テスラ「モデル3」が大幅改良! 何が変わった? 長距離試乗で確認

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2024年03月28日 11:40  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
テスラは2023年末に電気自動車(EV)「モデル3」の大幅改良モデルを日本で発売した。これによりシフトレバーとウインカーレバーがなくなり、ハンドル周辺はスッキリとした状態に。シンプルの極みといった印象のモデル3だが、乗ると便利で快適なのか。改良モデルに試乗した。


レバー類を廃止! インテリアはシンプルの極致



テスラの量販EVであるモデル3は外観の造形にも手が入り、グリルレスのフロント周りはより空力を考慮した顔つきとなった。簡素でありながら独自性があり、空気抵抗を減らす性能も満たされた感じだ。


一充電走行距離(1回の充電で走れる距離)も延びた。試乗した「ロングレンジAWD」は706km(改良前に比べ17km増)、「RWD」は573km(同8km増)だ。


ダッシュボードに大きなタブレットのような画面(タッチスクリーン)があるだけというテスラの車内は、もはやおなじみの光景。横長の大画面はベゼルが細くなり、画面の大きさは0.4インチ拡大の15.4インチとなった。


座席は形状を改善したとのこと。より自然に体を預けられて、快適に座れる印象がある。前後の席にシートヒーターを完備しているのは従来通りだが、今回の改良では前席にシートベンチレーション機能が追加となった。これで夏場の快適性も向上するはずだ。座席位置の調整はシート脇のスイッチで行う。


運転席周辺で目新しいのは、シフトレバーとウインカーレバーがなくなっていることだ。


シフトは大画面で操作する。画面右端のクルマのマークを上にスワイプすれば「D」、下にスワイプすれば「R」に入る。一番上の「P」のマークを長押しすれば駐車状態になる。


ウインカーはハンドル左側のスポークにあるスイッチで操作する。慣れればレバー操作より簡単だし、右左折や進路変更が終わればちゃんと戻るので、余計なレバー操作をせずに済む。ただし、ハンドルを回した状態でウインカーを操作したいときは不便だ。それでも試乗中、そこまで不満を感じることはなかった。


アクセルのワンペダル操作による発進と加速は相変わらず快適。減速も思い通りに速度調節できて、停止線でも狙い通りに止まれる。



目の前のメーターパネルもシフトレバーもないモデル3は普通のクルマとは見た目も運転感覚も異なるが、乗り込んで感じた安心感は走り出しても変わらなかった。テスラの「EVベスト」な開発姿勢が感じられる出来栄えだ。


オートパイロットの起動方法と注意点



高速道路ではACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を使ってみた。テスラが「オートパイロット」と呼称している機能だ。



ACCは従来、シフトレバーを「D」の方向に操作すると起動する仕組みとなっていたが、シフトレバーがなくなった今は、ハンドル右側のスポークにあるボール状のスイッチをダブルクリックする感じで2度押すと起動するようになった。その後の速度調節は同じスイッチを上下に、車間距離の調節は左右に回す。操作はいたって簡単だ。ちなみにACCの起動方法は「シングルクリック」と「ダブルクリック」から選べる(設定で変更可能)。


横長の大画面は画面右上の速度表示が運転中でも視野の隅に捉えやすく、ACCの速度設定も見やすい位置にある。これらは横長画面の利点だ。



速度表示の下には、周囲を走るクルマの動向が映し出される。影絵のような映像は目障りにならず、かつ状況はきちんと伝わってくる。この表現方法は従来通りだが、他社に比べてテスラが優れていると感じる点のひとつだ。


ACCの起動中はクルマがカメラでドライバーの視線を監視している。よそ見をするとアラートが出るが、それでも視線を戻さないとACCは解除になる。こうなると、いったんクルマを止めてシフトを「P」(パーキング)に入れない限り、ACCを再び使用することはできない。これが5回重なると、ACCを1週間使用することができなくなるそうだ。



不便だと思うかもしれないが、逆に言えば、それほどオートパイロットの制御が自然で優れている証でもある。テスラの機能が日進月歩で進化しているのを実感する。



ACC中にウインカーを出せば自動での車線変更が始まる。動作は的確かつ素早い。車線変更が終わればウインカーも消える。一連の滑らかな動きは、もはや人の操作を超えたのではないかと思えるほどだ。

高速充電は簡単? テスラでCHAdeMOを試してみた



今回の試乗はやや遠出もしたので、途中で経路充電を試した。テスラ専用充電器「スーパーチャージャー」の威力は経験済みなので、今回は車載のアダプターを使い、「CHAdeMO」での高速充電を行った。



結果としては、何の支障もなく充電できた。24分間の充電で18.8kWhの電力が補給できた(充電器の出力により充電量は変わる)ので、試乗車が搭載していた75kWhのバッテリーの約1/4を回復できたことになる。



テスラのスーパーチャージャーは国内で100カ所を超えたが、旅行などで長距離を移動する場合などには、当然ながらCHAdeMOを利用するケースも発生する。そんなときでもアダプターを使えば簡単に充電できることが確認できた。


テスラは車種拡充の途上にある。最新の車種は「サイバートラック」だ。一方で、既存車種のモデルチェンジの話はなく、将来を危ぶむ声が聞こえる。しかし、1台のクルマに永く乗り続けることも環境適合の一環だ。本質的に優れたクルマであれば、10年以上は付き合える価値を持っていると思う。私自身、一度手に入れたクルマは10年以上乗り続けている。それで不満はない。そのうえで、10年ぶりに新しいクルマを手に入れると、性能や機能の進歩に驚かされる嬉しさもある。



こうしたクルマとの付き合い方が、21世紀のクルマ選びのひとつの在り方ではないだろうか。その意味で、モデル3は当初から魅力ある1台だったが、改善された新型は一段と磨きがかかった印象が強く、EVの手本としての地位に揺るぎがないことを実感した。


御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら(御堀直嗣)
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