藤浪晋太郎はメッツにとって「低コストのギャンブル」 新天地で完全開花なるか

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2024年02月26日 07:41  webスポルティーバ

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【ボールは一級品。メッツで完全開花なるか】

 藤浪晋太郎がニューヨークへ――。ボルチモア・オリオールズからFAになった藤浪は今オフ、大都会に本拠地に置くメッツとの1年契約を発表した。年俸は335万ドル(約5億300万円)で、最大85万ドル(約1億2800万円)の出来高もつくという。

 昨季、大谷翔平をも上回るメジャー日本投手最速の102.6マイル(約165.1キロ)を計測し、100マイル(約161キロ)以上の球を年間計136球も投げた豪腕がニューヨークにどんな形で"ハマる"かが楽しみだ。昨季75勝87敗でナ・リーグ東地区4位に沈んだメッツで、エースの千賀滉大とともに藤浪がどんな貢献をするかが注目される。

 もっとも、『The Athletic』のメッツ番記者、ウィル・サモン氏によると、「チーム内での藤浪への期待感はそこまで大きいわけではない」という。

「昨季の防御率が7.18だったことを考えれば、藤浪のメッツでの立場が確固たるものではないとしても当然だ。ブルペンの席が保証されているわけではなく、キャンプ中にスポットを争うことになる。開幕までにフロントを感心させられなかった場合、マイナーからのスタートもあり得る」

 背景には、メジャー1年目の藤浪はアップダウンが極めて激しかった、という事実があるだろう。

 昨季、藤浪はオークランド・アスレチックスでは5勝8敗、防御率8.57という厳しい成績だったが、そのポテンシャルを評価したオリオールズに7月下旬に移籍。以降はパフォーマンスが向上し、30試合で2勝0敗2セーブ、防御率4.85という成績で、リーグ最多の101勝で地区優勝したチームに貢献した。それでも、シーズン終盤にまた不調に陥ったため、ポストシーズンのロースターには登録されなかった。

 この不安定さが玉にキズだが、素質は誰もが認めるものがある。ベースボールファンなら、藤浪が投げているボールがMLBでも一級品であることは一目瞭然だろう。

 前述のとり、球速は最高級であり、スイーパーもブーメランのように大きく曲がる。これだけの素材が完全開花すれば......という期待感は常にある。これまでメジャーで多くの好投手を見てきたサモン記者もそれは認めており、同時に希有なポテンシャルを解き放つため、藤浪がニューヨークのマウンドで取り組まなければいけないことも指摘している。

「メッツが藤浪を獲得した理由は、端的に言ってふたつある。まずは速球をはじめ、持ち球の威力がすばらしいこと。そして、オリオールズに在籍していた中の一定期間、メジャーでも力が発揮できると示したことだ。春季キャンプ中にブルペンの役割を勝ち取り、信頼できるリリーフ投手としてシーズンを戦い抜くのがベストシナリオになる。そのために、藤浪はまずは制球を向上させ、四球を減らさなければいけない」

 ルーキーシーズンは適応が難しいとはいえ、昨季の79イニングで45四球、8暴投はやはり多すぎた。その点こそが、ミスの許されないポストシーズンでのロースター落ちにつながったのだろう。逆に言えば、この制球難を解消する術を藤浪が見つけられれば、メジャーでの成功が見えてくる。

【成功のカギはブルペンにあり】

 MLB最大の金満オーナー、スティーブ・コーエン氏に率いられるメッツだが、今オフは大きな補強をほとんどしなかった。全力で獲得を目指した山本由伸をロサンゼルス・ドジャースに奪われると、その後に契約したのは比較的安価な単年契約の選手ばかり。先発ローテーションでは千賀にこそエースの働きが期待できるものの、後に続く投手たちはやや心許ない。

 打線もインパクト不足は否めず、今季のメッツは上位候補には挙げられていない。そんなチームに大きな上積みがあるとすれば、藤浪も名を連ねる救援投手陣。昨春のWBCで大ケガを負った守護神エドウィン・ディアスが復帰してくるブルペンには、サモン記者も「伸びしろがある」と見ている。

「メッツのブルペンはチームの強みになっても不思議はない。ディアスの復帰はもちろん大きく、さらに、チーム内にはふたりの左腕を含む優れたベテラン投手がいる。それぞれタイプが異なる投手がいるのもいい。先発投手陣は常に長いイニングを投げられるメンバーとは言えないだけに、今季のメッツが上位進出を目論むならブルペンの頑張りが必須になる」

 いわゆる"低コストのギャンブル"と見られている藤浪にとっても、前評判が高いとは言えないメッツは、決して"やりにくい"環境ではないはずだ。特にメッツのデビッド・スターンズ編成部長は、ミルウォーキー・ブルワーズのGM時代からブルペン補強のうまさで知られた人物。そんなエグゼクティブのお眼鏡にかなった藤浪が課題を克服し、低評価のチームを押し上げれば、ニューヨークの注目選手として浮上することも考えられる。

 新しい機会を求めて人材が集まってくることから、今も昔も"セカンドチャンスの街"と呼ばれるニューヨーク。この街で藤浪はどんなストーリーを紡いでいくのか。勝負の渡米2年目、注目度の高いステージに移った豪腕の真価が問われるシーズンが、もうすぐ始まろうとしている。

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