三笘薫、伊東純也の代役が町田にいた 多機能ウインガー・平河悠の日本代表招集に期待

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2024年03月11日 17:31  webスポルティーバ

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 三笘薫(左)と伊東純也(右)の両ウイングを欠いた状態で北朝鮮戦とのホーム&アウェー戦に臨むことになりそうな日本代表。その代役は、従来の序列でいけば左・中村敬斗、右・堂安律の先発が有力視される。久保建英を1トップ下で起用しない場合は、彼をそのまま右にスライドさせる手もあるが、ウイングが左右1枠ずつ空いていることに変わりはない。

 誰をどう使うか。左で有力視されるのはカタールW杯代表の相馬勇紀、元日に行なわれたタイ戦で代表デビューを飾った奥抜侃志あたりか。右は右利きに限定すると難しくなる。左利きでは、つい1月前なら、コベントリーで圧倒的なパフォーマンスを見せつけていた坂元達裕を推していたが、三笘同様、大怪我に見舞われ長期離脱となった。

 右利きの伊東と同タイプをあえて探すなら仲川輝人だ。しかし、FC東京のウイングでいまそれ以上に新鮮に見えるのが、左ウイングの俵積田晃太だ。同チームで完全にスタメンに定着しているわけではない。その点はマイナス要素になるが、ウイング天国と化した日本サッカー界を象徴する期待の19歳を抜擢することは、アジアカップでまさかのベスト8に沈んだ喪失感を払拭する施策として有効だ。

 そして、招集により必然性を感じるのは町田ゼルビアの23歳だ。J1でプレーする今季は立派な招集対象になる。3月9日の鹿島アントラーズ戦で左ウイングとして先発した平河悠。J1初ゴールとなる決勝ゴールも決めた、いまが旬なウインガーである。

 開始2分。何よりこの試合のファーストタッチに目は釘付けになった。自軍深くのライン際で魅せた左足→右足での連続タッチである。その2歩目の右足でボールを押し出すようにスルスルと抜け出し、MF仙頭啓矢にパスをつける様は、もはや代表級、あるいは欧州組級と言いたくなる、鮮やかさをともなう絵になる躍動感だった。

 鹿島の新監督、ランコ・ポポヴィッチは試合後、自軍の試合の入り方の悪さを嘆いたが、筆者は、キックオフ直後の平河のこのプレーを見て、鹿島が身構えてしまった可能性を指摘したい。自分たちのほうが格上だと思っていたら、相手の左ウイングにいきなり高度なボール操作を披露され、平常心を失った、との見立てに大きな間違いはないはずだ。

【三笘を彷彿とさせるアクション】

 172センチ70キロ。乾貴士、中島翔哉、本山雅志のいいところを足して3で割った、いかにも向こうっ気の強そうな小兵のドリブラーだ。低重心。ドリブルのフォームに安定感がある。

 続く7分には、対峙する鹿島の右サイドバック(SB)濃野公人と1対1になるや後ろ足(右足)の内側でボールを繊細に操り、引きずるように運びながら縦抜けを図ろうとした。三笘を彷彿させるようなアクションである。しかも、三笘がほぼ右足1本でドリブル突破を図るのに対し、平河は左足も使う。より細かなタッチで相手の懐に潜り込み、いったんボールを隠すような動きから縦にボールを持ち出したのだが、その最後のタッチは左足のインサイドだった。

 鹿島の濃野はどうすることもできず、縦抜けを決められ、左足でマイナスの折り返しを許した。ゴール前で町田FW藤尾翔太にボールが渡る寸前、鹿島の左SB安西幸輝がスライディングでクリアしたが、これも鹿島の試合の入り方に大きな影響を与えたプレーだった。

 前半13分の先制弾は、その流れから生まれた。決めたのが平河であることは先述のとおり。中盤で鹿島の日本代表MF佐野海舟からボールを奪った流れで、MF柴戸海、FWオセフンと経由したボールが平河の前にラストパスとなって送られてきた。

 右足でボールを押し出し、角度を作りながら蹴り込んだその左足弾は、番狂わせを意味する決勝点でもあった。「試合の入り方が悪かった」(ポポヴィッチ監督)原因の多くは、紛れもなく平河のプレーと関係があった。

 ご承知のとおり、ポポヴィッチは前町田監督(2020〜2022年)だ。山梨学院大から町田の特別指定選手になった平河の元監督である。番狂わせの立役者として教え子に噛みつかれた恰好となったわけだ。

「今日は彼にやられた。能力的には近い将来、日本代表入りしてもおかしくない人材だ」と、ポポヴィッチは試合後の会見で、渋面を作りながらも平河に賛辞を送った。

 だが、平河は日本代表どころか、大岩剛元鹿島監督率いる五輪代表チーム(U−22日本代表)にも、まだ1度しか選ばれていない。出場も、昨年のU−23アジアカップ予選パレスチナ戦1試合のみだ。そのお眼鏡にはかなっていないようだ。

【細かなボール操作を左右均等にできる】

 しかし、このタイプは短期集中トーナメントを戦うチームにはとりわけ、欠かせない選手だと見る。

 その答えは後半のピッチ上にあった。平河はポジションを左から右に変えていた。後半27分には大きな切り返しから際どい左足シュートを放っている。その2分後、右サイドでボールを受け、鹿島の左SB安西と1対1になった際も、後ろ足にあたる左足でボールを操作。縦抜けを図ろうとする動作を見せた。ここでは仕掛けの動きだけで縦勝負はしなかったが、左だけでなく右にも適性があることは、このアクションで一目瞭然となった。

 昨季までを振り返れば、右と左のプレー機会はほぼ半々だった。右も左も苦にしないウインガーはそうザラにいない。多機能的なのだ。

 伊東純也も左でプレーするが、せいぜい"こなす"程度だ。右を10とすれば、左は4だ。久保建英も右を10とすれば左は3。堂安律は右10対左1で、三笘に至っては左10対右0だ。中村も三笘に近いだろう。先述の俵積田も同様だ。

 細かなボール操作を両足で、左右均等にできる。代表チームという人数に限りがある集団にとっては重宝する選手でもある。

 日本代表に選ばれるのが先か、欧州に旅立つのが先か。「欧州組になってから選ぶ」では、代表監督として恰好のいい話ではない。平河が森保一監督、大岩監督のお眼鏡にかなうことを期待したい。

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