トイプードルの尻尾、はさみで切ったブリーダーら書類送検 「自分が飼育していたペットでも、虐待すれば犯罪に」【弁護士が解説】

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2024年02月22日 15:10  まいどなニュース

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自分が飼育しているペットであっても、虐待すれば犯罪になりえます ※画像はイメージで、事件とは関係ありません(Tracy King/stock.adobe.com)

高知市のブリーダーら2人が、ペットとして見栄え良く販売するために、十分な専門知識がないままトイプードルの尻尾をはさみで切ったなどとして、動物愛護法違反の疑いで書類送検されました。報道によると、2人は、100匹余りのトイプードルを飼育していたそうですが、2023年6月、獣医師の資格がないにも関わらず、飼育していた犬4匹の尻尾などを切り、不必要な苦痛を与えて傷つけた疑いがもたれています。

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自分が飼育しているペットであっても、虐待すれば犯罪になりえます。この機会に、動物を殺傷・虐待する行為がどのような犯罪に該当するのかについて、お話したいと思います。

かつては刑法で処罰されていた動物傷害事件…動物愛護法で処罰範囲が拡大

かつてこの種の犯罪は、刑法261条の器物損壊罪(動物傷害罪)で処罰されていました。「他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する」という条文です。「動物」とはっきりとは書かれていませんが、「傷害」とは「身体を傷つける」という意味ですから、動物も当然対象に含まれていると解釈されていました。

近年、動物愛護精神の高まりにより、動物愛護法の罰則規定が重罰化されてきています。動物愛護法44条1項は「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する」と定めていますので、刑法の動物傷害罪よりも重罪です。そのため、最近の動物傷害事件は、動物愛護法違反で処罰されることが通常になっています。本件も、動物愛護法違反で書類送検されたとの報道です。

また、動物愛護法44条2項は、動物を直接傷つける殺傷行為以外に、食べ物や飲み物を与えない、酷使するなどの虐待的な取り扱いも処罰の対象と定めています。刑法の動物傷害罪は文字通り動物を「傷害」しなければ適用されませんので、動物愛護法は、処罰範囲も拡大しているのです。

もうひとつ、刑法と動物愛護法では大きな違いがあります。

もう一度刑法261条の規定を見てください。刑法は「他人の物」と定めています。つまり、他人の飼育している動物を傷害した場合にのみ、罰則が適用されることになっています。自分のペットを傷つけても、刑法違反にはならないわけです。ついでに言いますと、刑法の動物傷害罪は親告罪といって、被害者から告訴がなければ公訴を提起することができないこととされています(刑法264条)。要するに、被害者が警察などに訴え出なければ、犯罪として扱われず、捜査機関も動かない、ということです。

一方、動物愛護法にはそのような限定はありません。つまり自分のペットであっても、みだりに傷つければ犯罪となり、誰かからの告訴がなくても警察は独自の判断で捜査に着手するのです。

通常、自分の所有物を壊しても犯罪にはなりません。動物に限って(犬猫などの「愛護動物」という限定はありますが)、自分の所有物であっても傷つければ犯罪になるというのは、法律が愛護動物を特別扱いしているということにほかなりません。この点を見れば、日本法も、動物を単なる物扱いとはしていないと言えると思います。

それだけではありません。実は、自分の飼っているペットが病気になったが動物病院での診察を受けさせなかった場合でも、犯罪に該当する可能性があります。動物愛護法44条2項をよく見ると、「愛護動物に対し…自己の飼養し、又は保管する愛護動物であって疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと…を行った者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。」と定められています。

健康保険制度がないペットの医療費は高額になりがちです。ペット保険に加入していない場合、ペットの急な病気や負傷で思わぬ高額の出費を強いられる可能性があります。そのような場合に、お金がないからと動物病院で適切な治療を受けさせず、看病や世話もせずに放置していた場合は、「動物虐待」として犯罪に該当する可能性があるというわけです。

動物愛護法7条4項は、動物が命を終えるまで適切に飼養する義務、いわゆる終生飼養義務を定めていますが、上記のような点から見ても、ペットを飼う場合は、金銭的な余裕を確保し、計画を立てて飼育を開始する必要があると言えるのです。

◆石井 一旭(いしい・かずあき)京都市内に事務所を構えるあさひ法律事務所代表弁護士。近畿一円においてペットに関する法律相談を受け付けている。京都大学法学部卒業・京都大学法科大学院修了。「動物の法と政策研究会」「ペット法学会」会員。

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