川崎フロンターレの補強を査定 常勝時代からかけ離れた苦しむ姿...突破口は?

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2024年03月11日 07:31  webスポルティーバ

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 開幕前から評価の難しいチームではあった。

 山根視来(→ロサンゼルス・ギャラクシー)、登里享平(→セレッソ大阪)、レアンドロ・ダミアン(→コリチーバ)ら黄金期を支えたタレントが多く抜けた一方で、日本代表にも選ばれた三浦颯太(ヴァンフォーレ甲府→)をはじめ、山本悠樹(ガンバ大阪→)、丸山祐市(名古屋グランパス→)、さらにはオランダからファンウェルメスケルケン際(NEC→)を"逆輸入"で迎え入れ、エリソン(ボタフォゴ→)ら3人の助っ人も加えている。

 一見、質・量ともに戦力維持に成功できたかに思えるが、長年、鬼木達監督の下で培ってきた川崎フロンターレのスタイルに、彼らがフィットできるかは未知数である。大きな改革はリスクを伴うものである以上、今季の川崎の行く末を予想するのは困難と言わざるを得なかった。

 2024シーズンの初戦となったACLラウンド16第1戦の山東泰山では3-2と撃ち合いを制すると、ほとんどサブ組で臨んだヴィッセル神戸とのスーパーカップではファンウェルメスケルケン際の決勝弾で今季の初タイトルを獲得した。

 しかし、ホームで行なわれたACLラウンド16第2戦で山東泰山に敗れると、雲行きが怪しくなった。志なかばでアジアの戦いを終えたチームはリーグ戦へと気持ちを切り替え、湘南ベルマーレとの開幕戦では2-1と何とか競り勝ったものの、2節のジュビロ磐田戦では悪夢のような展開で4-5と敗れている。

 そして迎えた京都サンガFCとの第3節では、65分に失った1点を取り返せずに0-1と敗戦。速やかにフィットしゴールを量産していたエリソンが不在だったことも影響したが、今季初の無得点に終わり、まさかの連敗を喫した。

「選手は自信を持ってプレーしてくれていたと思います。最終的にゴールを取りたかったゲームでゴールを取れなかったこと、そこがすべてだと思っています。そこにしっかりとフォーカスしながら、一歩一歩進んでいきたい」

 鬼木監督は気丈に前を向いたが、小さくないダメージを感じていることも事実だろう。

【昨季から戦力の上積みは?】

 立ち上がりから目についたのは、局面での強度不足だ。ボール支配で上回りながらもファイナルサードの精度を欠き、ボールをあっさりと失ってしまう。強かった頃の川崎であればそこで即時奪回を実現し、再び攻撃へと転じたものだが、この日の川崎は失った瞬間の出足が遅く、カウンターを浴びる機会を頻発させた。

 開始7分には早々にネットを揺らされてしまう。これはVAR介入により救われたものの、これが決まっていれば、公式戦4試合連続で立ち上がりに失点を喫してしまうところだった。試合の入りの拙さも、常勝を誇った当時の川崎からはかけ離れた姿である。

 65分の失点の場面でも隙は見られた。最後はゴール前での肉弾戦からなかば強引にゴールを割られてしまったが、切り替えが遅く、右サイドをフリーで侵入された対応に、守備の緩さが感じられた。

 5つのゴールを許した前節の磐田戦でも、その傾向は見られていた。この日は1失点に抑えたとはいえ、同じ轍(てつ)を踏んでしまった感は否めない。

 もっとも、課題はあくまで攻撃面にあると、指揮官は感じているようだ。

「意図的に前進していくことは、チームとしてやらなきゃいけないところだと思います。そこに取り組みながらも、最後の質のところと、あとはチャンスの回数をもっともっと増やさないといけない」

 ボールを保持しながらも、パススピードやアイデアに欠け、ギャップを生み出すことができなかった。可能性が感じられたのはマルシーニョの単独突破のみで、連動性を欠いた攻撃ではコンパクトな京都の守備組織を崩しきることができなかった。

 総体的に見れば、8位にとどまった昨季からの上積みがなされていない、ということになる。結果で応えるエウソンと左サイドで推進力をもたらす三浦は、確かに希望の光である。しかし、エウソンを除く新外国籍選手と、山根の後釜として期待されたファンウェルメスケルケン際は、出場機会すら得られていない。現時点で今オフの補強策は、マイナス査定と言わざるを得ないだろう。

【次節からの3連戦が先行きを大きく左右する】

 それでもポジティブな要素がないわけではない。前述の三浦に加え、この日1トップを務めた山田新の動きも光った。機動力と積極性を備えたアカデミー出身のストライカーは、闘争心剥き出しのプレーでゴールに迫り、家長昭博を囮(おとり)に使いながら惜しいシュートも放った。その大胆不敵な振る舞いが、苦しむ川崎の突破口となるかもしれない。

 もちろん、リーグ戦はまだ3試合が終わったばかり。新戦力のフィットに時間がかかるのも想定内ではあるだろう。とはいえ、スタートダッシュの失敗を取り返すことは決して簡単ではないのも事実。それは、昨季の川崎が身をもって感じたことでもあるはずだ。

 次節から川崎は鹿島アントラーズ(3/17_A)、FC東京(3/30_H)、横浜F・マリノス(4/3_A)と、難敵との戦いが続く。待ち受けるこの試練を、いかに乗り越えていくのか。この3連戦が今季の川崎の先行きを大きく左右するかもしれない。

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