サッカー五輪代表、パリ行きがピンチってホント? 4月の最終予選が厳しく過酷な理由

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2024年03月29日 10:40  webスポルティーバ

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サッカーU−23日本代表がマリ、ウクライナとの親善試合を終え、いよいよ4月15日から始まるパリ五輪出場をかけたアジア最終予選(AFC U23アジアカップ カタール2024)へ臨む。1996年のアトランタ五輪以来7大会連続本大会出場の日本が、今回予選突破へ大変な危機感を持っているのはなぜか。厳しい最終予選に臨むチームの状況を今一度確認しておく必要がある。

【リスクが高まった予選方式】

「1996年のアトランタオリンピック以来、今回の予選は過酷で難しいものになると想像しています」

 JFA(日本サッカー協会)の山本昌邦ナショナルチームダイレクター(以下ND)は、マリ戦とウクライナ戦のメンバー発表会見の時に、パリ五輪最終予選の厳しさについて繰り返し伝えた。

「正直この4月の予選、私は危機感しかありません」と語気を強めた時に、会見場の空気がピリッとした。日本のサッカー男子はアトランタ五輪から7大会連続で本大会に出場しているため、おそらく報道陣のなかでも「なんとなく今回も行けるだろう」という感覚になっていた人たちがいたように思う。

 そのふわっとした「なんとく行けるだろう」という空気に対して、あらためて危機感を持つよう警鐘を鳴らす会見となった。

 山本NDは、コーチとして1996年アトランタ五輪と2000年シドニー五輪、監督として2004年アテネ五輪に五輪代表を率いて出場し、アジアの五輪予選の厳しさを知っているからこその冒頭の言葉となった。

 五輪出場国の常連となって以降、オリンピック予選のハードルが上がったのは、おそらく出場権がAFC U23アジアカップの上位チームに与えられるようになった2016年のリオデジャネイロ五輪からだ。

 それまで行なっていた長期にわたって開催される予選の場合は、アジアのなかで厚い選手層を誇る日本は有利だった。しかし変更後は、短期決戦かつ一発勝負のトーナメント戦を勝ち上がる必要があるため、日本にとっては大幅にリスクが高まった。

【海外組で招集できない選手がいる】

 日本サッカーが置かれている環境が大きく変わってきたことも、五輪予選をさらに難しくしている。それが海外組の増加だ。山本NDは「(海外組で)正直呼べない選手が何人かいる」と明かした。

 今の日本サッカーは、五輪世代にもU−20世代にも海外でプレーする選手が多くいる。それは「A代表の強化にもつながっている」とポジティブな面を認めつつも、「ひとつの転換点を迎えている」ことを山本NDは訴えた。

 昨年9月、国内に所属する選手に対しては、五輪予選や本大会での招集に関してルールを作り、Jクラブや大学もそのルールのもとに協力する体制を築いた。だが、あくまでもそれは国内のみの話であり、五輪世代に多くの海外組が増えた今、海外のクラブの協力や連携も必要になってきている。

 最終予選はIW(インターナショナル・ウインドー/各国協会が代表選手を招集できる期間)ではない時期に行なわれるため、海外のクラブが日本代表に選手を出す義務はない。今回の最終予選が行なわれる4月は欧州リーグにとってリーグ終盤の重要な時期でもある。

 当然ながら招集を拒否するクラブが多い。JFAも海外オフィスを設けて、欧州クラブとの密なコミュニケーションを取ってはいるが、それでもなお招集のハードルは高い。

 昨年行なわれたアジア大会もIW外で行なわれ、選手招集に苦労した(実質セカンドチームといったメンバー構成で臨んで準優勝という結果を手にしたが)。山本NDはそんな状況を「日本の底力が試されている」と言う。

「今回のメンバーのなかにも、アジア大会のメンバーが何人か入っていただいています。そういう成長は我々が目指していかなければいけないところ。大岩剛監督をはじめとした現場にはそういったことをうまく活用して、成長につなげてもらっているのはうれしい。そこのチャンスを生かして、選手が自信を持って入り込んできた。こういうことのほうが大事で、たとえば才能がどんなにあっても、いい経験をしなければなかなか成長は難しいと思う」(山本ND)

【アジア各国のレベルアップ】

 また、今大会からさらに予選が難しくなった要素として、ワールドカップのアジア枠増大も影響しているという。

「ワールドカップの出場国がアジアで増えたことによって、トップ4の次のグループが強化をさまざまな面で進めていて、そこに育成の強化というのが入ってきていて、(アジアのほかの国々にも)アンダー世代のなかから世界に出てきている選手たちが育ってきている。そういう流れもあって、ここからのワールドカップの枠とオリンピックの3.5枠というのは本当にハードルが高いものだと思っています」(山本ND)

 今回の最終予選は、呼びたい海外組の選手を呼べず、大会日程も変わって4月のカタールという酷暑のなかで戦うことになる。そんな向かい風が多い「過去に例のない状況」のなかで、日本はレベルが上がったアジアを勝ち上がらなければいけないのだ。

 大岩ジャパンは発足以来、親善試合では強豪国との対戦を優先。アジアとの対戦経験も、ドバイカップ、AFC U23アジアカップ ウズベキスタン2022、1次予選、アジア大会で積んできた。今大会は最終予選から五輪本大会までの期間が短かく、本大会でメダルを狙うための強化と、予選を突破するための強化の、どちらも同時進行で行なう必要があった。そんななか、アフリカ勢との対戦がなかったが、マリ戦でようやくそれもアンロックできた。

 最終予選前最後の2試合を終えたあとの会見では、大岩監督から堂々たる決意を感じた。

「積み上げてきたものは、選手たちがこの2年で個人的に成長した部分もあるし、チームとしての練度や回数を重ねることで、守備でも攻撃でも目線を合わせる作業をしてきた。そういう部分は期待して選手を選びたいし、送り出したい。今回厳しい2試合をやることで、選手がもう一回『甘くないんだよ』と。サムライブルーのアジアカップを見てもそういう気持ちにはなったでしょう。今回自分たちが戦ったなかで、それを感じる部分がたくさんあったと思う。そういう部分も含めて最終予選に向かいたい」(大岩監督)

 ここまで最終予選の厳しさをつらつらと書いてきたが、厳しい最終予選だから負けてもしょうがないという話ではない。8大会連続の五輪本戦出場は絶対に成功させなくてはいけないミッションであるということを、あらためて一記者としてプレッシャーをかけておきたい。

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  • 全くサッカーに詳しくないけど言い訳ばかりで情けない気持ちになりました。アジア予選でこれなら本戦はどうなるのだろう。
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