「ハードに」ではなく「スマートに」仕事をしていきたい

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2024年02月27日 08:11  @IT

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インタビューに応じるアリシアさん

 国境を越えて活躍するエンジニアにお話を伺う「Go Global!」シリーズ。今回も前回に引き続きNTTデータ ニューソンでセキュリティ業務を担っているAlicia Lee(アリシア・リ)さんにお話を伺った。多くのプロジェクトに携わり、忙しくも充実した毎日を送るアリシアさんが気を付けていることとは。


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 聞き手は、アップルやディズニーなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広。


●大学時代の縁を通じてNTTデータ ニューソンを知る


阿部川 “Go”久広(以降、阿部川) 東海大学を卒業後、すぐにNTTデータ ニューソンで仕事を始めます。NTT データニューソンのどういった点に魅力を感じたのでしょうか。


Alicia Lee(アリシア・リ 以下、アリシアさん) 1つ目は「IT企業であること」。2つ目は「社員に対するサポートが充実していて、教育やトレーニングが手厚いこと」です。ITに関する知識がほとんどなかったとしても、毎日しっかり丁寧に教えてくれます。3つ目は、とても多くのプロジェクトが同時に動いているので、何かのプロジェクトが不得意であったとしても、他のプロジェクトでは得意なところを見つけられるかもしれない。「自分に合ったプロジェクトが見つかるまでマッチングしてくれること」が魅力的だと思いました。


阿部川 適材適所というわけですね。NTTデータ ニューソンを知ったのはエージェント(就職仲介代理人)を通じてでしょうか。


アリシアさん はい。実はそのエージェントがいた企業は、私のクライアントだったことがあるのです。私はマレーシアの学生連合(Malesia Students Association in Japan: MSAJ)に4年間所属して、大使館の業務サポートで就職フェアのイベントを担当していました。マレーシアの学生を欲しい有望な企業と、学生をマッチングするお手伝いです。NTTデータ ニューソンを紹介してくれたエージェンシーもそのフェアに参加した企業の一つでした。


阿部川 なるほど。NTTデータ ニューソンでの仕事は7年ほどになりますね。この7年間、どういった業務をしていましたか。


アリシアさん 入社して2年目に、財務関連の開発プロジェクトに関わったことを覚えています。そこでは、業界でのベストケースを調査したり、セキュリティインフラを構築したりしました。4年目にはサイバーセキュリティ関連のプロジェクトがありました。そこで、システム構築よりもセキュリティ分野がより会社に貢献できると考え、配置転換を申し出たのです。


阿部川 まさに適材適所ですね。さて、ちょっと違った角度からの質問ですが、アリシアさんは幾つかの言語を操れるわけですが、それで恩恵を受けたことはありますか。


アリシアさん はい、たくさんあります。現在関わっているテクノロジーの分野は、多くの情報が米国から来ますし、文献はほとんどが英語です。そのような情報に即座にアクセスできて、それを理解し社内に説明できるのは、私が英語の他に、中国語、日本語を知っているからだと思います。全体像の把握に役立ちますし、毎日の業務へ、より深いフィードバックができていると思います。


 その道の著名なエンジニアに「どうやって勉強するのがよいか」といった質問をすると「英語のドキュメントを読むこと」を挙げる方が多い気がします。仕事の幅を広げるためにも、技術を高めるためにも英語は欠かせないですね。私も勉強しないと……。


 また、複数の言語を操れることで、グローバルなプロジェクトに参加できる機会が格段に増えていると思います。米国関連のプロジェクトはもちろんですが、中国やイタリアなど、複数の言語が必要なプロジェクトにも参加できます。


阿部川 それは複数言語ができる人ならではの素晴らしいチャンスですね。毎日の業務では何の言語を使っていますか。


アリシアさん 主に日本語ですね。英語ではありません(笑)。(※編集注:本インタビューは英語で実施しています)


阿部川 外国籍の方と仕事をされる機会も多いと思いますが、同僚も外国籍の方が多いのでしょうか。


アリシアさん そうですね、中国、韓国……、以前はバングラデッシュやロシアのエンジニアもいました。


●いつかサイバーセキュリティのプロになりたい


阿部川 現在の業務内容を教えていただけますか。


アリシアさん 私の仕事は大きく3つの分野に分けられます。1つ目はソフトウェアの分析。顧客のシステムをモニタリングして、セキュリティに関して、どうすればより効率的なセキュリティの運用ができるかを分析して提言します。2つ目は、トラフィックの監視や調査をし、場合によっては犯罪や法律に照らして最適な対処方法を考えます。3つ目は、教育です。技術的なノウハウを国内外のメンバーに共有します。具体的な脅威について調査してどのように対応するかなどの情報も共有します。


阿部川 毎日、大変忙しいのではないですか。


アリシアさん もちろん忙しいのですが、必要以上に忙しくならないように意識しています。PCを使って自動化できることは、極力自動化するようにいつも考えています。


 こういう考え方いいですよね。自分じゃなくてもできることはシステムにやらせておきたい。だからこそ逆に、手動でポチポチする業務をしていると「自分にもっと力があれば自動化できるのに……」とふがいない気持ちになってしまいます(笑)。


阿部川 この先、どういった仕事をしていきたいと思っていますか。例えば10年後はこういうふうになっていたい、といった感じで。


アリシアさん 今のところ、これといった具体的なアイデアはありません。ただ自分のキャリアをより広げる、あるいは深める方向で仕事をしたいと思っています。サイバーセキュリティに関するプロフェッショナルになりたいですね。


阿部川 ハードに仕事をしないといけませんね。


アリシアさん ハードに仕事をするのは嫌いなので、スマートに頑張りたいですね。実は怠け者なので(笑)。


●「なぜ頑張るのか」を忘れないように


阿部川 日本のエンジニアに対して何かメッセージはありますか。


アリシアさん まだ私も若輩ではありますが、一緒に仕事をしている同僚を見ていつも思うことがあります。皆、よく仕事をしますし、「頑張る」と言うのですが、その頑張りの先にある“最終的な成果物”は何なのかを時々忘れているように見えるのです。


別の言葉で言えば「何をどこまでなら頑張るか」です。仕事を始める前に、どこまで、何を頑張るのかを確認してから仕事を始めた方がいいと思います。「なぜ頑張るのか」が分からないままだと、目的と違う方向に仕事を進めたり、単に時間を無駄にしたり、なぜこんなに努力しないといけないのか分からなくなったりすると思います。


阿部川 「頑張る」ことは手段なのに、いつの間にか目的になってしまっている人が多い、ということですね。


編集鈴木 セキュリティはいろいろと新しい方法や技術を、悪い人たちが次々に考えてくる分野だと思うのですが、そのための勉強、新しい知識の収集はどのようにしているのですか。


アリシアさん 主に2つですね。1つは、例えば座談会やハンズオンなどの企業が公開している情報公開の場があるので、それを利用させていただくこと。もう1つは、YouTubeなどの公開情報を活用することです。


編集鈴木 最後にもう1つだけ! マレーシアのおいしいご飯を教えてください。これ(と写真を見せる)この前、ペナンに行った時の写真ですが。


アリシアさん (写真を見て)これは……ルンダンかな……、辛くて酸っぱい? であれば、ラクサですかね。


編集鈴木 他にどんなものがありますか。辛くても大丈夫です。


アリシアさん それならやはりルンダンがお薦めです。チキンや牛肉カレーに似ているのですが、スパイスがたくさん入っていることが大きな違いです。辛いだけではなくて、香りなどのスパイスの独特の特徴が感じられ、通常のカレーとは一味違います。パックが市販されているので、私もたまに自宅で作ります。


●Go’s thinking aloud インタビューを終えて


 「父のようなエンジニアになるため、全く言葉の通じない国に行って勉強する」と考える人がどれだけいるだろうか。もちろん中にはいるだろうが、それが“まれ”であることは、彼女を見ればよく分かる。


 英語、広東語、マレーシア語に日本語が加わる。それだけではない、コンピュータ言語もある。まさにこれが次世代のマルチリンガル。私は遠い昔に「C」や「C++」を使った設計をしていたが、もうとっくにさびついている。先日思い立って「Python」を学び始めた。初歩の初歩だが何か懐かしく、それに結構楽しい。そう思えるのは、楽しむこと(目的)が手段となっているからだろう。


 もちろん仕事は違う。「言語を学んで終わり」は、基本的にない。その先に目的の達成がある。


 当然苦しみもあるが、小さな達成の繰り返しが楽しみに変わる。何度もそれを体験すれば、習い性になり、仕事自体が好きになる。好きになりさえすれば、ほっといてもやり続けることができて、それでどんどん上達し、それがまた楽しい。このpositive loopに乗ればこっちのものだ。


阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)


アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD) 訪問教授 インタビュアー、作家、翻訳家


コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時から通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行う他、作家、翻訳家としても活躍中。


編集部から


「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOなど、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。取材はオンライン、英語もしくは日本語で行います。


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