「競合アイドルと共演NG」「無理やりホテルに」 芸能・メディア業界の性暴力と圧力、実態調査で浮き彫りに

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2024年02月14日 16:11  弁護士ドットコム

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旧ジャニーズ事務所の"性加害"など、芸能界のハラスメントや圧力、忖度が大きく注目を集める中、一般社団法人「社会調査支援機構チキラボ」は2月14日、芸能やメディアで活動する人を対象とした実態調査の結果を公表した。


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調査結果によると、「干すなどの圧力をかけられたことがある」あるいは「見たことがある」と回答した人は、それぞれ5割近くにのぼった。



「セクハラや性暴力の被害を受けたことがあるか」という質問に対しては「ある」と回答した人は5割を超えるなど、特に被害が多かった。



また、「アイドルグループを擁する大会社が他の男性グループを共演させるならば出演しないと脅迫していた」「当時所属していた芸能事務所の社長から性的関係を結ばないならば売り込まないと言われた」といった声が寄せられ、業界の異様な実態が浮き彫りになった。



●業界の構造や風土の改善を求める声が高まっている

チキラボ代表の荻上チキさんはこの日の記者会見で次のように述べた。



「ジャニーズ事務所以外にも多くの団体や個人に関するハラスメントがこれまで継続的に存在しています。



また、悪質的なハラスメントや性暴力が存在しながらも、相談につながらず、対処できていない実態が多く存在していました。



大手事務所から他事務所、また事務所からメディア、あるいはメディアから事業者など、幅広い圧力の事例というものが存在しています」



荻上さんは、そのうえで、業界の構造や風土の改善、ガイドラインの策定を求める声が強くなっていると指摘した。



⚫️出演への圧力をかけられたことがある人は5割弱

調査は2023年11月7日から2024年1月19日まで、芸能や報道、メディア分野の仕事に関わる人を対象に実施して、分析可能な回答は275人から得られた。



まず、「出演・取引の禁止(いわゆる「干す」)などの「圧力」をかけられたことがある」かどうかを質問したところ、「ある」と回答した人は123人(48.2%)だった。そうした行為を「目撃したことがある」人も、119名(46.7%)となった。



実態として、次のような自由回答が寄せられた。



・10年以上前に3人組の男性グループのうち脱退した1人を編集で写さないようにするように指示された。(40代男性・メディア関係者) ・性交渉を全力で断った時に、事務所に所属したいなら応じろ。出来ないなら芸能界にいられないようにしてやると言われた。(50代女性・出演者)・マネージャーの機嫌を損ねテレビドラマ関係の仕事を一切振られなくなった。(40代男性・出演者)ト



また、「出演・取引禁止の圧力をかけた経験がある」と回答した人は18人(7.1%)で、こんな声が寄せられた。



・40年前ぐらいからつい最近まで、ある事務所のタレントに競合する他社の男性アイドルグループを共演NGなどの方法で番組に出さないよう圧力をかけていた。(60代男性・事務所関係者)



⚫️セクハラや性暴力が横行する現場

荻上さんによると、「セクハラや性暴力の被害を受けたことがある」という質問に対して、特に多くの回答が寄せられたという。



「ある」と回答した人は131人(51.4%)で5割を超えていた。目撃した人は116人(45.5%)、事例を聞いたことがある人にいたっては、197人(77.3%)にのぼった。



寄せられた回答の中には、身体を触る、性的な言葉をかける、キスをされるといった事例が多く、中にはより深刻な被害も散見された。



・今から10年くらい前、仕事をもらってる人から「性的関係を結ばなければ仕事はやらない」と言われ、無理やりホテルに連れ込まれた。それからも事あるごとに身体を触られ、触らされ、性的なことをされ、させられ、卑猥な言葉を浴びせられ、毎日が地獄だった。それでも仕事は好きで、でもその人がいると気持ち悪くて、仕事に支障が出るほど心が病んでしまい、この春仕事を廃業した。(40代女性)・監督が女優をホテルに誘う。監督が女優に、バーのトイレでフェラしろと言い、やらないと罵倒され頭を何度も叩かれる。これはいずれも「●●※個人名」の話。実際の被害者から聞いた。(50代男性)・2010年代後半から現在にかけ、いわゆる地下アイドルをめぐり、プロデューサーやイベンター・社長と寝る行為が横行していることを、元メンバーといった当事者の証言として幾度となく断続的に聞いた。(30代男性・メディア関係者)・2019年頃、15歳の子が夜のバーのライブに母親と聴きに来てくれた時に年配男性が隣に座って触ったとのこと。店にも報告したが不況で場末で経営難の中の太客で黙認スルーされた。(40代女性・出演者)



⚫️メディア現場にも政治家や芸能事務所から「圧力」

中立性が求められるメディア業界でも「不都合な内容についての報道規制の要求などの『圧力』をかけられたことがある」と回答した人は、100人(39.2%)だった。



また、「目撃したことがある」人は106人(41.6%)、「事例を聞いたことがある」人は154人(60.4%)にのぼる。具体的には次のような事例が寄せられた。



・2004年の「●●※事務所名」性加害の最高裁認定で、同僚が芸能系の部局もあるのであまり書けないと話していた。(40代男性・メディア関係者)・2023年。 「●●※事務所名」問題について報道ニュースでは扱うがその他の番組では喋るなという お達しがあった。(30代男性・メディア関係者)・ニュース番組に出演していて、内容が気にくわなかったのか、知事になる前の「●●※個人名」氏からスタッフに電話がかかり、番組中で釈明させろと強要、翌日生電話のコメントが放送された。(60代男性)・数年前、 「●●※事務所名」所属のタレントを使ったイベント取材で、紙面は写真掲載可だが、ネット上の記事は写真不可と主催者〜申し⼊れ。(50代女性・メディア関係者)・報道番組を担当していた頃、第二次安倍政権時代。ある政権を批判するニュースについて扱わないでほしいという主旨のメールがプロデューサーからスタッフ全員に送られた。など(30代男性・メディア関係者)



⚫️メディアによる検証に「甘い」

また、「最近の芸能界や報道業界における問題提起や検証報道について」と、「芸能・報道分野で活動・仕事 をする上で、不当な慣習だと思っていることや、今後改善されてほしいこと」に対し、意見や感想を求めたところ、次のような回答があった。



「最近の芸能界や報道業界における問題提起や検証報道について」は、検証が「甘い」という指摘が目立った。



・「●●※事務所名」だけでなく、他の組織においても事例はあるはずで、問題提起が広がり、改善が進むと良い。(40代男性・メディア関係者)・テレビ各局による自前の検証報道だけでは不十分。第三者が⼊った形で調査を行い、旧来の慣行を改める具体的な方策をメディア横断的に打ち出し実施すべきだと考える。(50代男性・メディア関係者)・芸能エンタメ番組と報道番組とが同じ放送局に存在する時点で無理があると、改めて感じた。検証番組は横並び感が強かったが、それでも当事者から見ると、営業や編成の強い局、報道が強い局、などの濃淡はハッキリと見えた。(40代女性・出演者)・とことんまで検証してほしい。有名女性アイドルグループも性接待を強要されていると聞くので、国としてしっかりしたガイドラインを作るまで追及してほしい(50代男性・出演者)



⚫️構造改善や法遵守求める声

「芸能・報道分野で活動・仕事をする上で、不当な慣習だと思っていることや、今後改善されてほしいこと」については、次のような声が寄せられた。



・「夜討ち朝駆け」「記者クラブ偏重」「若手女性記者を警察幹部や政権幹部の担当にして接待状態で情報をもらう手法」(50代女性・メディア関係者)・芸能事務所が力を持つ構造が良くない。あと、報道機関が映画やテレビなどのエンターテイメント業界に出資するケースが多く、報道機関としての独立性を保てていない。エンタメ業界に対して、批判したり、ジャーナリズムとして切り込むという立場ではなく、宣伝マシーンと化している。(30代男性・その他)・労働基準法など微塵も無い世界。なんとかしてほしい。(60代男性・イベント関係者)・特にバラエティの現場では差別が横行している。会議などでもセクハラや人種差別的な発言をする人はまだまだ多い。報道番組ではディレクターやキャスターの意見を上層部が勝手な忖度で制限することが多い。スポーツ番組でもアスリートをタレント扱いしすぎていて、取材対象者の意向とは離れても、きれいな物語ばかり作らされる。(30代男性・メディア関係者)・タレントは意見を言うこと自体よろしくないという風潮。セクハラパワハラがあたりまえだった昭和的価値観。人間をモノとして取り扱う芸能分野での人権感覚の異常さ。声を上げる側が特殊だという現状。「枕営業」という言葉がいまだに使われゴシップ扱いされる現実。などなど、まだたくさんあると思います。すべて改善されてほしいです。(30代女性・出演者)


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