大谷翔平の対戦投手を徹底分析 三十路先発陣のカージナルス、因縁のジャイアンツ、今永昇太らカブス先発陣とは初対決

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2024年03月27日 10:30  webスポルティーバ

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■打者・大谷翔平の対戦チーム投手分析2024「カモと苦手」:4月中旬までの対戦カード編

今季、打者に専念する大谷翔平はどの投手を得意とし、苦手としているのか? 対戦チームの投手陣との相性を過去の実績から振り返りつつそれぞれの特徴、大谷との対決の見どころを紹介していく。今回は米国での開幕戦となるセントルイス・カージナルスをはじめ、サンフランシスコ・ジャイアンツ、シカゴ・カブスと4月中旬まで対戦する強豪チーム編をお届けする。

【元巨人・マイコラスら三十路先発陣のカージナルス】

 大谷翔平のドジャースはロサンゼルスでの地元開幕戦でセントルイス・カージナルスと4試合のシリーズを戦う。

 3月28日(日本時間29日)、第1戦の対戦投手は元巨人の35歳、マイルズ・マイコラスだ。「ドジャースはオフの補強で注目されている。ビッグゲームで、敵地のファンのブーイングの中で投げたい」と闘志をかき立てるマイコラス。名誉ある開幕投手は3度目、しかしながら2019年は5回5安打5失点、2023年も4回途中までで10安打5失点。「過去2度やったけど良くなかった。でも3度目の正直というからね」と名誉挽回を期す。

 大谷とは昨年5月3日に初対決。3番で出場の大谷は、第1打席は直球をとらえて右前打、2打席目はシンカーを強く叩いて右前適時打、3打席目は高めのチェンジアップに遊飛と3打数2安打だった。「あまり良い球を投げられなかったが、大事なのはフライを打たせないこと」とマイコラス。ほかの打者ではフレディ・フリーマンに13打数5安打2本塁打、キケ・ヘルナンデスには10打数6安打と相性が悪い。対ドジャースの通算成績も1勝2敗、防御率4.23だ。

 カージナルスは世界一11度のナ・リーグきっての名門だが、昨季は中地区最下位に沈み、再び同じような成績なら2008年からチームを率いるジョン・モゼリアック編成本部長の首も危ない。

 スポーツ専門サイト『ジ・アスレチック』のケン・ローゼンタール記者はオフの総額9900万ドル(約148億5000万円)の補強に疑問符を付けている。ソニー・グレイ(34歳)、ランス・リン(36歳)、カイル・ギブソン(36歳)と峠を越えたベテラン先発投手をかき集めたからだ。良い点を挙げれば、全員メジャーでシーズン30試合以上に先発し、長いイニングを投げた経験があることだが、長いイニングを投げても成績が伴わなければ意味がない。

 リンは昨季32試合に投げて防御率5.93、メジャーワーストの44本塁打を被弾した。大谷とは5月31日に対戦し、第2打席に94マイル(150km)の内角シンカーを中越えに、第3打席に93マイル(149km)の内角高めの直球を右中間スタンドに478フィート(約146m)も運ばれた。大谷に対しては23打数10安打3本塁打、打率.435とカモにされている。

 ギブソンも昨季ボルチモア・オリオールズで33試合に先発し15勝はしたものの、防御率4.73。大谷とは過去5打数3安打2四球。2022年6月が最後の対戦で内角カッターを右翼線二塁打とされた。

 マイコラスは「うちには強力打線と堅固な守備と優秀なブルペンがついているから、先発投手が完璧でなくてもいい。1対0で勝たなくてもいいし、20三振を奪わなくてもいい。試合を接戦状態にしてゲームを作ること」と説く。

【注目すべきカージナルス・ブルペン陣との再戦】

 しかしながら攻撃陣は、昨季は719得点で30球団中19位。守備力もOAA(Out Above Average/平均的な野手よりどれだけ多くアウトを奪ったか)が「−7」で19位。好守のラーズ・ヌートバー外野手も左脇腹を痛め開幕戦に間に合わない。ブルペンの防御率も昨季は4.47で23位だった。そのブルペンだが、大谷との再戦で興味深い投手が2人いる。

 まずはセットアッパーのジョバンニ・ガエゴス(32歳)。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)メキシコ代表のクローザーだ。WBC準決勝対侍ジャパン。1点リードの9回に登場、先頭の大谷に88マイル(141km)、外角高めのボールになるチェンジアップを右中間二塁打とされ、吉田正尚(ボストン・レッドソックス)に四球の後、村上宗隆(ヤクルト)の中越え2点二塁打でサヨナラ負けを喫した。「大谷にボール球を二塁打されたのが痛かった。あれで流れを持っていかれた」と悔しがる。それから1カ月半後、5月3日の公式戦で再戦となったが、大谷に95マイル(152km)の外角直球を叩かれ、左中間への二塁打を許している。ガエゴスは今度こそとリベンジを期してくるだろう。

 もうひとりはアンドルー・キトレッジ(34歳)。1度しか対戦していないが、それがフロリダ州タンパにあるドーム球場「トロピカーナフィールド」の歴史に残る一発となった。

 2021年6月25日、先発したキトレッジは、先頭打者の大谷に3球目のチェンジアップをとらえられた。右翼への当たりは観客の座るスタンドをはるかに超え、キャットウォークと呼ばれる照明などを設置する通路に着弾、ドーム中が唖然となっている。

【強力先発陣擁する因縁の相手・ジャイアンツ】

 4月1日から3日は、ドジャースの宿敵で世界一8度のサンフランシスコ・ジャイアンツと3連戦を戦う(ドジャースは世界一7度)。ジャイアンツはオフに大谷翔平も山本由伸も獲得に動き、ファイナリストに残ったが、結局はふたりにふられた。しかしその後、「プランB」で補強を続け、なんと総額4億ドル(約600億円)の巨額投資をした。行き当たりばったりではあるけれど、これだけ費やしたからには即、結果を出すことを求められる。地区優勝争いではドジャースに食い下がり、悪くてもワイルドカード枠でポストシーズンに勝ち進まねばならない。

 ドジャースとのシリーズ第1戦に出てくるのはローテーション4番手のジョーダン・ヒックス(27歳)だ。103マイル(165km)のシンカーが武器のリリーバーだったが、先発投手に転向することを希望し、ジャイアンツが4年総額4400万ドル(約66億円)でチャンスを与えた。球種はシンカーとスイーパーに加えて、昨季全投球の1.6%しか投げなかったスプリッターを練習中だ。果たしてコンバートはうまくいくのか?

 課題はコントロールと長いイニングを投げるスタミナだが、オープン戦は4試合12イニングを投げ18奪三振7与四球、WHIP(投球回あたりの与四球・被安打数合計)は1.42で良くはない。三振が多いのは素晴らしいが、四球も多い。「今は90%の力で投げるようにしている」と言うヒックス。大谷とはカージナルスにいた昨季1度だけ対戦しており、外角高めの100マイル(160km)のシンカーで二ゴロに討ち取っている。

 第2戦は5番手のキートン・ウィン(26歳)。昨季6月にメジャーデビュー、9試合に登板し5試合に先発、防御率4.68だった。半分以上がスプリッターという珍しい投手だ。大谷とはまだ対戦したことがない。

 第3戦はエースのローガン・ウェブ(27歳)。2023年はリーグ最多の216イニングを投げ、11勝13敗、防御率3.25で、サイ・ヤング賞投票で2位になった。9回あたりの四球数は1.3個とリーグで最も少なかった。ゴロを打たせる投手で、全投球の41%を占めるチェンジアップはメジャーの平均より6.3インチ(16cm)も大きく落ち、平均の打球角度はマイナス5度である。33%のシンカーも平均より6インチ(15.2cm)余分に沈み、被打球角度はプラス1度。ゆえにホームラン王の大谷でさえウェブから飛球は打てない。

 昨季は大谷と8月7日に対戦。第1打席は外角のチェンジアップを打ち、ゴロで抜けて行く中前打、2打席目はチェンジアップを一ゴロ、3打席目は89マイル(142km)の外角低めのチェンジアップを手を伸ばしてとらえ、痛烈なゴロがセンター右へ。快足を飛ばして二塁打にした。

 ウェブは2014年のドラフト4巡。元はフォーシームが武器の投手だったが、2019年に腕を下げてシンカーが武器の投手になった。テンポよく打たせていくから長いイニングを投げられる。昨季も20試合で6イニング以上を投げた。

 このウェブと対照的なのが左腕のブレイク・スネル(31歳)だ。2023年のナ・リーグ、サイ・ヤング賞投手でオフに大型契約を目指したがかなわず、3月下旬に2年契約で妥協した。98マイル(157km)のフォーシームと縦に割れるカーブが主な武器で、バットに当てさせない投球スタイル。MLB公式サイトでは、カーブの空振り時のバットの芯とボールの隔たりは平均10.4インチ(26.4cm)で、メジャーで最も大きいと紹介している。昨季の234奪三振のうち109個がカーブだった。一方で四球も多く、99与四球はリーグワースト。1959年のアーリー・ウィン以来という四球王でサイ・ヤング賞に輝いている。

 スネルと大谷の過去の対戦も8打席で半分が四球、4打数2安打4四球だ。去年は7月3日に対戦。第1打席は1ボール2ストライクと追い込みながら四球、2打席目は97マイル(155km)の外角直球で遊ゴロ、3打席目はストレートの四球だった。この試合でスネルは大谷を歩かせたが、5回無失点でマウンドを降り、勝ち投手になっている。

【カブスは先発3人が初対戦。大谷の苦手がブルペンに】

 このシリーズの後、ドジャースはロサンゼルスを離れ遠征。4月5日から7日はシカゴでカブスと3連戦だ。予定されているローテーションどおりなら、第1戦はローテーション2番手のカイル・ヘンドリックス(34歳)、第2戦は左腕のジョーダン・ウィックス(24歳)、第3戦は今永昇太(30歳)との対決になる。3人とも大谷がメジャーで一度も当たったことがない投手だ。

 ヘンドリックスは速球の平均速度が87マイル(139km)と、メジャーで最も遅い先発投手。全投球の41.1%を占めるのは平均81マイル(130km)のチェンジアップで、被打率は.180だ。遅い直球とさらに遅いチェンジアップで緩急をつけ、抜群のコントロールでバットの芯を外す。速い球に強い大谷だが、果たしてこの遅い球を打てるのか? ドジャースとは過去6試合対戦、防御率5.03で3勝3敗と、フレディ・フリーマン、マックス・マンシーによく打たれている。

 ウィックスは2021年のドラフト1巡指名左腕。昨季途中にメジャーデビューを果たし7試合に先発、4勝1敗だった。チェンジアップとフォーシームを軸に投げる。カブスは近年ドラフトと育成がうまくいっており、開幕投手でエースのジャスティン・スティール(28歳)は2014年のドラフト5巡、5番手のハビエル・アサド(26歳)はメキシコ出身でともに生え抜きだ。投手育成に多大な貢献をしているのはトミー・ホットビー投手コーチで、テクノロジーやデータ分析に詳しく、ピッチデザインのアドバイスが得意だ。今現在も、今永の球種をメジャー仕様に進化させるべく、本人と共同作業に当たっている。

 今永は3月14日のアスレチックス戦、キレのいい直球でメジャーリーガーを圧倒した。キャンプ中、ブルペンで意識して高めに投げる練習に取り組んだ。日本では見逃されボールになるだけだったが、メジャーでは打者が積極的に振ってくる。

 イアン・ゴームズ捕手は「高めの直球は伸びがあるし空振りが取れる。天賦の才能。もっと使えばいい」と励ます。その上でホットビー投手コーチは直球がシュート回転ではなく、むしろカット気味に伸びて行く方が、メジャーでは有効になるとアドバイスを加える。

 今永自身は「日本の時に投げていた真っすぐは別物として考えていきたい。こっちの野球の特徴と自分がうまくフィットしていかないといけないので」と言う。試合途中からはチェンジアップの空振りが増え、9奪三振だった。「真っすぐでしっかり差し込んでいけば、バッターが真っすぐを狙ってポイントを前にしてくれるんで、少々ボール気味のチェンジアップでも振ってくれたりとか、高めを振ってくれたりする。相手のポイントをいかに前に出すか、それが僕の生命線になると思っています」と説明する。

 クレイグ・カウンセル監督は「何も変える必要はない。素晴らしい」とご満悦だ。もっともこれで大谷を抑えられるかどうかはわからない。メジャー6年間で大谷は対左投手の成績も上げ、高めの直球も長打にする。2023年の成績は、左投手の直球に対して打率.296、長打率.630だった。一方チェンジアップなどオフスピード系は打率.273、長打率.455、スライダーなどブレキングボール系は打率.203、長打率.500だった。左投手から打った本塁打は44本中11本だった。

 ところでカブスには、大谷が苦手にしているブルペン右腕が一人いる。昨季、ヒューストン・アストロズにいたへクター・ネリス(34歳)だ。フォーシームの平均速度は93マイル(149km)で特に速くはないが、83マイル(133km)のスプリッターと併用することでとても有効。これまで6打数0安打2三振だ。2023年5月8日は7回に対戦し、高め直球に浅い左飛。7月14日の7回は93マイルの直球に振り遅れたあと、83マイルのスプリッターで空振り三振だった。

 大谷といえども、ネリス相手には良いスイングができていない。カブスが勝ちパターンになれば、カウンセル監督は大谷に当ててくるに違いない。

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