空スペースを“磁石×ホッチキス”で有効活用する新発想! コクヨ「壁につけるマグネット」の開発秘話

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2024年03月01日 21:51  All About

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コクヨの「壁につけるマグネット」は、空いている壁を簡単にマグネットボードにしてしまうアイテムです。気軽に楽しく、世間的に言うところの「壁活」が楽しめるアイデアを、コクヨの開発担当スタッフに伺いました。
こんな風に、普通の石こうボードの壁面をマグネットを使って紙を貼ったりアクセサリーをかけたりできるようにする製品のシリーズが、「壁につけるマグネット」

限られた空間を生かすために、壁を活用するというのは、それこそ日曜大工のお父さんの棚作りが流行った昭和の昔から続く、ある意味、日本の住宅の知恵とも言える発想なのでしょう。そのくらい、収納場所は少なくても、空いた壁は結構あるということ。ここ数年、聞かれる「壁活」という言葉は、その発想をさらに広げたものと言えそうです。

今や、棚や突っ張り棒、ウォールフックといった、いわゆる「家具」的なものを空いた壁に設置するだけでなく、アクセサリーを飾ったり、絵はがきやチェキなどの紙モノを貼ったり、鍵やケーブルなどの小物を引っ掛けておいたりと、空いた空間である壁を収納から装飾まで、いろいろ使うということを、まとめた言葉として近年使われているのが「壁活」。

なので、その関連グッズも多岐にわたっています。

壁へのダメージは最小限に、壁をマグネットが使える空間にする

画像左は「壁につけるマグネット バー」495円(税込)。右は「壁につけるマグネット はじめてセットB」1980円(税込)。まず始めるなら、この2つを購入すると、バータイプのマグネットボードを2カ所に設置でき、丸タイプのマグネット4個とバータイプのマグネット1個を使えて、この製品ができることを一通り体験できる

今回紹介するコクヨの「壁につけるマグネット」も、そういう壁を活用するグッズのひとつですが、面白いのは、壁へのダメージを最小限にしながら、壁をマグネットが使える空間にしてしまおうというそのアイデアです。棚やフックを設置するのでもなく、画鋲などで留める飾りなどのアイテムでもなく、壁に新しい機能を追加するためのツール。

さらに文具メーカーのコクヨだけあって、その設置に使うのはホッチキス。今回、用途に合わせて多くの種類が発売されていますが、迷った場合は、とりあえず、「壁につけるマグネット はじめてセットB」1980円(税込)の購入をおすすめします。

これだけで、他に特別な道具などを用意することなく、自宅の壁にマグネットを付けることができるようになり、製品の特長もつかめると思います。

もちろん、ホッチキスで留める関係上、壁は日本の家屋で多く使われている石こうボード専用ですが、それでも、壁にマグネットで絵はがきなどを気軽に貼れるのは、装飾としてだけでなく、壁に実用的な機能を追加することにもなるのです。

リビングの壁にマグネットが使える生活を

まず、このように透明のシートをマグネットが使える空間にしたい場所にホッチキスで固定する。ホッチキスを打つ位置は印字されているので、それに合わせてバータイプの場合、8カ所にホッチキスの針を打ち込む

仕組みとしては、ホッチキスを使って透明な樹脂製のベースシートを壁に固定します。その上に粘着テープ付きのスチール板を貼り付けることで、マグネットを使える空間の出来上がり。丸形とバー型のマグネットを使って、さまざまに壁を活用できるというもの。
ホッチキスで固定したシートの上に、粘着剤付きのスチール板を貼り付ければ設置完了

「最近、キッチンなら冷蔵庫の扉とか、玄関のドアとか、そういうところにマグネットを使ったり、水周りでしたら吸盤を使った『浮かせる収納』的なものがたくさん出ていますよね。私たちも、そのようなトレンドにはずっと着目していました。

それに対して、リビングはマグネットをつけるところがないんですよね。だから、壁は結構デッドスペースになっています。そこを有効活用できないかというのが商品開発のスタートになりました」と、コクヨで「壁につけるマグネット」の開発を担当された河井重博さん。

工事を伴う棚などを設置するのではなく、マグネットが付けられる環境をリビングに提供したいという、大袈裟にならない感じが、結果的にさりげなく、しかし使い勝手の幅は広いユニークな製品になったということなのでしょう。

「リビングに子どもが描いた絵を貼りたいと思ったとき、画鋲で貼ると壁にも絵にも穴が空いてしまいます。

ずっと同じ絵を貼っておくならそれも良いのかも知れませんが、その時々で、貼っておきたいと思ったものをどんどん入れ替えたりしたい場合は、マグネットの手軽さが生きると思います。作品に穴も空きませんから、推しの写真なども気軽に貼れます」と河井さん。

ホッチキスの針を壁に刺すのにはちょっとしたコツが必要

4種類ある「壁につけるマグネット はじめてセット」には、このような専用ホッチキスが入っている。別売(495円)も

実際、部屋の壁を見回すと、ここにマグネットが貼れたらと思える箇所はいくつもありました。それこそ、仕事机の脇の壁にマグネットが付けられれば、そこに展示会のDMなどを貼っておけるし、リビングのカレンダー脇の壁なら、招待状や選挙の入場票などを貼り付けておきたい。

そう思って、筆者も使ってみましたが、このホッチキスを使って透明な樹脂製のベースシートを壁に固定する作業がうまくいきません。ホッチキスの針がなかなか壁に刺さらないのです。

「ホッチキスは普通に紙を綴じるときでも、押したら2段階になりますよね。最初にカチッとなって針が少し出て、そのあとさらに押し下げると針が折り畳まれて紙が綴じられますよね。今回の製品のホッチキスも、基本的には普通のホッチキスと同じ構造です。

なので、まず、壁に押し当てたあと、最初のカチッとなるところで一旦止めて、そのあとグッと押すと針がしっかり入っていきやすくなるんです」と、河井さんは設置のコツを教えてくれました。

確かに、この方法だとうまくいきました。むしろ、とてもスムーズに壁にホッチキスの針が刺さって気持ちいいくらいです。当初、壁紙の凹凸のせいでうまく刺さらないのかと思ったのですが、そういうことではありませんでした。そして、さすが文具メーカーだと思ったのは、このホッチキスのちょっとした仕掛けです。
このように、専用ホッチキスはアタッチメントを壁に押し当てると、針先が30度の角度で壁に打ち込まれるように作られている。また、アタッチメントの下部が滑り止めになっていて、打ち込む位置がズレにくい。アタッチメントを外せば、普通のホッチキスとして使用可能

「すでに市場にはホッチキスを使った壁活ツールはいろいろあるのですが、単に180度開いて直接壁に打ち込めるというだけでなく、針に30度の角度がついて打ち込まれるようにアタッチメントをつけました。

このアタッチメントにはあえて傾斜がついていて、針が垂直ではなく30度の角度で壁に打ち込まれるようになっています。そうすることで針が抜けにくくなるんです」と河井さん。

この傾斜の分、多少打ち込みにくくもなっているのですが、2段階押し+押し込む際にホッチキスに付けられているくぼみに指を掛けて、両手で押し込むようにすれば、スルリと打ち込めます。力はほとんど入れなくても刺さるのが面白いですね。

ただ、やはり慣れは必要なので、壁の下の方などの目立たないところで練習すると良いでしょう。使われている針は、ホッチキスでは最も一般的に使われている10号針なので、どこででも安価に入手できます。

耐荷重は50gだが、利用範囲はかなり広範囲にわたる

丸マグネット1個の耐荷重は約50g。少なそうだが、写真のようなアクセサリーやチャーム類は問題なくかけられる強度がある

「耐荷重は丸いタイプで50gにしています。50gというとかなり軽く感じるかもしれませんが、A4コピー用紙で5枚くらいは留められるんです。なので、絵はがきや写真を留めるには十分だと思います。

さらに、マグネットには溝がついていて、それは着脱のしやすさもあるのですが、この溝に紐などを掛けることもできるんです。なので、アクセサリーなどを掛けて壁を飾ってもらえたらと思っています」と河井さん。

耐荷重50gというのは、この「壁につけられるマグネット」シリーズで使われているマグネットを使った場合の話で、市販のもっと強力なマグネットを使えば、耐荷重は増えます。ただ、ホッチキスで壁に固定しているため、あまり強力なマグネットを使うと、マグネットを外すときに、ボードまで一緒に外れてしまうことがあります。

「あまりガッツリ家具的に使うというより、画鋲やピンで留めるものの代わりに使っていただく商品ですね」と河井さんも言います。
丸タイプだけでなく、バータイプにも上部に溝がついている。そのため、このように写真などを置くような使い方もできる

このマグネットに付いている溝が、実際に使うと、いろいろといい仕事をしてくれるのです。ネックレスやチャームを引っ掛けることもできるし、バータイプのマグネットなら、その溝に絵はがきなどを立て掛けてレールのような使い方もできます。

なので、このマグネットを玄関ドアや冷蔵庫の扉などに貼っておくのも便利なのです。マグネットというとどうしても貼る、留めるという使い方を想定するのですが、この溝のおかげで、掛ける、置くという使い方も可能になっているというのは、シンプルだけど、素晴らしいアイデアだと思うのです。

壁への負担を最小限にすることを重視した設計

丸形のマグネットを1個貼るためのベースも用意されている。ひとつの透明シートをホッチキスで4カ所留めて固定する

もちろん、ホッチキスで固定しているだけなので、設置した後で取り外しても、壁へのダメージはほとんどありません。ただ、一度外してしまうと、その補助板は透明シートとともに使えなくなるので、別売の板を購入する必要はあります。板だけでも販売されているので、そこは安心してください。

また、専用ホッチキスはアタッチメントを外せば普通のホッチキスとして利用可能です。ホッチキスはもう少し大きい方が使いやすいような気もしたのですが、河井さんによると、今回のコンセプトや仕様条件では、適切な大きさと判断したとのことでした。

「壁に粘着テープで直に貼るのではなく、透明シートをホッチキスで壁に固定して、その上に粘着テープでスチール板を貼るというのが特徴的な製品だと考えています。

直接貼ると、粘着剤を工夫していても、やっぱり壁に残ったり壁紙が破れたりする可能性があるので、それは避けたいと考えました。あと、壁紙の凹凸などにも影響を受けにくいと思います」と河井さん。
パッケージは、環境配慮の観点もあり、内部のしきりなども含めて紙製になっている。収納の仕方も見事なので捨てる前にちょっと見てほしい

基本的には空いている壁にマグネットが使えるようにするというだけのシンプルな製品なのですが、マグネットが貼り付けられるというだけで、その用途はとても幅広いものになります。

それこそ、ポストカードや絵、アクセサリーやチャームといった装飾的な用途から、推し活、メモボードといった日常生活支援的な用途、さらには、在宅ワーク時の資料やプリントを留めておくためのスペースなど、ビジネスからプライベートまで使えるのです。

開発にあたってのリサーチでも、ガッツリと重いものを付けたいという人は、しっかりした棚やフックを付けるからか、それほどいなかったのだそうです。

ただ、マグネットが弱いという声もあったそうで、そのあたりの調整は今後の商品展開に生かされるのかもしれません。

個人的には、どんどん貼り付けるものを変えていけるマグネットの気軽さが、この製品の身上ではないかと思っています。

納富 廉邦プロフィール

文房具やガジェット、革小物など小物系を中心に、さまざまな取材・執筆をこなす。『日経トレンディ』『夕刊フジ』『ITmedia NEWS』などで連載中。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方、選び方を伝える。All About 男のこだわりグッズガイド。
(文:納富 廉邦(ライター))
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