遺されたペットの行く末、考えていますか 高齢者のペットをめぐる相続問題と、「信託」という選択肢【弁護士が解説】

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2024年03月29日 11:40  まいどなニュース

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高齢者の方が、生活の癒やしとしてペットを買い求めることが増えているそうです ※画像はイメージです(beeboys/stock.adobe.com)

高齢者の方が、生活の癒やしとしてペットを買い求めることが増えているそうです。それ自体は大変よいことなのですが、生活環境の改善、医療の進歩などの理由でペットたちの寿命は大きく延びてきていますから、ペットが飼い主よりも長生きする可能性と、その場合の対策も、考えておかねばなりません。ペットに関する法律問題を取り扱っているあさひ法律事務所・代表弁護士の石井一旭氏が解説します。

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▽1 ペットと相続問題

亡くなった方が飼っていたペットは、「相続財産」となり、相続の対象となります。相続人が複数いる場合は、ペットは相続人全員の共有とされます。

そこから、相続人全員で遺産分割協議を行い、ペットを相続する人(引き取って飼育する人)を決めなければなりません。飼い主が決まるまでは、相続人のうちの誰かが事実上の飼い主となって世話をするしかないでしょう。飼育費用は共同相続人間で分担することになります。

すんなりと合意に至ればいいのですが、相続人全員が動物嫌いであるとか、相続争いが発生してしまうと、ペットの世話を誰もみない、という事態に陥ってしまうこともあります。もちろん、餌を与えないとか、劣悪な状態で放置したりすれば、相続人が動物遺棄罪に該当する可能性もあります。

このように、ペットの相続は、生き物であるがゆえに通常の相続とは違った独自の難しい問題が生じてしまうのです。

▽2 ペット信託

このような問題を避けるためには、まず、自分が亡くなったあともペットの世話を引き受けてくれる人を探しておかなければなりません。

親族でも、友人でも、愛護団体でもいいのですが、「自分が亡くなってもペットを安心して託せる人」を見つけてお願いしておく必要があります。

好意で引き受けてくれる人がいればいいですが、それでも費用負担の問題があります。ペットの飼育はタダではできませんし、飼い主としてもできるだけ恵まれた環境で生きていってほしいというのが人情だと思います。

しかしペットは人間ではないので、財産を直接渡すことはできません。預金口座をペット名義にすることはできませんし、現金を渡しても使うこともできません。

そこで、信託制度を利用することをお勧めします。

信託とは、特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいいます(信託法2条1項)。要するに、自分の財産を信頼できる人に託し、定められた目的のためにその財産を管理してもらうという契約です。信託は契約なので相続からも切り離すことができますので、この制度を利用すれば、ペットが生きていく上で必要な財産を、ペットのために残しておくことが可能となります。

具体的には、まず、何かあったときにペットの世話をしてくれる人(「受益者」といいます。)と、ペットのための財産を管理する人(「受託者」といいます。)を探します。いずれも、身の回りでペットや財産を預けられるような信頼性の高い人物を選択しなければなりません。なお、弁護士は信託業法上、信託契約の受託者になることはできないとされています。そこで、受託者は原則として親族の中から選ぶことになるでしょう。

ペットのために財産を残したい人(委託者)は、受託者との間で信託契約を締結して、ペットの飼育に必要な財産を受託者に渡します。委託者に万一のことがあって、ペットを飼えなくなった場合は、受益者にペットの所有権を引き渡し、受託者は信託財産の中から受益者に対して、あらかじめ契約の中で定められたとおりにペットの飼育費用を支払っていきます。

たとえば、事情によりペットを飼えない自分の子どもを受託者にして財産を預け、飼育に慣れた友人や愛護団体が受益者となり、ペットの飼育をしていく、というような形が考えられます。受益者が適正な飼育をしているかどうか、受託者が適正な資産管理をしているかどうかを監督するためには、信託監督人を選任しておくことがよいでしょう。信託監督人は、管理業務に長けた弁護士などの法律の専門家に依頼することが望ましいです。

自分の死後のペットの行く末が心配な方は、信託という手段が取れないか、検討してみて下さい。信託契約は複雑でありまた正確性が強く求められますので、弁護士などの法律専門家に相談することをお勧めします。

◆石井 一旭(いしい・かずあき)京都市内に事務所を構えるあさひ法律事務所代表弁護士。近畿一円においてペットに関する法律相談を受け付けている。京都大学法学部卒業・京都大学法科大学院修了。「動物の法と政策研究会」「ペット法学会」会員。

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