「ウクライナ戦線、静かなる逼迫」八尋 伸のウクライナ最新ルポ

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2024年02月28日 09:01  週プレNEWS

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接近してくるロシア兵に向かって砲撃を加えるウクライナ兵

ロシアのウクライナ侵攻開始から丸2年がたつ。開戦直後にも首都キーウや東部戦線を取材した写真家・八尋 伸(やひろ・しん)が、前線で暮らす人々やウクライナ軍の窮状を伝える。

* * *

「発射!」と、兵士が砲撃の合図を叫んだ。と同時に、爆音と衝撃波が筆者の体を襲う。ウクライナ軍の砲兵が、接近してくるロシア兵に向かって砲撃を加えた。砲撃はロシア兵の近くに着弾、ロシア兵を負傷させた。

今、ウクライナ軍を苦しめているのはロシア軍の人海戦術による兵士の突撃だ。排除しても絶え間なく続く突撃は、ウクライナ軍の弾薬と兵士を消耗させることが狙いだと推測される。

ウクライナ軍第80独立空中強襲旅団司令官のアレクサンドルは、「今日だけで7回も攻撃があった。まるでネズミのように大量の兵士を突撃させてくる」と言う。ロシア軍は囚人を軍に勧誘して兵士にしている。

兵士とは名ばかりの突撃要員で、消耗品として扱われているのだ。前線にはロシア兵の死体の山が築かれているそうだ。


2022年2月24日にロシアのウクライナ侵攻が始まってから2年が過ぎた。正確には2014年に起こったマイダン革命によるウクライナの政治的空白を狙った、ロシアによるクリミア半島の併合から10年がたつ。ロシアのウクライナ侵略はこのときから始まっていた。

ウクライナ東部の前線の全長は約1000劼砲盖擇咫2月上旬の時点で国土の26%がロシア軍に占領されてしまっている。昨年6月から始まったウクライナ軍の反転攻勢はあまり成果が上がらず、現在は防戦に回りつつある。

反転攻勢の結果が芳しくなかった原因のひとつに、欧米からの武器の支援が遅れたことが挙げられている。兵士たちは皆一様に「武器の支援が必要だ」と訴える。特に砲弾不足は深刻で、前述の司令官アレクサンドルは、「1年前は4時間で200発の砲弾を消費できていたが、今は1日に15発ほどしか部隊に供給されていない」と語った。

ウクライナ軍の兵士不足も問題になっている。特に、最近陥落したアウディイウカでは明らかに兵力が足りないと指摘されていた。

ゼレンスキー大統領は昨年12月に軍から最大50万人の追加動員を求められたが、国民の間では不安が広がっている。開戦当初は多くの市民が軍に志願したが今はその機運は見込めず、しかも兵士は時間をかけて育成しなければ戦力にはならない。

昨年の激戦地バフムトから20劼曚廟召砲△襯船礇轡奸Ε筌襪任蓮⊇弦臀斬陲里曚箸鵑匹ロシア軍の砲撃により破壊され廃墟と化している。2022年には人口が1万2000人だった街には、今も600人ほどが避難せずに残っており、その中には小さな子供もいる。

彼らは集合住宅の地下室で避難生活を強いられている。街のインフラはすでに崩壊しているため、水や食料などは市民のボランティア活動による支援で賄われている。前線の街に残っているのは高齢の住人も多く、経済的な問題や病気のある場合が多い。

ロシアがウクライナに侵攻して国際秩序は崩壊に差しかかっている。ロシアが勝利してしまった場合はウクライナに親露政権を立てるなどして侵攻を正当化するだろう。それは武力による主権国家の侵略を許してしまうことになる。

隣国のポーランドをはじめ、ヨーロッパ諸国はロシアの脅威がヨーロッパ全域に及ぶことを懸念しており、アメリカのウクライナ支援が停滞している中、EUはウクライナへの8兆円規模の資金支援を決定した。

ロシアと隣り合う日本にとっても人ごとではなく、これまで以上に積極的に支援する動きが見られる。世界の命運はウクライナの兵士たちにかかっていると言っても過言ではない。

●写真・文/八尋 伸(やひろ・しん)
1979年生まれ、香川県出身。タイ騒乱、エジプト革命、ミャンマー民族紛争、シリア内戦、東日本大震災、福島原発事故、香港騒乱などアジア、中東の社会問題、紛争、災害などを取材、発表。2022年春にも2ヵ月近くにわたってウクライナ取材を行なう

写真・文/八尋 伸

【写真】八尋 伸が撮影した、前線で暮らす人々やウクライナ兵

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