていました。アシスタント先には漫画家志望の若者が集いますが、自分から話したりすることはあまりなかったと思います。おそらく「MANGA甲子園」でもあまり他の人と関わらず、黙々と漫画を描いているかなと想像します(笑)。


――そんなくさかべ先生が思う「MANGA甲子園」の魅力はなんでしょう。


くさかべ:同じ志を持った人と交流できるのはいいですよね。みんなで集まって漫画を描き、他の人の意見を聞くことができるのが最大のメリットだと思います。それに、身近に漫画を描いている人がいると、本来の自分以上の力が出るような気がします。


――森脇さんが編集者目線で見た「MANGA甲子園」の魅力はありますか。


森脇:仲間が見つかることでしょう。漫画家さんは孤独に執筆する人が多いです。だから、隣に懸命に描いている人がいて、共同で生活できるのは貴重な経験ではないかなと思います。近くに上手い人がいたりすると、当然、メンタルはめちゃくちゃやられると思いますよ。ただ、メンタルは若い時にやられていた方が強くなると思いますし、成長の糧にしてくれたらいいなと。あとは全員当社からデビューして、ベストセラーを連発して、みんなが一緒に潤えばいいなと思います(笑)。


――「MANGA甲子園」は2月4日の生配信で最終回を迎えます。番組に出演している参加者の皆さんをはじめ、漫画家を目指す方々への応援メッセージと、最終回を楽しみにしているユーザーのみなさんにメッセージをお願いいたします。


くさかべ:参加者のみなさんにとっては、こんな経験はなかなかないと思いますから、結果がどうであってもそれに左右されず、きっかけが掴めるまで描き続けて欲しいと思います。あと、漫画家志望者に向けて話すとすれば、漫画家はスケジュールがきつい以外は基本的には楽しい仕事だということです。そして、普通にサラリーマン生活を送るよりもお金が稼げる夢のある仕事でもあります(笑)。積極的に目指して欲しいと思っています。



■「MANGA甲子園」番組概要
・あらすじ


 舞台は令和ときわ荘。プロの漫画家を目指す若き男女が共同生活を送りながら、人気漫画家から出される課題に奮闘する。一つ屋根の下で巻き起こる挫折と涙と友情。漫画家として、人間として成長していく若者たち。一流の漫画家や編集者が明かすプロの極意も必見!毎回、参加者が課題で描いた作品は超豪華声優陣が声を吹き込んで発表!賞金100万円と「サンデーうぇぶり」での連載をかけた熱き漫画バトル!掴み取れ!No.1漫画家の称号!



・配信スケジュール


最終回:2024年2月4日(日) 無料生配信
視聴ページ→https://bit.ly/3HDLaue


※第1話〜第6話は2月 12日(月)まで一挙無料公開中
  視聴ページ→https://bit.ly/48TplTy



■漫画家直筆サイン入りグッズが抽選で5名に当たるキャンペーンをLemino公式Xにて実施中!キャンペーンの詳細や応募規約はLemino公式X(https://twitter.com/Lemino_official)をご確認ください。


■「Lemino」概要
感情でつながるLeminoならではの機能で、人気の映画やドラマはもちろん、独占配信のオリジナル、韓流作品や、スポーツ、音楽ライブまで豊富なコンテンツに出会える映像配信サービス。無料コンテンツ(広告付き)のほか、月額990円(税込)の「Leminoプレミアム」ではさらに充実のラインアップをお楽しみいただけます。


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