花粉症にはつらい季節がやって来た。鼻水が滝のように流れ出るかと思ったら、一切空気を通さないんじゃないかというほど詰まったり......。不快極まる症状を抑えるため、点鼻薬を持ち歩いているという人も多いだろう。
しかしあの点鼻薬って、カバンの中でキャップが外れてたり、コロッとどこかへ行っちゃってたりしない?
そんな悩みをカッコよく解決したユーザーが、X上で注目を浴びている。
パッと見それとわからない(画像はねξび@nevi34xさんの投稿より、以下同)
こちらは、デザインエンジニアの「ねξび」(@nevi34x)こと「ねび」さんが、2024年2月27日に投稿した写真。掌の中に納まっているのは点鼻薬......なのだが、普通の箱ではなく何やら緑色のフレームのようなものに収納されている。
投稿によると、こちらはねびさんが自作した「専用ホルダー」。点鼻薬の容器をかっこよく見せるために作ったものだ。
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たしかにこうしていると、点鼻薬というよりはもっと何か重要な薬品サンプルといった趣を感じないでもない。スタイリッシュなビジュアルに、X上ではこんな声が寄せられている。
「戦隊モノのアイテムみたいでかっこいい」
「バイオハザード?とかに出てくる、回復用アンプルみたい」
「目薬用のケースもお願いいたします」
Jタウンネット記者は29日、ねびさんに詳しい話を聞いた。
物を無くしやすい性分だったから
「鼻水の多い人生を送ってきました」
ねびさんから返ってきたのは、そんな1文から始まる回答だった。
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昔から鼻炎持ちで花粉症であるというねびさん。特に春は大変で、飲み薬や点鼻薬が手放せない。
しかし、同時に物を失くしやすい性分であることから、かばんに放り込んでは見失い、職場の机においては持ち帰り忘れ......と、使いたいときに手元になかったことも、往々にしてあるという。
ねびさんはその日も、点鼻薬を見失った。だから代わりに、最も安い点鼻薬を購入したという。
すると箱から出てきたのが、「専用ホルダー」の中に入っていた、あの点鼻薬。ボトルのフォルムにかっこよさを感じた。
「SF映画に出てくる仰々しい注射薬のように見えました。ゾンビに噛まれた仲間を救い、敵に囲まれ泣き叫ぶヒロインの前で、力無く横たわる主人公に無敵の力を与えるような。
これをもっと強調するように見せたら、かっこいいかもしれない」
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これが、着想の瞬間だった。
バックにつけることもできる
普段取り組んでいる仕事で得た気付きも、「専用ホルダー」作りに活かされた。
襲いくる「理不尽」に、道具の力で楽しく向き合う
ねびさんはデザインエンジニアとして、医療機器や車いすを開発している。病気や障害のために手足を動かすことに困難を抱える人々と接し、彼らにとって必要な道具を手掛けているのだ。
例えば、義手や義足。これらは「障害の象徴」のように見られがちだという。
しかし、それがカッコ良いものならば、使用者の性格すら前向きにしうる、とねびさんは日々感じている。
「そういった皆さんが携える困難と比べると花粉症というのはだいぶ軽いですが、ひとつの理不尽な困難と思います。ただ生きているだけで鼻や目から水が止められず、腫れた鼻腔は私の呼吸すら邪魔してくるのですから」(ねびさん)
――そんな理不尽に、道具の力で少しでも楽しく向き合えないだろうか。薬を使用していることで周囲に心配をかけるだけでなく、ポジティブな姿勢で見てもらえないだろうか。ありふれた薬で、無敵になれやしないか。
カッコいい「専用ホルダー」は、そんな考えに基づいて生み出されたそうだ。
花粉症という「理不尽」と楽しく向き合うために(画像は再掲)
自宅の3Dプリンターを使いアイデアを実現してみた結果は「大成功」。ホルダーに格納した途端、点鼻薬は点鼻薬らしからぬ存在感を放ち始め、見失わなくなった。カバンにつないでおけるというのも、紛失予防に大きな効果を発揮しているそう。そして「道具の力で少しでも楽しく理不尽に向き合う」という目的も、達成されているようだ。
「単純にボトルを当てがって押し込むと固定され、反対から押すと取り出せる簡単操作が作れたのですが、この操作の感触がまた気持ちよく、まるで拳銃に弾をこめるよう。
無意味に出したり入れたりしています。客観的にはただのハナタレのくせに」(ねびさん)
ところで、専用ホルダーの開発以降、ねびさんは様々な種類の点鼻薬を買い集めているという。
というのも、投稿を見たユーザーから、「自分の使っている点鼻薬でも作れないか」といったコメントが寄せられたからだ。自分で使う予定はないが、採寸用に購入し、ホルダーを設計中とのこと。
「点鼻薬にまつわる皆さんの困難に少しでも前向きな光がさせるのかもしれないと、こちらも力が漲るようです」
と、ねびさん。メルカリやBOOTHで販売したところ、早速購入者も現れたそうだ。気になる人は覗いてみては?
2024年3月4日18時33分編集部追記;記事初出時、本文に誤字があったため修正しました。