識者5人のセンバツ優勝予想 「山梨学院の連覇は?」「大阪桐蔭は強い?」「西暦末尾4の年は...」

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2024年03月14日 07:31  webスポルティーバ

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 3月18日に第96回選抜高等野球大会(センバツ)が開幕する。昨年は山梨学院が悲願の初優勝を飾ったが、はたして今年はどの学校がセンバツを制するのか? 高校野球を知り尽くす識者5人に今回の優勝チームをズバリ予想してもらった。

楊順行氏(ライター)

優勝予想:星稜

 組み合わせも決まり、さてどこが優勝するのか......と、参考までに過去の優勝校を眺めていると、おもしろいことに気がついた。西暦の末尾「4」年の大会は、第1回(1924年)の高松商(香川)を含めて、9大会の優勝校すべて初優勝なのだ。

 初出場初優勝も64年の徳島海南(現・海部)、84年の岩倉(東京)、2004年の済美(愛媛)があるし、14年の龍谷大平安(京都)は名うての強豪だが、夏の優勝はあっても、春は初めてだった(奇妙なことに末尾「4」年の夏も、9大会中7校が初優勝だ)。

 で、2024年の春もセンバツ優勝歴のないチームが有力......とすると、推したいのが星稜(石川)だ。昨秋の公式戦は石川県、北信越、そして神宮大会と優勝して公式戦無敗の13連勝。左腕エースの佐宗翼、右の2年生・道本想を中心とした投手陣は防御率1.96で、佐宗は星稜中3年時に春夏の全国大会を制覇するなど、経験も豊富だ。神宮大会の決勝で敗れた作新学院(栃木)の小針崇宏監督は、「崩れそうになってもフォームが乱れず、制球にブレがない。一流のピッチャーです」と脱帽している。

 打線は神宮大会4試合で一発を含む9打点の芦硲晃太(あしさこ・こうた)、2試合連発の萩原獅士、高校通算17本塁打の吉田大吾らが引っ張り、神宮では4試合で28点をたたき出した。昨夏の甲子園で創成館(長崎)に敗れたその日の夜、芦硲が山下智将監督の部屋をノックした。

「新チームではキャプテンをやらせて下さい。そして、自分たちで考える野球をやりたいんです」

 芦硲の指導力を信頼する山下監督は、それを受け入れた。試合前には選手間のミーティングで相手への対策を研究し、監督は報告を受け、必要があれば上書きする。北信越大会の第1週は芦硲、専徒大和らが体調不良でベンチに入れないピンチだったが、「あの週の2試合を勝ったことが大きいですね。すごく感性のある選手たちで、1試合ごとに成長してくれます」と山下監督は頼もしげだ。

 8日の抽選会では、初戦の相手が21世紀枠で出場の田辺(和歌山)に決まり、本命の一角と目される広陵や大阪桐蔭とは、決勝まで当たらない組み合わせ。各校主将の事前アンケートでは、優勝予想にトップの10票を集めたが、芦硲主将は「とてもうれしいこと。秋は日本一になりましたけど、春勝てる保証はひとつもない。一からチャレンジャーという気持ちで戦いたい」と気を引き締めた。父・大輔さんは天理(奈良)の選手として97年のセンバツで優勝しており、「自分も優勝して父の横に並びたい」と親子2代優勝を夢みる。

 1月1日に発生した能登半島地震では、石川県内で多くの犠牲者が出た。いまもたくさんの人が避難生活を続ける。過去の星稜は、夏は準優勝が2回あるが、センバツではベスト8が最高成績。だが、延長18回や松井秀喜の5敬遠など、甲子園では数々のドラマを演じてきた。末尾「4」年の今大会で、そろそろ主役になってもいい。

戸田道夫氏(ライター兼編集者)

優勝予想:大阪桐蔭

 組み合わせ決定を踏まえてベスト4進出の顔ぶれは、星稜、健大高崎、広陵、大阪桐蔭が勝ち上がるか。その中でも、序盤から厳しい戦いをくぐり抜けた末に地力を発揮するかっこうで大阪桐蔭が2年ぶりに頂点に立つ図を予想したい。

 星稜は左腕エースの佐宗翼に加え、2年生右腕の道本想が成長し、投の二枚看板が確立したことが明治神宮大会優勝の大きな要因。健大高崎は関東大会ベスト4ながら、実力ナンバーワンの呼び声高い。こちらは昨秋「スーパー1年生コンビ」と言われた左の佐藤龍月、右の石垣元気を擁して盤石の投手力を誇る。

 広陵、大阪桐蔭はともに昨年センバツベスト4、2年連続(21、22年)神宮大会決勝で対戦と近年の高校球界をリードする存在。広陵は高尾響、只石貫太のバッテリーが投打にチームをけん引し、大阪桐蔭も投の平嶋佳知、打のラマル・ギービン・ラタナヤケとドラフト候補を軸に全国屈指の総合力がある。

 しかし、それぞれのブロックには難敵、強敵がひしめく。とくに「死のブロック」と話題のDブロックは大阪桐蔭にとっては相当に厳しい激戦区。初戦の北海を何とか倒したとしても、昨夏甲子園4強の神村学園と昨秋神宮大会準Vの作新学院の勝者が待ち受ける2回戦は実現すればあまりに贅沢な好カードになる。

 注目の打者は豊川のモイセエフ・ニキータ。憧れの選手はソフトバンク・柳田悠岐という左のスラッガー。昨秋公式戦6ホーマーの打棒爆発が期待される一方、初戦で当たる阿南光の146キロ右腕・吉岡暖は、ニキータ斬りを果たしてヒーローに躍り出る可能性を秘める好投手だ。

元永知宏氏(ライター)

優勝予想:広陵

 ここ数年、甲子園の優勝校予想というお題をもらうたびに、広陵を真っ先に挙げてきた。新規格の低反発バットの採用によって戦い方が大きく変わると予想される今回のセンバツでも、広陵を優勝候補に挙げる。

 彼らは全国大会での経験が豊富で、試合運びがうまく、なおかつ、甲子園や明治神宮大会で優勝候補と期待されながら苦杯をなめた悔しさを持っている。

 チームの中心にいるのは、1年生の春から名門校のマウンドを任されてきた高尾響とキャッチャーで4番の只石貫太。中国大会を史上初の3連覇で勝ち上がったチームの中心にいるバッテリーの経験値はおそらく日本一。2023年春は山梨学院に、夏は慶應義塾に敗れたが、頂点に駆け上がった強敵と互角に戦った実績がある。

 エースの高尾は身長172センチ、73キロと大柄ではないが、ストレートの力強さとタフさ、マウンドさばきのよさは全国でもトップクラスだ。とくに気持ちは強く、中井哲之監督も「本当に負けず嫌いですよ」と認めているほど。

 大方の予想どおりにロースコアの試合展開になれば、守備力と監督の采配が勝負のカギとなる。広陵には伝統の守備力と小技のうまさと機動力がある。甲子園通算38勝を誇る中井監督の試合巧者ぶりは誰もが認めるところだ。ふたりの好投手を擁する高知との初戦をモノにしても、青森山田--京都国際の勝者との対戦が待っているが、2003年以来のセンバツ優勝をしっかりと見据えている。

 対抗に挙げたいのが昨年の優勝校・山梨学院だ。優勝チームのレギュラーは残っていないが、昨秋の関東大会では決勝まで勝ち上がった(3年連続決勝進出)。吉田洸二監督は選手をうまく乗せるモチベーターとして知られているし、センバツを2度制した経験がある。

 大穴は、昨夏の甲子園でベスト4に進出した神村学園、2勝した北海。神村学園は関東王者の作新学院、北海は近畿大会3連覇の大阪桐蔭と初戦で対戦するが、強敵を下せば勢いに乗ることは間違いない。

田尻賢誉氏(ライター)

優勝予想:報徳学園

 今大会最大の注目は新規格バットの影響がどの程度出るか。筆者には「意外と本塁打は出る」という話も入ってきているが、「新規格バット=飛ばない」という先入観やメーカーもまだ試行錯誤している状況ということもあり、近年にはない投高打低の大会になると予想する。イメージ的には秋の新チームが試合をする感じになるだろう。

 となると、やはり複数の好投手がおり、かつ守備力の高いチームが浮上する。その筆頭になるのは報徳学園だろう。

 昨春の準優勝に貢献した間木歩、今朝丸裕喜の両右腕が健在。間木は昨秋の公式戦で防御率0.22と驚異的な数字をマーク。1試合平均与四死球が1.31個と無駄な走者を出さない。今朝丸は最速150キロを記録。球威と球速で間木を上回る。

 守備も1試合平均失策が0.40個と安定。失点を計算して戦えるのは強みだ。チーム打率は.297と物足りないが、選球眼はよい。もともとバントや機動力を使った攻撃をするのが伝統。ロースコアの試合に慣れているのが新規格バットの野球にはプラスになるはずだ。

 対抗馬として挙がるのが関東一と広陵。関東一は、左腕の畠中鉄心が1試合平均与四死球0.77個と安定。畠中が中盤まで投げて試合を作り、最速145キロと球威のある坂井遼につなぐパターンが確立している。

 打線は例年より足の速い選手は少ないが、俊足かつ出塁率の高い1番の飛田優悟が出れば関東一らしい足を絡めた攻撃ができる。報徳学園同様、もともと打てなくても対応できる野球をやってきたのは強みだ。

 選手個々の能力が高いのが広陵。1年春から背番号1を背負う絶対的エース・高尾響に加え、二番手の堀田昂佑も成長した。高尾は球数が多いタイプだけに、新規格バットを利用して打たせて球数を減らせるかがカギ。打線は残塁が多いのが課題。チャンスで点数を取り切れるか。

 ダークホースは京都国際。秋の公式戦で1試合平均の与四死球が1.16の左腕エース・中崎琉生を擁する。毎年売り物の守備力は今年も高く、1試合平均失策は0.70個。二番手以降も鳥羽真生、西村一毅、長谷川颯と3人の左腕がおり、秋のような試合展開になれば左腕の強みが出るはずだ(秋は変化球でストライクがとれる左腕は勝ち上がりやすいため)。

菊地高弘氏(ライター)

優勝予想:報徳学園

 まずポイントになるのは八戸学院光星と関東一が対決する開幕戦。この試合が投手戦になれば、「やはり新基準バットは飛ばないから投手優位の大会になるのか」という空気感が醸成される可能性がある。

 八戸学院光星はドラフト候補左腕の洗平比呂だけでなく、岡本琉奨、森田智晴と能力の高い3人の左腕がおり、関東一には畠中鉄心、坂井遼と左右二枚看板がいる。開幕戦の勝者が大会の流れを引き寄せ、一気に上位進出を果たすのではないか。

 組み合わせ抽選会により、Dブロック(8校)に大阪桐蔭、報徳学園、作新学院、愛工大名電、神村学園、常総学院など有力校が固まった。文字どおり「Deathゾーン」になってしまったが、日程的にも優勝するには8〜9日間で5試合を戦わなくてはならず不利な状況だ。

 計算が立つ複数の好投手を擁することが勝ち上がる絶対条件と考えると、もっともイメージが湧くのは報徳学園。最速150キロのドラフト候補右腕・今朝丸裕喜以上にカギを握りそうなのが、実質的なエース格である間木歩。球威的には物足りないものの、変化球の精度や制球力は高校トップクラスで昨秋の公式戦防御率は驚異の0.22。報徳学園は守備力も高いだけに、ロースコアの展開に持ち込める可能性は高い。

 大阪桐蔭は昨秋に綻びを見せた内野守備の改善と、粒揃いの投手陣のなかで絶対的な柱が生まれるかどうかがポイント。新2年生の怪物候補・森陽樹の成長ぶりにも注目だ。

 投打にタレントを揃える健大高崎も戦力的には優勝候補。大味な野球にならなければ、勝ち上がるイメージが湧きやすい。4番・捕手と攻守の大黒柱である箱山遥人がキーマンになる。

 高尾響という絶対的なエースを擁する広陵、攻守にバランスのいい戦力で昨秋の明治神宮大会を制した星稜も優勝争いに絡む可能性がある。広陵は主砲の只石貫太が大会で木製バットの使用を検討しており、球場の雰囲気をガラッと変えてスタンドを味方につけるシーンが見られるかもしれない。星稜は新2年生の正捕手・能美誠也の存在感が増せば増すほど、頂点に近づきそうだ。

 不気味なのは創志学園。戦力的に面白いだけでなく、門馬敬治監督は前任の東海大相模で3回センバツ優勝を経験するなど「春の戦い方」を熟知している。状態のいい選手の見極める術に長けており、意外な選手起用で流れをつかむかもしれない。

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