母親を亡くし、食事を摂らなくなったロバ 獣医が24リットルのコーラで命を救う(英)

3

2024年02月09日 11:12  Techinsight Japan

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

Techinsight Japan

ロバのジョーイ(右)は母親を亡くしたことがストレスになったのか、摂取したものが胃内部に蓄積して小腸への流れを阻害していた(『The Donkey Sanctuary 「JOEY FIZZES BACK TO FULL HEALTH」』より)
イギリスのある農場で飼育されているロバは、胃の中の食べ物が消化されずに蓄積されてしまう病気に悩まされていた。病状は深刻で、食べることができなくなってしまったロバを救うため、獣医は24リットルものコーラを使った奇想天外な治療を施した。大量のコーラで治療した結果、無事に胃の詰まりは解消され、ロバは新しい仲間とともに元気に過ごしているという。英国放送協会『BBC』などが伝えた。

【この記事の他の写真を見る】

英デヴォン州シドマスにある農場「Slade House Farm」で飼育されているロバ“ジョーイ(Joey、15)”は、ある時からまったく食事を摂らなくなってしまったため、スタッフが心配していた。

この農場を本部にしてロバの保護活動を行う団体「The Donkey Sanctuary」の獣医であるジェイミー・フォレストさん(Jamie Forrest)は、すぐに腹部超音波検査や鼻からカメラを通して胃カメラの検査を行い、ジョーイの体調不良の原因を調べた。そして検査の結果、ジョーイの胃の中に大きな塊があることが分かった。

これは「Gastric impaction」と呼ばれる病気で、摂取したものが胃の中で消化されずに蓄積されてしまう症状を呈する。通常、摂取したものは胃から小腸へ向かうが、それが胃の中で塊となって次第に大きくなり、小腸への流れをブロックしていた。

食事を摂らなくなってしまったジョーイの症状は深刻で、ジェイミーさんは胃の詰まりを解消するための治療方法を考えた。そして思いついたのは、コーラを利用した治療だった。

「1日に6リットルの砂糖が入ったコーラを3回に分けて使用し、4日間かけて治療を行いました。胃の中にある塊を柔らかくして溶かし、腸の方へ流れていくようにしたのです」とジェイミーさんは話す。

ジェイミーさんはジョーイの鼻にチューブを通し、コーラを胃の中に直接流し込んだそうで、「要するに、コーラは排水管クリーナーのような働きをしたのです。硬いものを柔らかくすることで、最終的に胃を通過できるようになります」と、その原理を説明した。

また、ダイエットコーラではなく普通のコーラが用いられたのにも理由があった。ロバは食事量が不足すると、体内の臓器を動かすために摂取量以上のエネルギーを消費し始める“負のエネルギーバランス”の状態になるという。重要な臓器の動きを維持するために、自身の脂肪を分解してエネルギーを作り出す。この状態が続くと臓器にダメージが出てしまい、最終的には死に至る可能性もあるため、カロリーの多い普通のコーラを使用することになった。


今回は獣医であるジェイミーさんの適切な判断によりコーラを使用することになったが、「特に問題のない健康なロバにコーラを与えないように」と、ジェイミーさんは注意を呼びかけている。

ジョーイが食事を摂らなくなったのは、昨年11月に高齢だった母ロバを亡くしてからのことだった。ジョーイの世話係であるケイリー・イェランドさん(Kayleigh Yelland)は、「ジョーイはずっと母親と過ごしてきたので、母親が亡くなったのはジョーイにとって非常に大きな変化だったのです。かなり神経質になり、誰とも一緒にいたがらなかったですね」と、当時を振り返る。

治療の間もジョーイのもとを訪れて世話をしていたケイリーさんは、「私たちの訪問が、治療に関係するものではないとジョーイに感じてほしかったのです。会いに行くたびに、ジョーイを撫でて安心感を与えることで、ポジティブな経験だと捉えてもらいます。これを繰り返すことで、私たちはジョーイを安心させるために来ているのだと、ジョーイが理解する手助けになるのです」と明かしている。

コーラによる治療を4日間受けたジョーイは、胃内部を確認するために再び胃カメラ検査を受けた。獣医やスタッフの献身的な努力が功を奏し、胃の中にあった大きな塊は消えていた。ジェイミーさんは、「ジョーイが無事に回復して、本当に良かったです。詰まりの状態が非常に深刻なものだったので、治療を続けるべきかどうかの判断は難しかったですが、幸いにもジョーイは危険な状態を乗り越えました。ジョーイには生き抜く力があると信じていたので、辛抱強く治療を続けたのです。良い結果になって本当に嬉しいですね」とコメントしている。

なお、ジョーイが治療を受けている間、ケイリーさんはロバの“ベン(Ben)”を新しい友人としてジョーイに紹介していた。ベンも一緒に過ごしていた仲間を亡くしたばかりだったと言い、ジョーイとベンが同じ悲しみを分かち合うことで、友情が芽生えるのではないかと考えてのことだった。ケイリーさんの計画は上手く進み、治療を終えたジョーイは、ベンと一緒に食事をしたり追いかけっこをしたりと仲良く過ごしているそうだ。

画像は『The Donkey Sanctuary 「JOEY FIZZES BACK TO FULL HEALTH」』『Yorkshire Wildlife Park X「What happens when a Polar Bear has tooth ache?」』『Metro 「World’s largest gallstone is removed from elephant by 20 vets」(Picture: Viral Press)、「Pufferfish’s teeth are so big it needs to see a dentist」(Picture: SWNS)』『The Veterinary Health Centre Ltd Facebook「Everyone meet Suki!」』『News24 「PICS: Lion, named Chaos, goes for his first radiation session for skin cancer at Tshwane clinic」(Supplied: Kara Heynis)』より
(TechinsightJapan編集部 iruy)

このニュースに関するつぶやき

  • なんか涙出る。。欠落感を補う友達まで用意して手厚く治療してくれたなんて。。。すべての医師、獣医師、研究者にこうあってほしい( ;∀;) ですが、なぜコーラ?ビタミン摂れるジュースとかではなくて?
    • イイネ!2
    • コメント 2件

つぶやき一覧へ(2件)

前日のランキングへ

ニュース設定