【レバー焼き&からあげ&チキンカツ】新鮮朝採れレバー焼きを豪快にほおばる「至福の阿佐ヶ谷丼」:パリッコ『今週のハマりメシ』第124回

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2024年03月08日 17:41  週プレNEWS

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「阿佐ヶ谷ダイニングキッチン」のレバー焼き&からあげ&チキンカツ丼

ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。

それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。

そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。

【画像】温玉をとろ〜り

* * *

最近、日に日に春の気配が増してきたなぁと思っていたら、急に寒い。雨の阿佐ヶ谷、午後2時。なにか温かいごはんを食べつつ、なんなら軽く一杯やりたい。そんなことを思うにやぶさかでないシチュエーションだ。北口側のスターロード周辺をぶらりと歩いてみる。


たまに来るたびに感じることだけど、阿佐ヶ谷や高円寺の街並って、僕が20代くらいのころ、狂ったように飲み歩いていた時代の空気感がいまだに残っている。再開発で駅周辺の景色がまるっきり変わってしまった街も多いなか、嬉しいことだ。

そんなふうに歩いていたら、真新しそうに見える1軒の飲食店を見つけた。

「阿佐ヶ谷ダイニングキッチン」という店らしい。阿佐ヶ谷にあるダイニングキッチンだから、阿佐ヶ谷ダイニングキッチン......なんて潔いネーミング。そして看板にあるのは「定食」「美味しいおかず 美味しいお米」という、これまたシンプルな主張。近年気づいたことだが、僕はこういう、個人店っぽいのに、店名や店舗のしつらえにあまりこだわりがなさそうな店に、妙に弱いのだった。

だって、もし自分が新しく店を始めるとしたら、たとえば「パリちゃんキッチン」(めっちゃださいけど)とか、どうしたって自己主張を入れたくなってしまう。それをしないのはなぜなのか? もう、すでにこの店のことが気になりすぎている。

店頭のメニューを確認し、その気持ちは頂点に達した。


まず、意外にもとんこつラーメンメニューがどーんとあって、続いて全体的に茶色の圧が強い定食類に、どんぶりものに、オムライス。一見脈略がない。けれど、ラーメンならごはん1杯か替え玉1玉が無料だったり、定食系メニューはごはん1杯おかわり無料だったり、見れば見るほど迷ってしまうセットメニューが豊富だったりと、全面的に「うちは安くてうまいものでお客さんにお腹いっぱいになってほしいんだよ!」というメッセージを強く感じる。同時に「店名なんて、わかりやすきゃいいんだよ!」とも。

以上、すべて僕の想像ではあるけれど、もはや入る前からこの店が好きなので、当然入店。

税込み300円というリーズナブルさがありがたい「チューハイ」が、缶の氷結というのもこの店らしくていい。「これなら誰も文句ないっしょ?」っていう。本体もジョッキも信じられないくらいに冷えていて、氷ギッチリだからこれで2杯ぶんはとれるな。嬉しい。

メニュー選びも大いに迷ったけれど、定食やどんぶりにある「朝採れレバー」ものが特に気になる。となると、850円とリーズナブルな「朝採れレバー炒め丼」か? いや待てよ、その下にある「至福の阿佐ヶ谷丼」なるゾーンに、レバー焼きが入るバージョンがあるぞ。なんと、レバーに加えて、からあげ、チキンカツ、温玉までのって1050円。お得すぎるし、飲めすぎること間違いなし。「至福の阿佐ヶ谷丼 レバー焼き」で決まりだな。



丼といいつつ、おかずが多すぎて乗りきらないのだろう、巨大な平皿が迫力満点。全体に平たくごはんが敷いてあって、その上にたっぷりのレバー焼き、巨大なからあげ、チキンカツ、温玉。加えて、たっぷりの千切りキャベツとキャベツの浅漬け。ラーメン以外の全メニューにつくというタルタルソースに、熱々のみそ汁まで。なんと幸せな光景だろうか。


まずは千切りキャベツにドレッシングをかけ、バリバリとほおばってチューハイをごくり。はいもう幸せ。

朝採れが謳われるレバーはひと口食べたらわかる新鮮さで、くさみなどまったくなくて甘い。厚切りでぷりぷり、とろりとしていて、醤油ベースのたれで焼かれた香ばしさもたまらない。しゃきしゃきの玉ねぎとにらのサポートもばっちりだな。あわてて白メシをほおばりもぐもぐもぐと噛みしめると、心身にエネルギーが注入されていくのが実感されるようだ。

そして何気なくすするみそ汁。これが、だしの香りしっかりで、意表をつかれてびっくりしてしまうくらいうまい! 具はわかめ。いい。

続いて、からあげとチキンカツがちょんと触れあっている部分めがけ、タルタルソースを思いっきりかけちゃう。これは......すごいな。正義すぎて笑う。衣カリカリ、肉ジューシーなからあげと、薄めでクリスピーな食感のチキンカツ。鶏肉という素材は同じなのに、両者譲らない美味しさと個性。完全降伏。完全幸福。

そして、ほんの少し扱いに迷い、手をつけずにいた温玉。これを終盤、思い切って崩してみる。


かなりレアな仕上がりゆえ、一転、たまごかけごはん風になる白米。そのとろとろ感と焼きレバーという、ありそうでなかった組み合わせが、意外性もありつつ、超ありだ。

スピーディーに定食を平らげて帰ってゆく勤め人らしき人、にこにこ顔でオムライスと瓶ビールを味わうおじさん、そろってラーメンの替え玉を頼む若者ふたり組。共通しているのは、帰るときの顔がみな一様に満足そうだということ。やっぱりいい店だったな、阿佐ヶ谷ダイニングキッチン。

ところで、帰宅後になんとなくWEBで検索してみたところ、ここ、近年リニューアルにともなって店名も変わったんだそうで、旧店名は「キッチン男の晩ごはん」だったのだとか。現在のあっさりとした店名は、なかなかに我の強い旧店名からの反動なのだろうか......。再訪の際には聞いてみたい。

取材・文・撮影/パリッコ

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