限定公開( 6 )
肉弾戦を描かない、新時代のプリキュア「わんだふるぷりきゅあ!」。
【画像】戦闘シーンは「追いかけっこで抱きしめる」のが基本スタイル
戦闘スタイルが「追いかけっこで、抱きしめる」になったことにより、ご家庭での「プリキュアごっこ」に革命が起こるかもしれません。
●「わんだふるぷりきゅあ!」スタート!
プリキュアシリーズ第21作目「わんだふるぷりきゅあ!」(以降わんぷり)が2024年2月4日にスタートしました。本作は「ペットの犬がプリキュアになる」という新機軸を打ち出しました。
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タイトルが平仮名表記の「ぷりきゅあ」になったのは、「一番幼いファン層である3歳くらいの子どもたちにも作品名を自分で読んで理解する楽しさを味わってもらいたい」(引用:『アニメディア』2024年3月号 P72)との理由からです。
主人公、キュアワンダフルは「飼い犬」です。本作では犬が人間の姿になって、さらにプリキュアに変身する、2段階変身スタイルをとっています。
この犬のプリキュア、てっきり人型になれば「ヒト的な思考」をするのかと思いきや、どちらかというとプリキュアの姿になっても「犬寄りの思考」なのが新鮮で面白いですよね。元気に走り回ったり、「待て」をしたりと、ある意味これまでに全くいないタイプのプリキュアとなっています。
●「肉弾戦」がない?
さて、「わんぷり」は第4話まで放送されましたが、驚くべきことに本作ではこれまでのプリキュア作品では必ず描かれた、いわばプリキュアのアイデンティティーの一つだと思われていた「肉弾戦」が全く描かれないのです。
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いわゆる「パンチ」や「キック」で戦うことは一切なく、基本的に敵(ガルガル)と「追いかけっこ」をして、つかまえて「抱きしめる」ことにより敵が浄化され、元のどうぶつの姿に戻る、というスタイルとなっています。
「肉弾戦の封印」自体は「キラキラ☆プリキュアアラモード」(2017年)でも行われていましたが、あちらではパンチやキックはないものの「クリームエネルギーで戦う」描写となっていて、「戦闘」自体はありました。
しかし、今作「わんぷり」では、「敵への攻撃」自体が描かれないのです。
敵の攻撃を避け、追いかけてつかまえて、最後は抱きしめる。それが本作の戦闘スタイルの基本となっています。
とはいえ、追いかけっこで「派手なアクション」も描かれますし、プリキュアが強いことも分かります。パンチやキックをしなくても「女の子だって暴れたい」を見せることができているのですよね。
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キュアワンダフルの決めゼリフ「いっしょに遊ぼ♪」、キュアフレンディの「あなたの声をきかせて」も戦いを全く連想させず平和的なものとなっています。
●「プリキュアごっこ」に革命が起こる?
そして戦闘シーンが「追いかけっこで敵を捕まえる」になったことにより「全国のご家庭でのプリキュアごっご」に大きな革命が起こることが予想されます。
自分も娘が小さかったころに経験がありますが、家庭でのプリキュアごっこにおける「娘の本気パンチ」は、父にはけっこう大きなダメージなのです。ちゃんと痛いのです。
しかし、今作のプリキュアごっこでは、敵役のお父さんお母さんが、娘や息子と「追いかけっこ」をして、さらに子どもに追い付かれたら最後は「子どもに抱きしめてもらえる」のです。それはなんと尊い光景なのでしょうか。
そう。本年度は、子どもと保護者、双方にメリットしかない平和で幸せな「プリキュアごっこ」が行われる(はず)です。
これはプリキュアの歴史において「一つの発明」なのではないのかと思うのです。
これまで一方的に倒される役だったお父さんお母さん、今年のプリキュアごっこは痛くないですし、最後は子どもにハグをしてもらえます!(多分)
保護者側からも積極的にプリキュアごっこをしたくなる、そんな作風なのです。
いまだに「プリキュアは暴力的なシーンがある」という認識でお子さまに視聴をさせない保護者もいる、という話も聞きます。また「戦闘シーン」自体が怖くて見られないお子さまもいる、という話もあります。本作ではそのあたりの問題も解消されるのかもしれません。
ただこの先、敵の姿や目的などがはっきりしてくると「戦いの描写」もでてくるのかもしれませんね。この先の戦いの描写がどんな感じになっていくのかも注目です。
●「肉弾戦」をなくした理由
戦闘描写を「追いかけっこで抱きしめる」ことにした理由を、「わんぷり」のプロデューサー、高橋麻樹(「高」ははしごだか)さんはアニメ誌のインタビューで、「どうぶつを傷つけてはいけない、という観点から(肉弾戦ではなく)チェイスアクション風にした」と語っています。
「わんぷり」は動物を助けるお話なので、追われている動物を傷つけてはいけないという観点から、チェイスアクション的な描写、つまり敵を追いかけて暴走を止めようとする描き方を意識しています。動物のみならず、泣いている赤ちゃんなども撫でたりハグをしたりすると落ち着きますよね。ガルガルした心を落ち着かせてあげるように、敵を攻撃するのではなく、抱きしめて浄化する、元に戻してあげるという描写を採用しています。Gakken『アニメディア』2024年3月号(P73)
「わんぷり」を見ている子どもたちが、リアル世界でもどうぶつに優しく接することができる様な描き方となっています。
また、「わんぷり」の制作に関してドッグトレーナーやトリマーさんにも事前に取材していること、スタッフのなかにも獣医師やドッグトレーナーの資格を持った人もいるなど、どうぶつの描写に関しても万全の体制のようです。
出てくるどうぶつの習性やしぐさの描き方も丁寧ですし、第3話では「犬にグミを食べさせてはいけない」ということもきちんと描かれました(人間の姿になってから食べていました)。
動物をここまでメインに立てて描くプリキュアは初めてではありますが、ドッグトレーナーさんやトリマーさんにも取材させていただきましたし、さらにスタッフの中にもドッグトレーナーや獣医の資格を持った方がいて、作品として各方面から素敵なご縁を頂戴しています。Gakken『アニメディア』2024年3月号(P73)
どうぶつ、特に飼い犬や飼い猫などを子ども向けの物語で扱うのは難しい部分もあるかと思いますが、そういった「どうぶつと子どもの関係性」に関しても信頼できる描写になっていくものと思われます。
●シリーズ構成は「オトナプリキュア」の成田良美さん
「ペットのワンちゃんが変身」「追いかけっこで抱きしめて浄化」など、ほのぼの路線で始まった「わんぷり」。しかし「わんぷり」がこのまま、ほのぼの路線だけで終わるとは思えないのですよね。
本作のシリーズ構成は成田良美さん。成田さんは「Yes!プリキュア5」(2007年)、「Yes! プリキュア 5 GoGo!」(2008年)、「ハピネスチャージプリキュア!」(2014年)、「キボウノチカラ〜オトナプリキュア'23〜」(2023年)のシリーズ構成を手掛け、人間関係のしがらみなど、比較的「ヒトの心の深淵」に踏み込んだ作風が得意な方だと自分は認識しています。
どうぶつを主軸とした一見ほのぼのとした作風の「わんだふるぷりきゅあ!」のシリーズ構成に、なぜ成田さんを起用したのか?
わんぷりの後半は、ほのぼの一辺倒ではいかない展開が待っているような気もしています。それも楽しみです。
●保護者が安心してプリキュアを見せられるように
本作では公式サイトに、シリーズ初となる「おうちのかたへ」と題した保護者向けのページが用意されました。
「わんぷり」がどんな作品で、どんな思いで作られ、どんな風に子どもたちに見てほしいのか、といった理念が記載され、保護者に向け提示されています。
「保護者が安心してプリキュアを子どもに見せ、一緒に楽しむことができる」そんな作品になっているのです。
プリキュア20周年の節目を終え、21年目の新しいプリキュア「わんぷり」は、キャッチフレーズの「みんななかよし!わんだふる〜♪」の通りに、家族で楽しめる「優しいプリキュア」になっていくのではないでしょうか。
この先、キュアニャミーとキュアリリアンの登場も楽しみです。あと、サポート男子の兎山悟くんとウサギの大福の行方にも注目ですね!
(C)ABC-A・東映アニメーション
●著者:kasumi プロフィール
プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。
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