テスラの運転支援「オートパイロット」って実際どうなの? 「モデル3」オーナーが感じた“能力の高さ”とは

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2024年02月01日 19:01  ITmedia NEWS

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 「iPhoneにタイヤをつけたようなクルマ」と表現されるTesla。IT・ビジネス分野のライターである山崎潤一郎が、デジタルガジェットとして、そしてときには、ファミリーカーとしての視点で、この未来からやってきたクルマを連載形式でリポートします。


【画像はこちら】テスラ「オートパイロット」が道路を監視している様子


 前回のコラム「気になるテスラの「電気代」「整備費」 丸2年乗ったモデル3オーナーの、ランニングコストの総額は?」で、オートパイロットのリコールについて言及しました。今回は、それを受ける形で、Tesla車の魅力の1つであるオートパイロットについて、車載カメラによる動画を交えながら語ります。


 オートパイロットは、アダプティブ・クルーズ・コントロール、オートステアリング、衝突回避機能といった、各種安全運転支援機能が動作した状態を示すシステムの総称です。


 来るべき「自動運転」という目標を見据えた先進機能という意味で、トヨタの「アドバンスド・ドライブ」、日産の「プロパイロット」、ホンダの「センシングエリート」といった種類に属するものだと理解しています。


 筆者は、2021年9月からModel 3に乗り始めました。これまでに21回のソフトウェアアップデートが降ってきましたが、その全てではないにしろ、アップデート後に「APの挙動が改善されているな」と思うことがままあります。


 Teslaはアップデートの内容を都度公開していますが、オートパイロットの改善や調整といった言語化や可視化が難しい内容までは、言及しないことが多いようです。


 筆者が進化したなと感じる一例を示しましょう。以前は、首都高速都心環状線外回りの銀座付近のきつめのカーブをオートパイロットを作動させたまま通り抜けることができませんでした。


 カーブへ進入したかと思うと、「カックンブレーキ」発動でとても「任せる」気にはなりません。また、オートステアリングについても、カーブ途中でアラート音が鳴りドライバーの介入を促されていました。


 その後も、このカーブを通るたびにオートパイロットの挙動を定点観測していました。次の動画は、2023年11月末に前述のカーブでオートパイロットを作動させたまま通り抜けた状況を映したものです。以前より、明らかに進化しています。60〜50〜60km/hとスムースなブレーキングからの加速、さらに車線中央を確実にトレースするハンドル操作で何事もなく通過しています。


 同じような進化は、首都高速三ツ沢線から横羽線に合流する金港JCTのカーブ、第三京浜道路終点玉川ICのカーブなどでも感じています。ただ、毎回、通行のたびにスムースな挙動を示すのかというと、そうではない点が残念なところです。以前のカックンブレーキほどではないにしても、ときどき、ぎこちない減速挙動を示す場合もあり、100%確実というわけではありません。さらなる進化に期待したいところです。


●アクシデントに先んじて危険を察知する?


 オートパイロットには、実際のアクシデントに先んじて危険を察知し、音によるアラートを発したり、自動ブレーキを作動、状況によってはハンドルを自動操作する機能があると言われています。次の「Tesla Autopilot predicts crash seconds before it happens」と題した2016年12月の動画には、事前に危険を察知する様子が記録されています。ちなみに、オートパイロットのリリースは2014年です。


 ドライブレコーダーを搭載したTesla車のすぐ前を走るオレンジ色のクルマが右にウインカーを出し、右に進路を変更した瞬間に警告音が鳴り、ドライバーに注意喚起した上で、オートパイロットが自動解除(「プンポン」というアラート)されています。次の瞬間、オレンジ色のクルマが、渋滞最後尾のSUVに激突しています。


 この動画からは、前方が渋滞していることに気づくのが遅れたオレンジ色のクルマが慌てて車線変更したものの、回避が間に合わず、SUVに後方から突っ込んだということが読み取れます。


 Teslaビジョンは、オレンジ色のクルマが右に進路を変更した瞬間にその先が渋滞していることを認識した上で、オレンジ色のクルマのブレーキランプが点灯しなかったため激突すると判断して、実際に激突するより前にアラートを発したものと思われます。この動画からは、自動ブレーキが作動したかどうかはわかりません。


 実は筆者も先日、首都高速道路横羽線で「もしかしたら」という経験をしました。車載カメラによる動画でご覧ください。


 左側の車線を一定の車間を保ちながら流れに合わせて走行していたところ、右車線の併走車(軽ワゴン)に対し、後ろから急速接近した白いミニバンが急ブレーキを踏んでいます。その瞬間にアラートが発せられ、自動ブレーキが発動しました。


 動画をご覧頂くと一目瞭然ですが、そこはちょうど右ランプからの合流地点で、軽ワゴンが合流車に譲る形で減速しているところに、白いミニバンが急接近しています。


 これは筆者の推測ですが、ランプからの合流車を起点としたアクシデントの発生をTeslaビジョンが予測して警告音を発し、自動ブレーキがかかったと考えることができます。このときは、オートパイロットは自動解除されることなく、危機が過ぎ去ると自動加速して通常運転に復帰しています。この間、ドライバー(筆者)は、運転に介入していません。


 「急減速したら後方から追突される危険があるのでは」というご意見があるかもしれません。しかし、Teslaビジョンは後方も監視しているので、追突の危険があれば、それを回避するために、可能な範囲で自動加速する可能性もあります。実際、YouTubeにおいて、渋滞時、後方からの玉付き衝突を避けるために自動加速したModel Xの動画を見たことがあります。


●危険回避は一般道でも使える


 じゃあ、Teslaはオートパイロット起動時にしかアクシデント回避を発動しないのかというと、そのようなことはありません。一般道を手動で運転しているときも危機回避アラートを発します。


 次の動画は、道ばたで立ち話をする工事の作業員の挙動に反応しています。決してすべての作業員や歩行者に反応するわけではありませんが、「アクシデントが起きるかも」と予測した場合にのみ反応するようです。このときは、警告音だけで、自動ブレーキは作動しませんでした。


 上記の他にも、誘導棒を振りながら身を乗り出す警備員や、路肩を走る自転車に対し警告音が鳴ったこともあります。


 ただ、路上の工事関係者や自転車に対し、常に警告音が鳴るというわけではありません。何事もなく通り過ぎることの方が圧倒的に多いことは確かです。従って、Teslaビジョンがどのような判定基準で対象物の挙動を判断し、警告音を発しているのかは、ユーザーにはうかがい知れません。その部分はあくまでもブラックボックスです。


 これからも定点観測を行いつつ、ユーザーとしてオートパイロットの進化を楽しみたいと思います。


著者プロフィール


●山崎潤一郎


音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla


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