ZTEの最上位スマホ「nubia Z60 Ultra」を試す Snapdragon 8 Gen 3搭載で9万円台〜の実力は?

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2024年02月19日 10:21  ITmedia Mobile

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フルフラットのディスプレイと本体形状もあって角張ったボディーが印象的だ。本体スピーカーはステレオ構成となっており、高音質での再生が可能だ

 躍進を続けるXiaomiやOPPO、制裁を受けてもなお高い評価を得続けるHuaweiなど、中国メーカーのカメラ性能特化のスマートフォンの進化は目覚ましいものがある。


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 そんな中、コストパフォーマンスを重視し、魅力的な端末を安価に提供するメーカーがZTEだ。近年はnubiaブランドを前面に押し出しており、日本でもゲーミングスマートフォンの「REDMAGIC」を展開している。


 今回は通常のスマートフォンの最上位モデル「nubia Z60 Ultra」を手にする機会を得たので、レビューしたい。なお、本機種は技適を取得していないため、総務省の特例制度を利用している。特例制度では、技適のない海外の端末に対し、所定の届け出を行うとWi-FiやBluetoothの通信が可能になる。


●アンダーディスプレイカメラと35mm画角のメインカメラが特徴


 nubia Z60 Ultraはカメラ性能重視のスマートフォンだ。主なスペックを見ていこう。


・プロセッサ……Snapdragon 8 Gen 3


・メモリ……8GB/12GB/16GB


・ストレージ……256GB/512GB


・ディスプレイ……6.8型 フルHD+


・アウトカメラ……標準:5000万画素 F1.59超広角:5000万画素 F1.8望遠:6400万画素 F3.3


・インカメラ……1600万画素 UDC


・バッテリー……6000mAh、80W充電


 画面サイズは6.8型と大型の部類といえる。AMOLEDパネルを搭載しており、画面解像度はフルHD+だ。120Hzのリフレッシュレート、2160HzのPWM調光に対応しており、ちらつきを抑えて目に優しいディスプレイとしている。


 インカメラはUDC(アンダーディスプレイカメラ)としており、ノッチやパンチホールといった「邪魔物」のない仕上がりだ。最新世代のUDCを採用したことで、カメラ周辺も400dpiクラスの画面解像度を備えており、ぱっと見その存在を視認するのが難しい。


 本体はカメラを意識したデザインで、望遠カメラは潜望鏡方式のユニット部が浮き出ている。今回のブラックは金属製のフレームを採用しており高級感を得られる。


 プロセッサはQualcommの最新モデル「Snapdragon 8 Gen 3」を採用。同社のAndroid端末向けプロセッサとしては最上位のもので、高い性能を発揮する。もちろん、基本性能だけにとどまらず、ISP性能やAI性能が向上したことで、カメラ性能の向上にも大きく寄与している。


 搭載メモリは8GB、12GBまたは16GBと必要に応じて選べる。冷却性能も向上しており、最新プロセッサとの組み合わせもあって、長時間のゲームも問題なく遊ぶことができた。


 ストレージもUFS4.0規格の高速なものが採用されている。これは省電力ながら高速の伝送が可能になっており、仮想メモリなどを利用してもパフォーマンスの低下を抑えられているという。


 nubia Z60 Ultraを使ってみると、最新ハイエンド機のためブラウジング、SNSや動画視聴といった基本的な動作にストレスは感じない。例えばゲームでも「原神」のような高負荷なコンテンツを1時間ほど続けてプレイしても極端に「熱い」と感じることは少なかった。


 独自の機能として本体側面にスライドキーを備える。初期設定ではカメラをストリートショットモードで起動できるが、設定からマナーモードなどに変更することができる。「iPhone 15 Pro」のアクションボタンほどの自由度はないが、ある程度カスタマイズは可能だ。この他にIP68の防水・防塵(じん)性能も備えており、昨今の中国メーカーのハイエンドスマホらしいトレンドもしっかり押さえている。


 バッテリー持ちについては、6000mAhのバッテリーを採用することで、他社製品よりも電池持ちはよかった。これに加えて、最大80Wの高速充電にも対応しているが、ワイヤレス充電には非対応だ。中国ではXiaomiやOPPOなどが充電速度をアピールする製品を展開しているため、「充電速度の競争」が起こっている。もちろん、急速充電に対応した充電器も付属する。


 OSについては独自UIの「MyOS 14」を採用する。HuaweiやXiaomiが近年アピールする「複数デバイスとのコネクティビティ」を重視するものではなく、端末側の利用ログから各種最適化を行ってユーザー体験を向上させる思想が感じられる。


●ZTEもカメラフォンを展開 35mm画角のメインカメラもさらに進化


 ZTEのnubia Zシリーズは近年「カメラ性能」を重視する商品を展開している。他社のフラグシップとハードウェア構成的に近いものとしつつ、価格を抑えた商品が多い。その中でも、ZTEは換算で35mm画角のメインカメラにこだわっている。一般的なスマートフォンが24mm前後とすることが多い中、この機種ではややズームした感覚で利用することになる。


 同社は一般的なスマートフォンは「広角より」だとし、35mm画角のカメラはこれらに比べてゆがみを抑えられるとした。この画角は人物撮影などに有効としている。確かにスマートフォンのカメラ画角は一般的なカメラの感覚で使用すると広角に当たり、俗に「標準」と呼ばれる画角ではない。他社との差別化という意味も含めて理にかなっている構成だ。


 35mmのメインカメラにはソニー製のIMX800というイメージセンサーを採用。F1.59と明るく1G6P(ガラス1枚、プラスチック6枚)構成の7枚のレンズが採用されている。超広角カメラは35mm換算で18mmの5000万画素F1.8と超広角カメラとしては明るい。望遠カメラは換算で85mmの6400万画素と昨今の最上位モデルとも遜色のない仕上がりだ。


 nubia Z60 Ultraでの作例は以下のようになる。この機種ではデフォルトのウオーターマークに画角が表示されるのでそちらを参考にしてほしい。


 換算35mm(1.5倍)の画角がデフォルトなのでゆがみが少ない点は優位だ。デジタルズームも比較的きれいに処理を行うため、50mmなどの画角でも画質が荒れたりする場面は少ない印象だ。一方で2倍のプリセットは備えないので、利用にはある程度の慣れが必要だ。


 レンズがF1.59と明るいこともあり、背景はかなり大きくボケる。これもあって、スマートフォンとしてはピントがかなりシビアな印象だ。一般に利用する点ではやや癖が強く、欲を言えば可変絞りが欲しいところだ。


 5000万画素の超広角カメラもきれいに撮影できる。前作よりもセンサーサイズの大型化、高画素化されたことでデジタルズーム時でも画質劣化が少なくなった。明るいレンズと光学式手ブレ補正のおかげで夜景もきれいに撮影できる。また、一般的なスマートフォンに多い換算24mmはこちらのカメラを用いて撮影することになるが、初回起動時に35mmではなく24mmの設定にすることも可能だ。一方で画角は18mm相当で他社製品と比較すると狭い。


 望遠カメラは換算85mmで6400万画素のイメージセンサーを採用する。ペリスコープ方式の望遠レンズを採用し、フラグシップに相応する高いズーム性能を備える。一方でテレマクロ撮影はできないため、ひと世代前の構成だ。


 この他に「ストリートショット」というスライドスイッチから起動してサクサクと撮影できるモード、星空モード、マニュアルモードといった多彩な撮影モードを備える。一方でカメラのレンズ切り替え時に引っ掛かるような挙動になることがあり、快適とはいえなかった。今後のアップデートに期待したい。


●安くてもしっかり使えるハイエンドスマホ 日本での正規展開にも期待


 nubia Z60 Ultraはクセこそあるが、高いカメラ性能、UDC(アンダーディスプレイカメラ)採用したディスプレイ、板のような角ばったデザインでフラグシップスマートフォンの中でも存在感を示している。特にUDCと35mm画角のメインカメラはZTE以外のメーカーではあまり見られず、同社のスマートフォンを選ぶ上で特徴的な存在だ。


 何よりも売りは、グローバル向けで599ドル(約8万8000円)からの価格設定だ。他社の10万円以上で販売される機種とハードウェア構成的に大きな差もなく、コストパフォーマンスの高さが魅力だ。ハードウェア構成的に近いGalaxy S24 Ultraが1199ドル(約17万6000円)からの価格設定を踏まえると、nubia Z60 Ultraの安さが際立つ。


 実は、このスマートフォンに関しては日本向けに一部販売代理店を通じて定価での取り扱いがある。価格は最小構成のメモリ8GB、ストレージが256GBで税込み9万9800円としており、確かに税込み価格としては納得だ。


 このように、Snapdragon 8 Gen 3を採用するスマートフォンとしてはかなり安価な設定だ。先行予約特典で5000円値引きのクーポンを配布するなど、REDMAGICシリーズ並みにアピールしている。


 日本向けの販売代理店に確認したところ、今回は日本のユーザーから各種フィードバックを得ることを目的としたテストマーケティングであり、現時点ではメーカー側で技適を取得していない。そのため、総務省の特例申請を用いて実験目的等で利用するマニアやインフルエンサー向けの販売としている。


 今回のテストマーケティングの販売実績や利用者のフィードバック次第では、日本向けに技適を取得しての正規展開も視野に入れているそうだ。端末価格高騰が続く中、コストパフォーマンスを重視したハイエンドスマホの選択肢が増えることは喜ばしい。


 一方で、nubia Z60 Ultraの惜しい点として、全体的に作り込みが甘いと感じる部分も少なくない。カメラの動作レスポンスがあまりよくなかったり、若干のチューニング不足を感じたりする場面もあった。今回のグローバル版では日本語も利用できるが、一部日本語化の甘い部分も見受けられた。販売代理店によると、このような部分はソフトウェアアップデートで改善するとのことだ。


 nubiaを展開するZTEとしては、REDMAGICシリーズ同様にオンライン販売を中心としたオープンマーケットでの日本展開を模索しているようだ。日本では知名度の関係でまだ数があまり出ないこと、同社が売りのコスパを生かせる販売方法なので相性もいい。


 日本では値引き規制の関係で、いわゆる「一括1円」のような売り方がなくなったことで、製品価格に敏感な利用者が増えたようにも感じる。環境由来であまり販売されなかった「コストパフォーマンスの高いハイエンドスマートフォン」に注目が集まることも納得できる。これはオープンマーケットのXiaomi 13T Proがヒットしていることからも、今後各社が狙いを定めるセグメントになりそうだ。


 そのような環境だからこそ、コストパフォーマンス重視のZTEが再びハイエンドスマートフォンを日本向けに投入してくることも考えられる。nubia Z60 Ultraが正規発売されると、REDMAGICを除けば2020年発売の「AXON 10 Pro 5G」以来4年ぶりのフラグシップなだけに、安価で高性能な機種を求める層からの期待値は高い。日本市場への展開にも注目したい。


●著者プロフィール


佐藤颯


 生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。


 スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。


・X:https://twitter.com/Hayaponlog


・Webサイト:https://www.hayaponlog.site/


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