西武ライオンズのパフォーマンスチーム「bluelegends」オーディションの舞台裏 170名参加の「女性たちの熱き戦い」その運命は?

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2024年02月26日 11:01  webスポルティーバ

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プロ野球チア・オーディション密着取材
埼玉西武ライオンズ・bluelegends 編

 プロ野球をダンスやMCで盛り上げる各球団のチアリーダー。見事なパフォーマンスを繰り広げる彼女たちが、球場に立つまでには並々ならぬ努力と試練がある。今回、埼玉西武ライオンズ・公式パフォーマンスチーム「bluelegends(ブルーレジェンズ)」2024シーズンメンバー選考のオーディションに密着取材。輝かしい舞台を目指す"女性たちの戦い"を追った。

* * *

【会場は張り詰めた雰囲気】

「おはようございます!」

 昨年11月中旬、都内某所のスタジオに女性たちが続々と訪れる。その元気なあいさつとは裏腹に、彼女たちは少し緊張の面持ちだ。

 それもそのはず。彼女たちは、ライオンズのパフォーマンスチーム「bluelegends」のオーディションの二次審査に臨もうとしているのだ。

「少し緊張しているんですけど、今まで感じてきたことを伝えられるように頑張りたいと思います」

「憧れの場所なので、自分の精一杯できる演技、踊りをして合格したいなと思います」

 彼女たちの言葉からは、この日にかける意気込みが伝わってきた。

 bluelegendsは、プロ野球のシーズン中にジャズやヒップホップなどさまざまなジャンルのダンスパフォーマンスで球場を盛り上げている。なかでもフラッグを使ったパフォーマンスが名物だ。

 今回のオーディションには約170人が応募し、ダンス動画と書類による一次審査を経たメンバーが二次審査に挑んだ。二次審査は2日間に分けて行なわれ、そのうち1日に密着取材を行なった。

【技術よりも重視されること】

「ダンススキルが大事ですが、どれだけ審査員にアピールしてくれるか。人前に立った時にお客さんに伝えられるか、実践を考えて、ステージに立った時をイメージできるかを見たいです。とくにアピール力は重視していますね」

 こう話すのは、審査員を務めるbluelegendsディレクターのYukiさん。

 Yukiさん自身、2011シーズンに創設されたbluelegendsの1期メンバーだった。2015シーズンに卒業したあとはディレクターのアシスタントを経て、現在は振り付けや、ライオンズ公式のダンススクール「ライオンズ ダンスアカデミー」などにも携わっている。

「受験する方は、ひとり当たり数分間しか時間が与えられないので、見逃しちゃいけない。全員をちゃんと見てあげなきゃいけないっていう緊張感がありますね。審査員を務めるようになって最初の頃は受験者以上に緊張していたんですけど、今はワクワクが勝っています」

 審査する側も責任重大だ。とはいえ、一次審査のダンス動画を見て、Yukiさんは受験者のパフォーマンスを直接見られるのを心待ちにしていたという。

【5回目のオーディション挑戦者も】

 受付を終えると、着替えをすませて、各自でウォーミングアップを始める。受験者同士の会話はなく、ピリッとした空気が張り詰める。

 真っ先にストレッチをしていた受験者に後で話を聞いた。彼女は、ふだんは塾講師をしているという。

「勉強も一緒ですけど、とにかく練習でしっかりできていなければ、本番でできるわけがないとずっと伝えています。私自身も、それに恥じぬよう、しっかり基礎固めをしてから挑ませていただきました」

 生徒への教えを自ら実践してオーディションに臨んでいたというわけだ。聞けば、以前に他球団でパフォーマーを務めた経験もあるという。

「生徒たちに『夢を諦めるな』と言っているんですけど、私はどうなんだろうって自分自身について考えた時に、心残りがあるのに気づきました。年齢的にも、そろそろラストチャンスだなと思って、オーディションを受けました」

 オーディションに臨む彼女たちの事情もそれぞれなのだ。

 実際に、今回の応募者は、彼女のように他球団のパフォーマーのOGや、一世を風靡した高校ダンス部の卒業生、bluelegendsのオーディションへの挑戦が5回目の応募者など、さまざまなバックグラウンドを持っていた。

【一人ひとりが得意技を披露】

 二次審査は、Yukiさんから説明があったあとにスタートした。

 まずは課題ダンスから。(G)I-DLEの曲『Queencard』に合わせたダンスの動画が事前に送られており、受験者はその振り付けを覚え、みんなの前で披露する。

「ある程度は仕上げてくると思うので、ダンスだけを見ちゃうと悩んじゃう」とYukiさんが言うように、難しい振り付けを自分のものに仕上げてきていた。それだけに、審査員の眼差しも真剣そのものだった。

 続いて、フリースタイルダンス。規定の曲(Zedd『I Want You To Know』)で自由にパフォーマンスを行なった。フラッグやポンポンなどの手具を用いて、それぞれが得意なジャンルのダンスを披露した。

 課題ダンスもフリースタイルダンスも、それぞれの持ちタイムは約1分。数人ずつがパフォーマンスを行なっていく。

「見たことのない手具もあったので、楽しくて、自分の順番が来るのが早かったです」

「オーディションに来ている人たちもわかせられるようなベストなパフォーマンスを見せられるように全力で踊りました」

「みんながけっこう盛り上げてくれて、温かい雰囲気のなかでできてよかったです」

 もちろん全員が全員、持ち味を発揮できたわけではなかったと思うが、それぞれが後悔のないように全力を尽くそうと努めていた。

 最後に見事なアクロバットを見せていた女性は「小さい時からアクロバットやダンスなどいろいろやってきたので、球団に入れたらいいなと思ってやってみました」と自己アピールに手ごたえを得た様子だった。

【喜び、涙、心残り...運命の合格発表】

 実技審査のあとは、審査員が別室で話し合いが行なわれた。

「去年よりもレベルが高かった」「悩ましいね」

 審査員も頭を悩ませていた様子だ。

 約20分の協議のあと、最終の面接審査に進む受験者が発表された。

 残念ながら、番号を呼ばれなかった受験者は不合格となり、ここで解散となった。

 香川県から受けに来た女性は、翌日は仕事なので夜行バスで帰るという。

「東京に出てきたくてチアを探していたんですけど、ブルーレジェンズの動画を見た時にとても輝いていて、私もここに入りたいと思いました。でも、無理でした。自分の準備不足もあったと思いますし、ここで諦めずに、次のチャンスに向けてまた頑張りたいと思います」

 今回は不合格となったが、翌年以降の再チャレンジを誓っていた。

 一方、「緊張しすぎて記憶がない。納得のいくように踊れなかったのが心残り」と話していた女性は、高倍率を勝ち抜き実技審査を合格。「本当に自分の番号か、もう一回確認しにいこうか、と思いました」と半信半疑ながらも素直に喜んでいた。

 面接審査も同日に行なわれた。受験者は、最後の自己アピール。オーディションに応募した動機や思いを審査員に語った。

 こうして3時間に及ぶオーディションが終了した。

 その約1カ月後、現役メンバー10人に加え、7人の新メンバーが発表された。

 2024シーズンは、17人のパフォーマーがベルーナドームでの試合を盛り上げる。試合以外にも地域のイベントなどにも参加し、活動の幅を広げている。

 ライオンズの選手の熱いプレーをあと押しする彼女たちのパフォーマンスにも注目だ。



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