「ギャンブル依存症」の現実や対処法を描く漫画に注目 借金をし親にはウソを、そして盗みにまで手を染めて

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2024年03月27日 21:13  ねとらぼ

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パチンコにハマるあまり、親の財布に手をつけるまでに――そんな深刻なケースが、生々しく描かれる(協力・作品提供:三森みささん)

 大谷翔平選手の通訳を務めていた水原一平氏が、ギャンブル依存が元でドジャースを解雇されたとする海外の報道をきっかけに、依存症の恐ろしさを描いた漫画『だらしない夫じゃなくて依存症でした』が、あらためて注目を集めています。


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 同作は漫画家・イラストレーターにしてASK認定依存症予防教育アドバイザーの三森みささんが、2018年に厚生労働省の監修の下に制作した啓発漫画。夫のアルコール依存症に苦悩する「山下ユリ」を主人公に、さまざまな依存症の現実や対処法を描いています。


 今回は水原氏の一件がもとでリクエストがあったとのことで、三森さんはギャンブル依存症を取り扱った第3話をX(Twitter)で再び公開しました。これはユリが会社で先輩の武田に依存症の相談をした際に、「何か参考になれば」と、彼自身のギャンブル依存症を明かされるエピソード。「依存症は物質や行為に依存することで脳が変質する病気」「誰でもなり得る」など、ヴィヴィッドな言葉とともに、パチンコがもとで300万円もの借金を作った過去が語られます。


●どのようにしてギャンブル依存症となったのか


 武田は小中高と野球に取り組み、体育大学に推薦入学したスポーツマン。しかし大学野球では通用せずに思い悩んでいたとき、仲間に誘われたパチンコがきっかけで、生活を狂わせることとなってしまいました。


 運が良いのか悪いのか、初めてのギャンブルは一発で大勝利。ビギナーズラックとは理解しながらその感覚が忘れられず、武田は嫌なことがあるとパチンコへ逃避するのが習慣となっていきます。


 そうそううまく勝ち続けられるわけでもないのに金銭感覚は狂いっぱなしで、「パチンコの負けはパチンコで取り返す」と大金を投入する日々。やがて負けがこんだ武田は、母親の財布に手を付け、その埋め合わせに消費者金融へ駆け込み、多めに借りたお金も全てパチンコに溶かし……と、どんどん深みにハマっていきました。


 とうとう借金が返せなくなった武田は、沖縄へ失踪して警察に保護されるまでに。そこまで来るとパチンコが楽しいわけでなく、ただただ後悔の念にさいなまれる日々だったといいます。


 結局借金は親が肩代わりしたのですが、思い返せばこれが一番の悪手。打ち続ける環境が整ったことで武田はまたパチンコを始め、再び借金を作ってしまったのです。


 最終的には両親が精神保健福祉センターに相談したことで、問題は少しずつ解決へ。ギャンブル依存症という「病気」と診断された武田は、医療機関でカウンセリングなどの治療を受けることとなりました。並行してギャンブル依存症同士の自助グループへ現在も通い続け、回復に尽力しているということです。


 内容はフィクションながら綿密な取材に基づき、依存症の実情を生々しく描いたこの漫画。編集部は三森さんを取材し、この病気にどう向き合えばいいのか、詳しい話を聞きました。


協力・作品提供:三森みささん


●ギャンブル依存症に周囲の人間はどう向き合えばいいのか


―― あらためて、この漫画の趣旨を教えてください


三森 この漫画は、厚労省の依存症対策推進室における、2018年度の依存症啓発事業の一環として制作されました。依存症の自助グループや病院を回り、取材させていただいたうえで執筆しています。


―― ギャンブル依存症はどの時点で疑うべきと考えていますか?


三森 どの依存症もそうですが、損失がひどくなったときですね。ギャンブルに関しては、遊びじゃなくて生活費を稼ぐ発想になったら、依存症の可能性が高いと思います。あと、借金のことが頭から離れない、なのにまたギャンブルを繰り返してしまうとか。


 あとは、楽しいと思えなくなったとき。最初は楽しく趣味としてやっていたのに、だんだんストレス発散のため、生活費を稼ぐため、孤独感やイライラを消すため……となると、依存しやすくなります。


―― 作中の武田先輩が親に借金を肩代わりしてもらったくだりで、「やってはいけない対応」とありました。では、周囲の人間はどのように対応するべきなのでしょう


三森 本人に病気の可能性を知らせること、入院や自助グループをすすめること、入院費を出すこと、回復できることを伝えることでしょうか。とにかく借金を肩代わりするとかお金を貸すとかは、本人が自分の心の問題に気付けず、依存行為を繰り返してしまいます。


 依存症は、そもそも依存行為をする前から問題が始まっていて、なぜその行為に自分が手を出してしまうのか? そこまでして打ち消したい苦痛は何なのか? ――そこに向き合って自分を変えないと、問題は解決しないケースが多いように感じます。また、責めたりバッシングすればするほど、本人がストレスを溜め込んでまた依存行為に走ったり、最悪自殺する可能性は十分あります。


―― 最後に、この漫画をどんな人に読んでほしいですか?


三森 依存症を「甘え」だと思ってる人や、依存症を知らない人ですかね。特にネットの声はかなり強烈で、根深いものだと感じています。多くの人が無知ゆえに依存症の人を責め立てていて、それ自体が本人の治療の邪魔をしているからです。本人は十分自分を責めています。


 専門書を読まずとも、漫画なら読めるかたも多いです。多くの人に依存症について知っていただいて、回復を応援できる社会になってほしいなと考えています。


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