紅麴サプリは「危険」なのか? 消費者である私たちが、まず考えるべきこと【薬学部教授が解説】

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2024年03月27日 20:21  All About

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紅麹サプリによる腎疾患などの健康被害が報告されています。「天然のものは安全」「『機能性表示食品』は国が効果と安全性を認めたもの」と思っている方は、注意が必要です。わかりやすく解説します。

Q. 紅麴サプリによる健康被害が出ているようで、不安です

Q. 「『紅麴サプリによる健康被害が出ている』というニュースを見ました。まだはっきりしないことも多いようですが、死亡者も出ているかもしれないと聞いて、紅麹ではありませんが、何種類かのサプリを愛用している一人として、不安になっています。

健康のために天然のサプリはいいものだと思っていますが、何に気を付ければいいのでしょうか? 「紅麹」というもの自体が危険なのでしょうか?」

A. 実際の因果関係はまだ不明ですが、「機能性表示食品」との適切な付き合い方を考えるときかもしれません

小林製薬の紅麹(べにこうじ)原料を成分とするサプリメントを摂取していた方が、腎臓の病気などを発症し、死亡した方も出ている可能性があることが伝えられています。健康のためにと購入・利用していたもので健康被害にあったのだとすれば、非常に残念なことです。

そもそも紅麹とは、お酒や味噌を作るのに用いられる麹カビの仲間で、正式には「ベニコウジカビ」(学名:Monascus purpureus)といいます。培養したカビから抽出された色素は、赤色の天然着色料としても利用されています。中国では、紹興酒の醸造に使われている他、消化を助けたり血行を良くする漢方の原料としても知られています。

近年は健康効果が研究され、血圧の上昇を抑えたり、悪玉コレステロールを抑えるなどの報告もあるようです。今回問題となった商品も、これらの知見を踏まえて発売されたものと思われます。

紅麹と腎疾患の因果関係は、現時点では不明ですので、現時点ではこれ以上、憶測で議論しない方がいいと思います。それ以上に重要なのは、一般にサプリメントがどういうものかが正しく認識されないまま、利用している現状がある点です。

まず、多くの消費者は「自然のものだから安心・安全」というイメージで天然由来のサプリメントを気軽に利用する傾向があるようですが、これは大きな間違いです。そもそも自然には、毒や未知の成分がたくさん存在しています。もし無知なまま自然のものを口にしたら、命を落とすこともあると心得るべきです。今回の紅麹も同じです。

一方で「化学合成された薬は危険」というイメージもあるかもしれませんが、医薬品は、有効性と安全性の試験を繰り返し、厳しい審査を通らなければ製造販売が認められません。

腎臓や肝臓の悪い方が利用しても問題ないかなどもあらかじめ検討されますし、どうしても使用する必要があるときには用法・用量などを変えるなどの特例的対応も考えられています。医薬品ではない一般の「食品」は、こうした厳しい審査をクリアしていないものだということを知っておくべきです。

さらに、今回問題となっている商品は「機能性表示食品」という分類のものです。これは「事業者が安全性と機能性に関する科学的証拠と考える資料を消費者庁に届け出れば機能性を表示できる」という制度を利用した食品です。

効果や安全性を国が認めているわけではなく、場合によっては事業者自身が確認していなくても、参考文献などを添えて届出さえ行えば、表示を認められることもあります。

医薬品の開発などに関わり、口にするものがどう人体に影響するかを常に考えている筆者としては、正直なところ、まだ効果の不確かなものを気軽に買って、習慣として取り入れるのは控えた方がいいのではないかと感じることもあります。自分や家族の健康と命を守るために、消費者ももっと慎重になるべきです。

今回のケースに限らず、事業者側にも問題が見られるケースはあります。医薬品メーカーが販売している商品なら、たとえそれが「食品」として販売されていても、消費者は薬のような効果を期待して、「手軽に病気を治したい」と考えてしまうものではないでしょうか。

現在問題となっている商品のパッケージには「悪玉コレステロールを下げる」と表示されていますので、何らかの病気で通院している方が、自己判断で利用していた可能性も考えられます。

本当に効き目があるものは、その成分が生体の機能を変える力があるわけですから、効果とともに副作用が出ることがあるのは当然だと想定し、より責任ある売り方を考えていくべきときなのかもしれません。業界としても、消費者としても、今一度「機能性表示食品」のあり方と、適切な利用の仕方を問い正してほしいと思います。

阿部 和穂プロフィール

薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))

このニュースに関するつぶやき

  • 本末転倒ですよね。
    • イイネ!9
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