「気持ちはわかるけど……少しでも物を減らさないと。業者に処分してもらうのもお金がかかるし」そう夫に言われ、私は仕方なく折れました。そして後日、夫は「遺品整理する」と親戚たちに声をかけたのでした。時間になると待ってましたとばかりに、大勢の親戚がわらわら義実家に入ってきました。みんなわれ先にと、価値がありそうなものに目をつけています。めぼしいものを見つけては……。
「これ私の!」「これもいいな」と大盛り上がりです。
「え……まずはお悔やみとか言うもんじゃないの?」分かってはいても、目の前で繰り広げられる遺品争奪戦に少々いたたまれない気持ちになります。お義母さんには申し訳ないけれど……。ここにいる親戚にとって遺品整理は「ほしいものを無料で得られるチャンス」でしかないのかもしれません。やがて親戚たちはそれぞれの車に大量の遺品を積み込んで去っていきました。
これで良かったのかは分かりません。ただ遺品の量はかなり減ったし、一気に片付くメリットも確かにありました。その後わずかに残ったものは業者に処分を頼み、義実家の片づけは終わりました。
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私は親戚一同の争奪戦がはじまる前に、スカーフをそっと1枚だけいただいておきました。これはお義母さんが晩年よく首に巻いていたものです。私にとってはこれがいちばんしっくりくる「形見分け」のかたち。優しかったお義母さんをしのびながら、今でもたまに使わせてもらっています。
原案・ママスタコミュニティ 脚本・rollingdell 作画・金のヒヨコ 編集・井伊テレ子