「“遊びのキャリア”で生きていく」定年後も労働が求められる日本で模索したい“会社員以外”の選択肢

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2024年02月20日 21:51  All About

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人生100年時代といわれるようになり、60代で企業を定年退職した後の「働き方」について考える必要性も高まっている。今回は定年退職後のキャリアのひとつの選択肢として「個人事業主」の働き方について解説していく。
少子高齢化社会において、もしかすると日本は世界で最も長く働かなければいけない国のひとつになるのかもしれない。

2000年に厚生年金の支給が60歳から65歳に引き上げられ、国の「継続雇用制度」により企業は高齢者が定年後も働き続けられる環境整備を進めている。2021年4月施行の高年齢者雇用安定法によって企業は70歳までの就業機会を求められることになった。

定年まで働いていた企業にその後も継続的に雇用されやすくなったことで「雇用の安定」は実現されそうだが、定年後のキャリアが「今まで働いていた会社に継続雇用」という一本道だけというのも寂しい。

せっかく定年まで働いたのだから、より自分らしい働き方やキャリアを模索したいのが定年を迎えた中高年世代の本音だろう。

今回は定年後のキャリアとして「個人事業主」として働く選択肢について取り上げたい。長く会社員として働いてきた人からすると「個人事業主」と聞くと新しい事業を1人で始めなければならない、どこか不安定な働き方のように感じるかもしれない。

もちろんやりたい仕事や挑戦したい事業があれば定年退職をきっかけにチャレンジするのもありだが、今回は「今まで培ってきた業務経験」と「所属してきた会社」を生かして個人事業主としてのキャリアを安定的にスタートさせる方法を3つのステップで紹介する。

(1)定年まで働いていた会社と業務委託契約を結んで個人事業主として働く

もし定年まで所属していた会社にそのまま「継続雇用」で働き続ける場合、業務委託として働くという選択肢がある。

通常の継続雇用・再雇用の場合は、雇用期限のある契約社員として、フルタイムかパートタイムで働くことが多い。もちろん定年前の雇用条件と比べると給与面などは劣るかもしれないが、慣れた職場でそのまま雇用の安定を得られるというメリットがある。

一方で業務委託契約は社内の特定の業務に特化して外部の人材に委託する契約で会社とは雇用契約ではないため主従関係はない。雇用主の指示に従って働く労働者とは違い、業務委託はある程度自己裁量でその業務を進めていくことができる。

その業務さえ遂行できれば、1日何時間出社しなければいけないという縛りもなく、労働時間なども自分で決めることができる。業務の専門性によっては高い報酬も得ることができる。

定年前と同様にフルタイムで忙しく働くよりも定年後は趣味などプライベートも充実させたい人にとっては、日々の働き方を自由に決められる業務委託の方が適しているのだ。

大手広告代理店の電通では2020年に同社を早期退職した元社員との間で業務委託契約を結び、最長で10年間一定額の報酬を支払う個人事業主制度を作った。電通を退職後に個人事業主として電通の仕事を業務委託で受けるというものだ。

筆者の知人もこの制度を使って個人事業主として独立したが、電通社員時代よりも家族との時間を大切にしながら働けているようだ。

退職後にいきなり個人事業主として新しい事業で稼いでいくというのは簡単なことではないが、信頼関係が築けている元の所属企業と業務委託契約を結ぶ形であれば堅実なスタートを切ることができる。

(2)他の企業とも業務委託契約を結び、同時に複数の企業から仕事を得る

会社員の場合は1つの組織に所属し基本的にはその組織の仕事のみに従事することになるが、業務委託契約では受ける仕事は1社に絞る必要はない。同じ業務を複数の企業から受けることも可能だ。

例えば人事の経験が長く、所属していた企業と社員教育に関する業務委託を受けることになったとする。その実務能力や経験を他社からも必要とされた場合は、その会社とも同様に人事の分野で業務委託契約を結び仕事を受けることができる。

当然1社だけの仕事よりも、時間と労力に余裕があれば複数社から仕事を得た方が高い報酬が得られる。複数社から声がかかるほどの専門性があれば実務を担うよりも「人事コンサルタント」としてアドバイザー契約にすることもできる。

会社員時代は自社のみに生かしてきた経験や実務能力を、より多くの会社に生かせることはやりがいの面でも大きい。せっかく定年まで働き、多くの知見を蓄積してきたのであれば、それらを生かして複数の企業と仕事をしてみる働き方も次のステップとして可能である。

(3)本業とは異なる業務も組み合わせて複業家を目指す

定年退職後のキャリアの武器は、定年まで最も専門性を高めてきた経験と知識のある分野である。もしそこを退職後に業務委託契約などで本業として成り立たせることができていれば、それ以外の分野にも挑戦する余裕ができる。

例えば、長く培った自身の経験や知識を書籍やSNSなどで発信したり、研修講師として教育・人材育成の分野に進出して生かしたりといったように。会社員時代では経験することができなかった業務に挑戦してみてもいい。

また仕事での経験や知識だけにこだわることなく、大好きな趣味を仕事にしてみることにチャレンジしてもいい。例えば会社員時代に釣りが趣味で、毎週末船釣りに出ていた経験があれば、退職を機に週末は「船釣りガイド」として報酬をもらって釣りを教えるということも可能だ。

会社と雇用関係がある場合は副業が禁止される場合も多いが、個人事業主の場合は「複業家」として事業がいくつあってもいいのだ。

ここで大切なことは「本業がある」という点である。いきなり趣味を仕事にして生計を立てるのはハードルが高いが、ある程度本業で安定した報酬を得られているからこそ、いい意味で「遊びのキャリア」を築くことができるのだ。

人生100年時代だからこそ定年退職後「会社に再雇用されて働く」というキャリアのみに囚われる必要はない。

「業務委託契約」という、会社と個人が対等で、ある程度自己裁量で働き方や報酬を決められる制度を活用し、今まで培った経験と知識を生かしながら、やりたいことを仕事にする道があるということを知ってほしい。
(文:小寺 良二(ライフキャリアガイド))

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