大人気の「猫ミーム」動画、米津玄師さんやグッズまで登場…元ネタの著作権侵害にはあたらないの?

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2024年03月05日 11:40  弁護士ドットコム

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近ごろSNS上で大流行している「猫ミーム」をご存知だろうか。職場や学校など、日常生活で起きた面白いエピソードを再現する映像コンテンツで、既存の動画から切り取った猫などの動物や有名人を登場人物に置き換えて、ポップな音楽とともにストーリーをつくるものだ。


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中には、人気アーティストの米津玄師さんが登場する動画まである。自分の顔を出したり、オリジナルのキャラクターを創作せず面白い動画をつくれるためか、その人気は上昇しており、ついにはグッズも販売されるようになった。



ゲームセンターのクレーンゲームのぬいぐるみになったり、通販サイトSHEIN(シーイン)で「バナナ猫」や「ハッピー猫」と呼ばれる猫たちのキーホルダーが販売されるなど、注目を集めている。



一方で、猫ミーム動画の元ネタとなっている動物や人の動画は、それぞれオリジナルが存在する。猫ミーム動画の制作者や、グッズを商品化して販売した場合、著作権侵害にあたる可能性はないのだろうか。著作権にくわしい唐津真美弁護士に聞いた。



●元ネタは「著作権の保護」を受けている

――「猫ミーム」の元ネタは、著作権法で保護されていますか。



猫ミーム動画の中には、さまざまなコンテンツが含まれています。動画の一部を切り取ったもの、動画から取り出した静止画を利用しているもの、楽曲の一部などです。



一般的に動画は、著作権法上で『映画の効果に類似する視覚的又は聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含む』と定義されている『映画の著作物』にあたり、保護されています。



――元ネタの動画が、短い時間に編集された「ショート動画」であっても、著作権法で保護されるのでしょうか。



たとえば、ユーモラスな猫の動きをスマホで簡単に撮影しただけの短いショート動画だったとしても、だからといって創作性がないとは言えません。



スマホで撮影する場合でも、撮影場所や被写体を選択し、撮影のタイミングを選び、撮影する位置を工夫したり、ズーム機能を活用するなどして、「面白さ」がより伝わるようにしていることが多いと思います。



そのように工夫して撮影された動画は、著作権法で保護される「著作物」と考えておいたほうが良いでしょう。







●元ネタの著作権者の承諾なければ「翻案権侵害」に

――勝手に元動画を使って猫ミーム動画をつくると、どのような著作権を侵害することになりますか。



猫ミーム動画は、元動画の一部(猫の部分のみ)を切り取って、リピートする、スロー再生にする、複数の動画を一度に画面に表示するなど、さまざまな加工をして使われています。



著作権者は、その著作物を変形して利用する権利(翻案権)を独占的に持っているので、元動画の著作権者の承諾を得ずにこのような加工を加えて利用すると、翻案権の侵害になります。



また、猫ミーム動画をインターネット上にアップロードした時点で、公衆送信権の侵害にもなります。



個人で楽しむ目的で猫ミーム動画を作って家族間で共有する場合や、学校の課題として作るような場合には、著作権法の例外規定(権利制限規定)によって著作権侵害にはあたらないのですが、その動画をネットで公開する行為は著作権侵害になります。



●猫ミーム動画は「引用」になる?

――著作権法では「引用」が認められていますが、猫ミーム動画は「引用」にはあたらないのでしょうか。



他人の著作物の一部を自分の著作物の中で利用する方法として「引用」があります。一定の条件を満たした「引用」は著作権侵害にはなりませんが、猫ミーム動画における使い方は、適法な「引用」にあたりません。



――誰かが使った猫ミーム素材を自分の動画に利用する場合はどうでしょうか。TikTokなどで「猫ミーム素材」と検索すると、簡単に加工して動画に利用できるような素材が出てきます。



このような素材をアップしている人たちは、他人がその素材を利用して猫ミーム動画を作成することを承諾しているといえます。



しかし、元の著作物(元動画)に基づいて二次的な著作物(猫ミーム素材)を作った場合、元動画の著作権者は、二次的著作物についても著作権者と同じように権利主張をすることができるのです。



したがって、誰かが元動画を加工して猫ミーム素材を作り、猫ミーム動画に自由に使ってください、と公開しているとしても、元動画の著作権者から著作権侵害だといわれる可能性は残ることになります。



――猫ミーム動画をつくるのは法的に考えると難しいですね…。



猫ミーム動画は見ていて楽しいので、こんなことは言いづらいのですが、猫ミーム動画を作成する際に著作権侵害を回避するために、最も確実な方法は、元動画の著作権者から許可を得ることです。



元動画の著作権者が「この動画を加工して自由に使っても構いません」という意志表示をしているのであれば、承諾を得ているのと同様に考えることができるでしょう。 猫ミーム動画はネットユーザーの間では広く知られていて、今では大量にアップされているのに、私が知っている範囲では著作権侵害が問題になった例は聞かないので、元動画の著作権者の中には、自分の動画の一部が猫ミーム動画に利用され拡散していることを知っていて、それを了承している人も結構いるのかもしれませんね。



●米津さんの動画を切り抜いて猫ミーム動画をつくったら?

――実は、猫だけでなく、最近は米津さんが猫ミーム動画に登場しています。たとえば、米津さんがYouTubeで公開している公式PVから、米津さんの画像や楽曲を切り抜いて新たに猫ミーム動画を制作し、YouTubeで公開した場合、法的な問題はないのでしょうか。





米津さんがYouTubeで公式に公開しているPVから米津さんの画像や楽曲を切り抜いて利用する場合、そこには(1)米津さんの画像、(2)楽曲、(3)原盤(音源)という3つの要素が含まれています。



(1)米津さんの画像については、まず、プロが作成したPVが著作物であることは明白ですから、元のPVの著作権侵害が成立します。また、米津さんの画像を使う人は、それによってより多くの人が見てくれることを期待しているのだと思いますが、このような著名人の肖像が持つ顧客吸引力を利用する使い方は、パブリシティ権侵害が問題になります。



(2)「音楽の著作権」は、楽曲を制作した人が持つ権利で、作詞、作曲、編曲によって発生します。これは、「歌詞」や「曲」に関する権利で、JASRACのような著作権管理団体が管理している場合が多いのです。



一方、(3)の原盤権は、録音された「音」に関する権利で、著作権とは別に成立します。原盤権は、レコード製作者(原盤制作の費用負担をした者)が有し、そのレコード(音源)から生まれる利益を得ることができます。



――YouTubeやTikTokはJASRACと包括契約をしているので、「歌ってみた動画」などの利用は許されていますよね。



たしかに、YouTubeやTikTokは、JASRACと包括契約を結んでいて、利用者自身は許諾を得なくても(使用料を支払わなくても)良いのですが、原盤についてはこのような包括的な契約は存在していないので、その曲の「原盤権」を持っているレコード会社などから許諾を受ける必要があります。



JASRACと包括契約を結んでいないX(旧ツイッター)に投稿する場合には、本来は、著作権についてJASRACを通した権利処理手続きが必要です。「◯秒以内の音楽利用なら許諾を得なくて大丈夫」ということはないので注意してください。



●猫ミーム動画グッズ販売の法的リスクは?

――最近、猫ミーム動画の人気から、グッズ制作して販売している企業が出てきています。これらも権利許諾を得ているとは思えないのですが、何か法的な問題はないのでしょうか。



猫ミーム動画の中の一部(静止画)に基づいて、立体的な人形やグッズなどをつくる行為も、元動画の翻案(変形)にあたります。したがって、元動画の著作権者の許諾なくこのようなグッズを製造したり販売したりした場合には、翻案権侵害となります。



仮に、元動画の著作権者の中には、自分の画像が、自分の動画が猫ミーム動画に利用されていることを了承しているとしても、直接的な売上が生じるグッズ販売までは想定しておらず、了承もしていない可能性が高いのではないでしょうか。



このように考えると、同じ元動画の翻案権侵害にあたる行為でも、猫ミーム動画の投稿よりもグッズ販売のほうが、元動画の著作権者からクレームを受けるリスクは高いといえるかもしれません。




【取材協力弁護士】
唐津 真美(からつ・まみ)弁護士
弁護士・ニューヨーク州弁護士。アート・メディア・エンターテイメント業界の企業法務全般を主に取り扱う。特に著作権・商標権等の知的財産権及び国内外の契約交渉に関するアドバイス、執筆、講演多数。文化審議会著作権分科会専門委員も務める。
事務所名:高樹町法律事務所
事務所URL:http://www.takagicho.com


このニュースに関するつぶやき

  • このメーカーのサイトで、猫の両手からスパークが出るTシャツを 甥の誕生日に贈ったら「おいちゃん。これ、どこで着るん?」と疑問を呈された。
    • イイネ!5
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