U−23日本代表、五輪予選招集メンバーを占う マリ戦、ウクライナ戦で株を上げたのは?

0

2024年03月27日 07:30  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

 マリ、ウクライナと親善試合を行なったパリ五輪を目指すU−23日本代表。大岩剛監督は2戦目のウクライナ戦に、マリ戦からメンバーを大きく入れ替えて臨んだ。
 
 マリに1−3、ウクライナに2−0だったので、勝利したウクライナ戦に出場した選手の株が上がりそうだが、相手のベストメンバー度など、さまざまな条件を考慮すれば、選手それぞれの出来映えに大きな差はなかったと見る。

 特に出来の悪い選手は見当たらなかった。甲乙つけがたい素材が僅差で横並びしている状態だ。来月ドーハで行なわれるU−23アジア選手権のメンバー選考(23人枠)について、監督は今ごろさぞや頭を痛めているのではないか。

 注目したくなるのは唯一、2試合続けてスタメンを飾った山田楓喜(東京ヴェルディ)だ。左利きの右ウイングとして2試合とも45分間プレー。左足キックの確かさを幾度か披露した。ここ何試合かたて続けに選ばれている選手であり、Jリーグでも目立つプレーを見せている。

 気になるのはプレーエリアの狭さだ。右オンリー。左はできそうもない。ウイングで構えたとき、縦突破を狙う比率が低いことも輪をかける。けっして高くない位置から中央に入り込むので、彼が出場すると右からは、流れのなかから得点の期待が膨らむ最深部からの折り返しが期待しにくくなる。ドリブラーと言うよりキッカー。多機能性が求められる五輪本番(18人枠)では使いにくい選手かもしれない。

 ウクライナ戦での交代出場のみに終わった選手は細谷真大(柏レイソル)、内野貴史(デュッセルドルフ)、小見洋太(アルビレックス新潟)、田中聡(湘南ベルマーレ)の3人だった。

 細谷は元日のタイ戦、その流れでアジアカップの日本代表にも加わったワンランク上に見える選手だ。実力のほどはわかっている。テストする時間を他の選手に回した結果と見る。1トップとしてスタメンを飾ったのはマリ戦が藤尾翔太(町田ゼルビア)で、ウクライナ戦は染野唯月(東京V)だった。

【株を上げた平河悠】

 爪痕を残したのは藤尾に見えた。184センチの上背も魅力だが、目についたのはボールを収める力で、その点では細谷より上だった。いわゆるポストプレーヤーはA代表を含めて人材不足。貴重な存在に見える。そのなかにドリブルを加えることもできる。マリ戦の後半は右ウイングを務めたほどだ。ポストプレーが得意なストライカー兼ウイング。多機能型には先述のようにプラスアルファの加点もある。藤尾はJリーグでの動向を注視したい選手になる。

 町田からもうひとり選出された平河悠は、先発して後半19分まで出場したマリ戦では左ウイング、後半の頭から出場したウクライナ戦では右ウイングとしてプレー。こちらも多機能性を披露した。マリ戦では先制弾もマークしている。

 これまで出場した試合は、昨年9月に行なわれたパレスチナ戦のみ。ケガの影響もあったのかもしれないが、これまで大岩監督のお眼鏡にかなっていたとは言えなかった。にもかかわらず今回、2試合合計の出場時間は招集された26人のなかで最長だった。Jリーグでの高いパフォーマンスを見て、あらためてテストしたくなったのだろう。

 右利きなのか左利きなのかわからないぐらい、ドリブルの際に両足を巧みに操作する。つまり進行方向もわかりにくく、右利きが苦手とする右サイドの縦突破も涼しい顔でやってのける。株を上げたと見ていい。

 同じく両サイドをこなす佐藤恵允(ブレーメン)が上々のプレーを見せたのに対し、出場時間の短かった小見は、キレのある動きを見せものの、ウインガーらしい選手には見えなかった。功を焦ったのか、ポジション取りが内側すぎて、奪われた際のリスクを考えると、やや強引なプレーに映った。

 ウイングには、今回招集外となった海外組のふたり、三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)、小田裕太郎(ハーツ)も控えている。マリ戦、ウクライナ戦を経て序列はどう変化したか。ウイング大国ニッポンの看板がU−23でも維持されることを願いたい。

【デル・ピエロの域に近づいた荒木遼太郎】

 攻撃陣で目を引いた選手はもうひとりいる。久しぶりの招集となった荒木遼太郎(FC東京)だ。この選手の問題は、古典的な10番像から脱却できていないことにあった。ストライクゾーンが狭すぎてどのポジションでプレーさせたらいいのか、現代サッカーに落とし込みにくい選手になっていた。

 だが今季、FC東京に移籍するや「2トップ下」的な司令塔をイメージさせる攻撃的MFから「1トップ脇」に近い、FW色の強いアタッカーに変身。サッカー選手として大成までもう一歩という段階にこぎつけている。リスクの高いピッチ中央でのミスをどれだけ減らすことができるか。褒めすぎを承知で言えば、往年のアレッサンドロ・デル・ピエロ(元イタリア代表)やラウル・ゴンサレス(元スペイン代表)に近い10番兼9番の域に近づいたと言うわけだ。

 先発したウクライナ戦では、マイボール時には4−3−3のインサイドハーフとして、相手ボールに転じると高い位置へ移り、4−4−2の2トップとしてプレッシングに加わった。五輪チームにとっては、真ん中付近でしかプレーできない非多機能性はネックになるが、大岩監督がそのあたりをどう判断するか、目を凝らしたい。

 大岩監督の起用法からひとつ明らかになったのは、このチームの中心が藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン)であるということだ。マリ戦では流れの悪くなった終盤に交代出場を果たし、続くウクライナ戦では先発フル出場を飾った。恐いもの知らずの大将風という側面も垣間見られるが、他の選手にはない余裕と貫禄を備えていることも事実だ。

 山本理人(シント・トロイデン)、川崎颯太(京都サンガ)、松木玖生(FC東京)と、中盤にはその他にも実力者が控えるが、キレのよさが光ったのは、今回招集されたフィールドプレーヤーのなかで最も出場時間が少なかった田中聡だ。ウクライナ戦の後半22分からピッチに姿を現すや、所狭しと、すばしこく動き回り、追加点となるクリーンシュートを決めた。"選びたくなるプレー"とはこのことだ。

 ここでは触れなかったが、DF、GKも激戦だ。かつてない大接戦である。さらに本大会に出場した場合は、これにオーバーエイジとして誰を加えるかの議論も待ち受ける。考え方は100通りを優に超えるだろう。チームとしてまとめ上げるのは至難の業。森保ジャパンより難しい話になると筆者は見ている。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定