海外旅行中に買った現地の薬、「持ち帰ったら違法になる」って本当?【薬学部教授が解説】

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2024年02月13日 21:21  All About

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海外旅行のお土産として、現地の薬を買って帰りたいと考えた場合、注意すべきことがあります。持ち帰りの可否、持ち帰る場合の注意点、また、個人輸入した薬を家族や友人にあげてもよいのか、わかりやすく解説します。

Q. 「海外旅行のお土産として、現地の薬を持ち帰るのは違法」って本当ですか?

Q. 「海外旅行に行くので現地のことを調べていたところ、とてもよく効くのど飴が薬局で買えるという情報を見つけました。少量の麻酔薬のようなものが入っていて、のどの不快感を取ってくれるようです。

処方薬でもないようなので、家族へのお土産に買いたいと思うのですが、日本で売っていない薬を持ち帰るのは違法ですか? 現地で試す分には問題ないでしょうか?」

A. 個人輸入した薬の譲渡は違法です。現地での利用もおすすめはできません

海外の薬局などで手軽に買える薬でも、日本国内で流通していない薬を使用するのは、リスクを伴います。薬は、人の健康や身体等に直接影響するものです。国内で流通している製品は、データに基づいて、品質、有効性及び安全性が確認されたものだけで、「医薬品医療機器等法」などの法律によって守られています。

「海外で一般的な薬が、なぜ日本で認められていないのか」「日本は医薬が遅れているのではないか」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は人種によって遺伝的背景が異なり、薬の効き方も違ってくることがあるのです。

そのため、日本人に使用した場合の有効性と安全性が確認できていない薬については、一般に国内での流通が認められていません。ただし、一般の個人が薬を海外で購入して持ち帰る「個人輸入」は、全面的に禁止されているわけではありません。一定の条件で認められています。

たとえば、海外旅行中に病気やケガの治療を現地で受け、その薬物治療を継続する必要がある場合には、その薬が日本で使用されていないものであっても持ち帰ることができます。また、海外の方が来日するときに、常備薬として日本に持ち込むことなども差し支えありません。

今回のご質問のように、海外の旅行先でよさそうな薬があるので薬局で買って帰りたいという場合は、ケースバイケースです。その薬の成分や量が、日本国内でも流通しているものと同じであれば問題ありませんが、違うのであれば、やめておいたほうがいいでしょう。

ご質問の中の「少量の麻酔薬のようなもの」の詳細がわかりませんが、薬の成分によっては持ち込みができないものもあると考えられます。

また、薬を個人輸入をするには、原則として、地方厚生局(厚生労働省の地方支分部局)で必要書類を提出し、医薬品医療機器等法に違反する輸入でないことの証明を受ける必要があります。

安全性が高く汎用されている薬や、ごく少量の場合は、証明を受けていなくても、税関で確認してもらい、特例的に通関できることもあるようですが、せっかく買ってきた薬が没収される可能性もありますから、旅行前から計画しているのであれば、やはり事前に申請して許可証明をとっておくことをおすすめします。

もう一点知っておいていただきたいのは、薬の個人輸入は、自分自身で使用する場合に限って認められているということです。他の人に売ったり、譲ったりすることは認められません。つまり、ご家族や親しい友人へのお土産として持ち込んだ場合は、法律違反になってしまうのです。

あなた自身が現地で使用して大丈夫だったとしても、あなたとは違うご家族に合うとは限りません。違法になることにとどまらず、万が一ご家族が健康を害した場合は、あなたが責任を負うことになります。

ご質問者の方は「のど飴くらいなら」と思われるかもしれませんが、海外で売られているのど飴の中には、覚醒剤や麻薬に近いような強い成分が含まれている場合もありますので、ネットの不確かな情報や口コミを鵜呑みにしない方が賢明です。

国内で流通しているのど飴でもいいものはたくさんありますから、その中から自分に合うものを見つけた方がよいでしょう。

阿部 和穂プロフィール

薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))

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