レノボ「Legion Go」を低消費電力モードでテストしたら、思ったよりも強かった【レビュー前編】

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2024年02月13日 21:21  ITmedia PC USER

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レノボ・ジャパンのポータブルゲーミングPC「Legion Go」。直販価格は税込みで13万4860円となる

 レノボ・ジャパンの「Legion Go」は、Ryzen Z1 Extremeを搭載するポータブルゲーミングPCだ。本体左右のゲームコントローラー(パッド)を着脱可能な上、両コントローラーをBluetooth接続でき、果ては「FPSモード」にすることでワイヤレスマウス(とWASDキーのみのキーボード)として機能する。


【その他の画像】


 この手のポータブルゲーミングPCとして、Legion Goは後発組だ。その実力はいかほどのものか、借用した実機でチェックしていこう。


●モバイルゲーミングPCに特化した「Ryzen Z1 Extreme」を搭載


 本機は、AMDの「Ryzen Z1 Extreme」というAPU(GPU統合型CPU)を搭載している。


 CPUコアは「Zen 4cアーキテクチャ」で、8基16スレッド(3.3GHz〜5.1GHz)を備える。Zen 4cはダイ面積を「Zen 4アーキテクチャ」比で約35%削減して消費電力を抑えつつも、Zen 4アーキテクチャの高い演算パフォーマンスを維持したことが特徴だ。TDP(熱設計電力)は9〜30Wに設定されている。


 本体単体時で約210(幅)×131(奥行き)×20.1(厚さ)mm、約639gというサイズと重量なのに、最大5.1GHzで駆動する8コア16スレッドCPUが搭載されているというのは、結構“胸熱”なのではないだろうか(「だから厚いのでは?」という意見はあるかもしれないが)。


 GPUコアは「RDNA 3アーキテクチャ」に基づくもので、12基搭載されている。RDNA 3アーキテクチャはリアルタイムレイトレーシング(RT)処理や、超解像技術「Radeon Super Resolution(RSR)」などRadeon RX 7000シリーズと同等の機能を利用できる。


 GPUコア(CU/演算ユニット)の基数は独立GPUたる同シリーズと比べると少ない。しかし、CPUに統合されたGPUとしてはかなり強力で、HD(720p/1280×720ピクセル)あるいはフルHD(1920×1080ピクセル)での描画なら、ある程度ゲームを楽しめそうではある。


●メモリとSSDは「そこそこ」?


 メモリの容量は16GB(LPDDR5X規格)となる。最近のモバイルゲーミングPCとしては過不足のない容量だが、本機はグラフィックス描画をAPUに委ねており、最大で約3GBがグラフィックスメモリとして消費される。


 最近はグラフィックスメモリだけでなく、システム(メイン)メモリを多く消費するゲームタイトルもある。そのようなタイトルをプレイするのは若干厳しい……と思ったのだが、そこまでガチなタイトルをプレイしたいならGPUボックスをつなぐか、そもそも外部GPU付きのゲーミングPCからリモートプレイすると思うので問題にはならないだろう。


 SSDはPCI Express 4.0 x4接続で、容量は512GBとなる。主に軽めのゲームタイトルを楽しむのであれば必要十分だが、データ容量の大きいタイトルを複数楽しむ場合は少し心もとないかもしれない。


 今回の評価機には、ウエスタンデジタル(WD)のPCビルダー向けSSD「WD PC SN740」のType 2242/OPAL(※1)非対応/512GBモデル(SDDPNQD-512G)が搭載されていた。公称のシーケンシャル読み出し速度は毎秒5000MB、シーケンシャル書き込み速度は毎秒4000MBと、そこそこハイスペックである。


(※1)自己暗号化機能(モジュール単体で暗号化が可能)


 なお、搭載されているSSDからも分かる通り、本機のSSDスロットは「M.2 Type 2242」で、バックパネルを外せば簡単に交換できる。しかし、以前の記事でもお伝えした通り、本機のSSDはCRU(Customer Replacable Units:ユーザーによる交換可能部品)として定義されていないため、換装は自己責任ということになる。希望者に対して「SSDアップグレードサービス」的なものがあるとベターなように思う。


 ちなみに、本機にはmicroSDメモリーカードスロットも用意されている。一時的にファイルを保存するためのストレージを用意したい場合は、ここにある程度大容量のmicroSDを差し込んでおくという手もある。


 このスロットの他、本機の上部にはUSB4(USB 40Gbps)端子とイヤフォン/マイク端子が、下部にはUSB4端子がある。上下のUSB4端子は機能的に同一で、USB PD(Power Delivery)による電源入力と、DisplayPort Alternate Modeによる映像出力にも対応している。


 ディスプレイやゲームコントローラー部について、もう少し詳しく見ていこう。


●高速液晶ディスプレイは“好発色”


 本機のディスプレイはタッチ操作対応の8.8型IPS液晶で、パネル解像度は2560×1600ピクセル(アスペクト比16:10)となる。縦方向の情報量が多いのは、ゲーミング用途“以外”での利便性を重視した結果なのだろう。


 ゲーミングモデルということもあり、リフレッシュレートは最大144Hzと高速だ。60Hz超の表示もスムーズに行える。屋外でのプレイも想定して、最大輝度も500ニトと高めで、Corning製の強化ガラス「Gorilla Glass 5」で耐傷性も高めている。


 このディスプレイは色再現性も高く、「DCI-P3」の色域を97%カバーしている。より正確な色味で映像を楽しみたい人にもピッタリ……なのだが、パネルが光沢(グレア)仕上げなのは評価が分かれそうだ。筆者個人としては、映り込みの少ない非光沢(ノングレア)にしてほしかったのだが、ここは別途用意した画面保護フィルムを使えばどうにかできるだろう。


●着脱できるコントローラーは“正義”


 冒頭で触れた通り、本機のゲームコントローラーは着脱式となっている。


 本体には充電ポートを兼ねたポゴピンが設置されており、ここにコントローラーを接続すると「USB接続」のデバイスとして認識される。プリインストールされている「Legion Space」を通してコントローラーのファームウェアを更新する場合は、必ずコントローラーを接続した状態で行う必要がある。


 コントローラーの背面下方にあるつまみを本体側に押しながら、コントローラーを下方に引っ張ると、コントローラーを取り外せる。外した後、スティックの周囲にあるランプが緑色に光ればワイヤレスコントローラーとして使える状態となるのだが、オフの(ランプが消灯した)状態になってしまった場合は、左スティックの「Legion Lボタン(Oロゴアイコンのあるボタン)」と右スティックの「Legion Rボタン(スライドのアイコンがあるボタン)」をそれぞれ7秒押しっぱなしにすることで電源が入る(電源を切りたい場合も同じ操作で可能)。


 ゲームコントローラーのボタン配列は、Xbox 360以降のXboxコントローラーに準拠している。Xboxコントローラーに準拠するゲームパッドに対応するタイトルなら、特にカスタマイズすることなくゲームを楽しめるだろう。


 本コントローラーは複数の入力方式に対応している。標準ではXboxに準拠した「X-Input(XInput)モード」だが、Legion Lボタンを押しながらRBボタンを押すと「D-Input(DirectInput)モード」と「デュアルD-Inputモード(※2)」を切り替え可能だ。ゲームパッドに対応しているはずなのにコントローラーがうまく動かない場合は、モード切り替えを試してみよう。


(※2)左右それぞれのコントローラーを別個のDirect Input準拠コントローラーとして使うモード(ワイヤレス時のみ利用可能)


 さらに、右コントローラーの底面にある「FPSモード」のスイッチをオンにすると、左スティックはBluetoothキーボード、右スティックはBluetoothマウスとして動作する。その名の通り、このモードはFPSゲームをプレイしやすくするために用意されているのだが、普段使いで右コントローラーだけをマウスとして使ったり、ゲーム以外のアプリでキーマクロを仕組んで使ったりするのも“オツ”だったりする。


 なお。FPSモードを含め、ゲームコントローラーのボタンアサインはLegion Spaceアプリからカスタマイズできる。同アプリではコントローラーの挙動などを細かく設定できるので、自分好みの設定を突き詰めるのもいいだろう。


 次のページでは、本機のパフォーマンスを簡単にチェックする。


●主要なベンチマークテストアプリを“最弱”状態で回してみる


 Legion Goの特徴を一通りチェックしたところで、ここからは主要なベンチマークテストアプリを使って実力をチェックしていく。


 なお、通常であれば一般的なWindowsノートPCで標準となる「バランス」か、パフォーマンスを重視した「最適なパフォーマンス」でテストを行うところだが、今回は思うところがあって電源設定をあえて「トップクラスの電力効率」とした( 動作モードが違うテストは、別の記事で深掘りする予定だ)。


CINEBENCH R23


 3Dレンダリングを通してCPUの演算パフォーマンスをチェックする「CINEBENCH R23」では、標準設定(※3)でマルチコアとシングルコアの性能をチェックした。結果は以下の通りだ。


・マルチコア:5956ポイント


・シングルコア:1129ポイント


 消費電力が一番低い設定でも、シングルコアのスコアが1000ポイントを超えるのは良い時代になったものだと思う。バランスや最適なパフォーマンスと比べると明らかに低いとはいえ、マルチコアスコアも下手なローエンドPCよりも優秀だ。


PCMark 10


 次に、PCの総合ベンチマークテストアプリ「PCMark 10」を実行してみよう。スコアは以下の通りとなる。


・総合スコア:5469ポイント


・Essentials:8787ポイント


・Productivity:7719ポイント


・Digital Content Creation:6546ポイント


 CPUコアに加えて、RDNA 3アーキテクチャのGPUもよく仕事をしているようで、こちらも省エネ設定の割にはスコアが良い。動画編集のテストを含む「Digital Content Creation」で6500ポイントを超えたことには、良い意味で驚いた。よりCPUを“ぶん回す”設定にしたら、一体どうなってしまうのだろうか……?


3DMark


 続けて、3Dグラフィックスのベンチマークテストアプリ「3DMark」を試してみる。総合スコアは以下の通りだ。


・DirectX 11ベース


・Fire Strike(フルHD):5733ポイント


・Fire Strike Extreme(WQHD):1343ポイント


・Fire Strike Ultra(4K):744ポイント


DirectX 12ベース


・Time Spy(WQHD):2415ポイント


・Time Spy Extreme:597ポイント


・Port Royal(レイトレーシング):1108ポイント


 GPUコアの優秀さは、ここでも現れている。一番省電力な設定で動かしている割にはスコアが高い。数年前のノートPCを下手に“全力で”動かすよりも、わざと“最弱”状態にしたLegion Go(Ryzen Z1 Extreme)の方が強いのは、なかなかに良いものを見せてもらっている気分である。


 ただし後述するが、これで実際のゲームも“快適に”動かせるかというと、別問題だったりする。


FF14ベンチマーク/FF15ベンチマーク


 実際のゲームベースのベンチマークテストを実行してみよう。


 まず、中程度の負荷となる「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(スクウェア・エニックス)」で、フルHD(1920×1080ピクセル)のフルスクリーン表示で「標準品質(ノートPC)」「高品質(ノートPC)」「最高品質」のスコアを計測した。結果は以下の通りだ。


・標準品質(ノートPC):6186(やや快適)


・高品質(ノートPC):5198(普通)


・最高品質:4256ポイント(普通)


 消費電力を制限するという“足かせ”がありながらも、ノートPC向けの標準品質なら、サクサクと動いた。最高品質でも、描画の致命的な引っかかりはほとんどなく、普通評価となった。この分なら、HD解像度ならこの電力設定でも設定を引き上げられるかもしれない。


 では、高負荷のゲームも、この最弱設定で乗り切れるのだろうか。「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」を試してみよう。フルHD解像度のフルスクリーンで「軽量品質」「標準品質」「高品質」の3パターンでスコアを測った結果は以下の通りだ。


・軽量品質:2087(重い)


・標準品質:1723(動作困難)


・高品質:1334(動作困難)


 いずれのテストも完走はできたものの、スコアはご覧の通り厳しい。1つランクが上となる「重い」評価だった軽量品質だが、それでもテスト中に致命的な描画の引っかかりと、BGMの途切れが発生していた。HD解像度の軽量品質なら何とかなるかもしれないが、それ以上の解像度や画質設定でのプレイは厳しい。


 FF14/FF15ベンチマークをの結果を見ると、最弱設定のLegion Goあっても、グラフィックス負荷が軽いゲームならHD解像度で結構プレイできそうではある。しかし、高品質なグラフィックスをバリバリ使うようなゲームは、遊ぶこと自体にムリがある。


 “本気”を出すとこの状況は一変する……のだが、そこにも一定の条件があったりする。その辺は、別記事で解説できればと思う。


バッテリー持ちは良いけれど……


 この電源設定のまま、PCMark 10のバッテリーライフテストを「Gaming」シナリオで実行するとどうなるだろうか。このシナリオでは、3DMarkにも収録されている「Fire Strike」のテストの一部(グラフィックステスト1)を繰り返し実行することでゲーミングPCにおけるバッテリー駆動時間を計測できる。


 画面輝度を50%とした状態でテストしたところ、残量96%から3%(強制休止状態)になるまで2時間21分となった。「PCベースのゲーム機」と考えれば意外と持っているように見えるのだが、フレームレートを見てみると、高くても15fps程度しか出ていなかった。先述した3DMark(AC電源駆動時)では、同じテストの平均フレームレートが30.97fpsだったことを考えると、AC駆動とバッテリー駆動でも“最弱”の程度に差が出てきそうである。


●思ったよりも強い“最弱”だが、もう少し検証が必要


 ハードウェア的に見どころのたくさんあるLegion Goを、あえて“最弱”の状態にしてテストをしてみたところ、思ったよりも高いパフォーマンスを発揮できた。数年前のノートPCを全力で回すよりもパワフルそうであることは、素直にすごい。


 しかし、さすがにこの状態では、最近のハイエンドゲームを楽しむのは厳しい。その上、バッテリーベンチマークの様子から、AC電源時とバッテリー駆動時でも力の具合が変わりそうだということも分かった。


 後日、電源モード別にどのくらいパフォーマンスが変わるのか、もう少し詳しく見ていきたい。


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