『仮面ライダーガッチャード』クロトー役・宮原華音が語る空手少女時代「男の子に勝てることが自信になった」

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2024年03月11日 10:21  webスポルティーバ

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女優・ラウンドガール・格闘家の"三刀流"

宮原華音インタビュー 前編

【長い手足で躍動する美女の正体】

 毎週日曜の朝9時に放送されている『仮面ライダーガッチャード』(テレビ朝日系列)。宮原華音が演じる「冥黒の三姉妹」の次女・クロトーは、悪役の中でも格闘能力に優れるキャラクターという役どころだ。アクションシーンでは彼女の長い手足と軽やかな身のこなしで、画面の中でひと際目を引く。

「仮面ライダーに出ると、子供から声をかけられることが増えます。お母さんや、お父さんからもSNSにコメントをいただいたりすると嬉しいですね」

 アクション女優として注目を集めていた彼女が、昨年4月に格闘技大会「RISE」にプロの選手として出場することになり、ファンは驚いた。試合結果を知って、もっと驚いた。「どうせ冷やかしだろう」という周囲の期待をいい意味で裏切り、スラリとした手足から強烈なパンチとキックを繰り出し、あっという間にKO勝利を収めたからだ。

「対戦前に相手のことを調べたんですが、そのために見たのがKO勝ちした試合だったので......『パンチが強いな』と思ってました」

 1ラウンド39秒でのKO勝利を収め、応援に駆けつけた友人たちに手を振る宮原。驚くことに、試合のあとはラウンドガールとしてもリングに上がった。試合会場の後楽園ホールのリングは、彼女が普段、ラウンドガールとして立っている場所だ。スタッフのほかに、ラウンドガールの仲間が応援に駆けつけてくれていた。知り合いが喜ぶ姿を見て、「勝ったんだ」という実感が初めて湧いてきた。

「試合は緊張しましたけど、終わった後は知り合いの顔を見つけてほっとしました」

 女優として活躍する彼女は、なぜリングに立ったのか。それを語るには、まず彼女の経歴から話す必要があるだろう。

 時は小学校2年生時までさかのぼる。ひとりっ子の宮原が空手を始めたきっかけは、内向きな性格を変えたかったから。子供同士のささいなやり取りで、何か強い口調で言われると、言い返せず黙り込んでしまっていた。

 その結果、自分の中に嫌なことを溜め込んで我慢するようになってしまう。嫌なことを頼まれても、断るのが面倒だからと全部やってしまうようになった。

「学校に行くのが本当に嫌で、泣いた日もありました」

 宮原の母は、小さなわが子が日々ストレスを溜め込んでいくことに胸を痛めていた。泣いて帰宅する娘を案じた両親は、彼女を空手道場へと通わせた。

「『強くなってほしい』というわけじゃなく、『礼儀や人の痛みをわかってほしい』と思っていたみたいですね。1年くらい続けばいいかなって」

【空手で日本一に】

 水泳にダンス......習いごとはたくさん通った。ほかの習いごとは嫌々続けていたが、空手だけはやめなかった。その理由は単純だ。強かったからだ。ほかの子と比べて圧倒的な武器となったのが身長だった。

「小学生2年生で140cmくらいありました」

 東京都の8歳の男児の平均身長は約130cm。10cmのアドバンテージは大きかったようで、空手を始めてわずか半年後の大会で彼女は優勝を果たす。

 3年生になっても身長がどんどん伸びていた宮原は、6年生の試合会場に案内されたこともあった。

「3年生の場所で待っていると、審判の方に注意されるんです。『君の試合会場はここじゃないよ』って」

 特に小学校低学年では、体格差がそのまま強みとなる。長い手足を振り回されたら、体格的に不利な相手は怯むだろう。

 それに加えて、宮原には先天的な運動神経のよさもあった。宮原の両親もアスリートだった。父親は卓球、母親はソフトボール。「勉強はできなくてもいいから運動は一番になれ」という"家訓"を宮原は守り続ける。

 男子の体格が女子に追いつく高学年になっても、彼女の負けん気が失われることはなかった。彼女は格闘技で男子と対等に渡り合えることに喜びを見出す。ファイターの素質があったのだろう。

「ケンカをしたら女の子は勝てない、という先入観があったから、男の子に勝てることが自信になったんです」

 ただ、試合に勝っても、親が宮原を誉めることはほとんどなかったという。大きな試合が近づくと彼女は両親と食卓で向かい合い、勝利を約束する。そして「次の試合に勝ったらゲームのカセットを買う」と約束を取りつけるのだ。それはご褒美というより、まるでミッション達成による報酬のようだったと笑う。

 小学校5年生で160cmあった彼女は、全日本少年少女空手道選手権大会で優勝する。中学でも同じように空手を続けて、都大会で好成績を残す。

 同時期に、ティーン雑誌の読者モデルに応募して見事に合格。誌面にも何度も登場したが、ティーン誌最盛期の当時はライバルも多く、特別な人気を獲得することはなかった。

 中学校に入ると、自分の背の高さを生かせる場所を探すようになっていた。大きくていいことはバレーボール、バスケットボール、そしてモデル。消去法で残ったのがモデルだった。中学3年生になると、三愛のイメージガールに応募してモデル活動を始める。

「背が高いから、当時は『でかのん』って呼ばれてて、それが嫌だったんです。だからこそ、何かで見返したかった」

 ちなみに、中学には空手部がなく、陸上部に所属して100mで都大会に出場している。アスリートとしての素質は明らかにあった。だが、さらに上まで突き抜けるには、もうひとつ何かが足りないことも気がついていた。悩んだ結果、選んだのが芸能活動だった。

【存在意義を見失いかけた時、目を覚まさせた監督からの言葉】

 幸運にもこれまでのキャリアが功を奏し、18歳で『ハイキック・エンジェルス』という映画で主役を務めることになった。CGやスタントを使わない本格的なアクション映画で、彼女の手足の長さや経歴は、スタッフの目に輝いて見えたことは想像に難くない。

 スマッシュヒットした映画の続編の主演ということで注目は集まったが、その後も仕事が増えることはなかった。高校卒業後に日体大に進学したのは、女優という不確かな仕事に対して"人生の保険"をかけたのだろうか。そう聞くと、彼女は少し寂しそうな顔をした。

「一番大きかったのは、高校時代に空手で大怪我をしてしまって選手生命に限界を感じたことですね。映画の現場にいた時も、アクション俳優の方は怪我が多くてみんなボロボロ。だから、アスリートを支える柔道整復師などの資格を取ろうと思ったんです」

 映画の主演を務めたものの、気がつけばアクションができるモデル、という"微妙"な立ち位置に落ち着いていた。自分自身の長所をどう活かしたらいいのか、当時の宮原にはわからなかったのだろう。

 アスリートとして日の目を浴びることはない。モデルとして生きていきたいが仕事はない。学生生活に救いを求めた。

 だが、人生の大きな転機はこの後に待っていた。それは、仮面ライダーシリーズの『仮面ライダーアマゾンズ』への出演だ。アクションができる若手女優の中でも彼女の経歴はダントツで、見事にオーディションを勝ち抜き、作中で「アマゾン」と呼ばれるモンスターを狩る「駆除班」所属の高井望役に決まった。

 監督の石田秀範氏には大きな影響を受けたという。石田氏はあるインタビューで、『仮面ライダーアマゾンズ』について「大人が観ることを想定した仮面ライダー」と答えている。特に登場人物の痛い、つらい、苦しいといった生々しい感情を視聴者に実感させることにこだわり、ストーリーは難解で奥行きがある。子供向けとは一線を画した作品に仕上がり、各方面から高い評価を得た。宮原も、単にアクションだけを求められたわけではなかった。

 宮原はここで、しっかり演技と向き合った。「脇役の個性をしっかりと確立して、物語に厚みを出す」のが石田監督のスタイルだ。宮原が与えられたのは、ぶっきらぼうで男勝りの性格だが、優しい心の持ち主。物語ではほとんど語られることがないキャラクターの内面まで演じきるため、宮原はアクション以外でもその役に没入するように努力した。若き演者たちをはじめとした現場の雰囲気はよく、石田監督が「棺桶に入れて持っていきたい作品」と言いきるほどの素晴らしい作品に仕上がった。

 サブスクリプションでの配信のみだったが(のちにテレビ放送もされた)、作品は想像以上の反響を得た。そして「ジャパンアクションアワード」というアクション映画における最高の賞にもノミネートされる。作品も宮原自身も、優秀賞を獲得の栄誉に浴した。若手女優としては快挙だった。

 だが、宮原は「それがとても悔しかった」と下を向く。一部のアクションを自分で演じていない女優が、スタントマンとのコンビで最優秀賞を受賞したことに、どうにも納得がいかなかったからだ。

「『私は演技もアクションもひとりでやってるのに、なんで?』という気持ちでした」

 演技は女優で、アクションはスタントマン。それだったらアクション女優などいらないのではないか。自分の存在意義を見失いそうだったのだ。授賞式のあと、そんな宮原の心境を見透かした石田監督は彼女を呼び出し、盛大に喝を入れたという。実際には叱責に近いものだったようだ。

「厳しい口調で何時間も怒られました。監督が言いたかったのは、『お前は賞が獲りたくて役者をやっているのか』ということでした。『観る人を楽しませたくてやってるんだろう』と」

 そして気づく。アクションと演技で人を楽しませることは、自分にしかできないんだと。そうして宮原は、アクション女優としての本当の第一歩を踏み出した。

(後編:初めてのプロのリング 相手の膝蹴りに「このままだとやられる。行かなきゃ」>>)

【プロフィール】
宮原華音(みやはら・かのん)

1996年4月8日生まれ、東京都出身。三愛水着イメージガールに中学生として選出されデビュー。空手の全国大会で優勝した高い運動能力を生かし、映画『ハイキック・エンジェル』で主役を務めるなど、女優として活躍。立ち技打撃格闘興行『RISE』のラウンドガールを務め、選手としてもリングに立った。現在、『仮面ライダーアマゾンズ』以来の仮面ライダーシリーズ出演となった、『仮面ライダーガッチャード』に「冥黒の三姉妹」の次女・クロトーとして出演中。公式X>> 公式Instagram>>

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  • クロトーがいなかったら今ごろガッチャードは見てないわ それくらい面白くない クロトーの美ボディがたまらないのよ〜そこからくりだされるアクションの数々もたまらないのよ〜
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