Lenovoにとって「日本のコンシューマーPC市場」は重要? アジア太平洋地域責任者に聞く

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2024年03月31日 18:31  ITmedia PC USER

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日本メディアのグループインタビューに応じたレオン・ユー氏(アジア太平洋地域 コンシューマービジネス責任者)

 Lenovoは3月27〜28日、アジア太平洋地域のコンシューマー事業に関する説明会「Lenovo Innovate '24」をタイのバンコクで開催した。本イベントでは、1月に米ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2024」に合わせて発表したプレミアムブランド「Yogaシリーズ」とゲーミングブランド「Legionシリーズ」「LOQ(ロック)シリーズ」の詳細が紹介された。


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 本イベントに合わせて、同社は日本を含むアジア太平洋(APAC)地域におけるコンシューマー事業の責任者であるレオン・ユー氏へのグループインタビューを開催した。本稿では、その際の様子をお伝えする。


●LenovoにとってのAPAC市場、そして日本市場とは?


―― 今回展示されたYogaシリーズやLegionシリーズの製品は、1月のCES 2024に合わせて発表されたものです。それをAPAC地域のメディアに改めて説明したわけですが、APAC地域はLenovoの中でどのような位置付けとなるのでしょうか


ユー氏 APAC市場、特に日本市場はLenovoとして非常に重視しているマーケットです。ただし、我々のは以前から全世界共通で「Smarter technology for all」(全ての人の生活を、テクノロジーでより豊かにする)というスローガンのもと、全ての人々にスマートなテクノロジーを提供できるような製品を開発しています。


 そういう観点では、APAC市場あるいは日本市場を特別な位置付けとしているわけではありません。


ユー氏 そういった中で、私たちはAI(人工知能)におけるリーダーになりたいと考えています。その柱となるのが「トランスフォーメーション」「イノベーション」「市民性」です。


 「トランスフォーメーション」は、企業の在り方の変化です。私たちLenovoは単に「ハードウェア(デバイス)を提供するメーカー」ではなく、「AIテクノロジーソリューションプロバイダー」に移行しようと考えています。


 例えば、(CES 2024で発表した)新しいYogaシリーズは、クリエイターがより良いコンテンツを制作できるソリューションを提供しています。それと同じように、一般の人々や企業の方々にも、さまざまなソリューションを広く提供し、競合他社との差別化を果たしたいと考えています。


 次に「イノベーション」ですが、私たちは全てのPC製品に“包括的な”AIを提供したいと考えています。一般消費者の意見を取り入れ、消費者の立場に立ち、より良いユーザーエクスペリエンス(UX)を提供できるような製品作りを行っています。


 最後に「市民性」ですが、私たちは全ての人々にとって扱いやすく、かつ持続性のある製品を開発したいと考えています。その1つが製品素材で、製品やパッケージなどに多くのリサイクル素材を利用しています。AIに関しては、現在の生成AIの多くはクラウドベースでの利用となっていますが、それをクライアントベースで利用できる製品を(順次)投入したいと考えています。


―― 日本市場やアジア市場におけるレノボのポジショニングについて教えて下さい


ユー氏 私たちの目標は明確です。GfKの調査によると、現在私たちはAPAC地域におけるナンバーワンのPCブランドの地位を確保しています。そして、今後もその“ナンバーワン”の地位を維持できるように努力し続けたいと考えています。


 今後10年について予測するのは難しいですが、私たちにはいくつかの目標が残されています。それは「プレミアム」と「ゲーミング」というセグメントです。これらの分野では、AIを活用しつつ、より革新的な機能を提供するなど、努力を続けていく必要があると考えています。


 そういった努力を続けることで、今後も日本やアジア市場で国際ブランドとしてナンバーワンの地位を維持していけると考えています。


―― 過去数年間で、Lenovoにとって驚きだったことはありましたか


ユー氏 それは、やはり新型コロナウイルス感染症の影響です。これによって、それ以前に立てていた市場予測が大きく崩れることとなりました。


 例えば日本では、在宅勤務が必要になったことでPCに求められる機能が変わり、より短期間でPCを更新する動きが出て、特にノートPCの需要が増大しました。その反動を受ける形で、2022〜2023年の日本市場(におけるPC需要)はかなり縮小しました。


 円安による価格上昇も、特に我々の製品には大きく響きました。このあたりも、コロナ禍前の想定とは異なる出来事です。


 ただ2024年に入って、日本市場(におけるPC需要)は回復しつつあります。これはAIへの注目度が高まったことで、AI PCへの買い換え需要が高まっていることや、一部の企業で買い換えサイクルに差し掛かっていることなどが要因と考えています。


 縮小しているとはいえ、日本市場はAPAC地域全体で2位を占める非常に大きな市場です。そのため、今後AI PCや買い換えといった需要を逃すことなく、成長に結びつけていきたいと思っています。


 昨今、PC業界では推論演算に特化したNPU(ニューラルプロセッサ)を搭載するCPUを備えた「AI PC」が1つのトピックとして注目を集めている。LenovoはAI PCをどう考えているのだろうか。


●Lenovoは「AI PC」をどう考える?


―― 今回展示された製品も含めて、「AI PC」と呼ばれるNPU搭載PCが多数登場しています。市場の反応はいかがでしょうか


ユー氏 Lenovo独自調査の結果では、エンドユーザーの66%以上が自分の仕事などにAI PCが活躍すると回答しています。また、今後3〜5年以内にAI PCによって日常生活が変わるとも考えられているため、市場の反応は非常に良いといえます。


 IDCの調査によると、2024年末までに全世界で販売されるPCのうち、AI PCは30%ほどと見込まれていますが、2027年にはその割合が60%に成長すると考えられているといいます。今後(AI PCの市場は)大きく成長していくでしょう。


●今後のPCはどうなっていくのか?


―― 一般ユーザーの観点から、今後PCに求められる機能はどういったものがあるとお考えでしょうか


ユー氏 現在の一般ユーザーが注目している機能は、やはりAIです。これは世界的に見ても同じで、AIはPCにとって非常に重要な機能となっていくでしょう。PCは既に新たな時代に突入しているといえます。


 この点では、プレミアムやゲーミングのセグメントも同様です。こういった分野のPCは今後、(売り上げベースで)PC市場全体の45%ほどに成長していくと考えています。


 日本市場では、特にプレミアムセグメントが重要であると考えています。日本はAPAC地域の中でも平均所得が高く、PCの購買意欲も高めです。AIへの需要が高まることで、プレミアムセグメントの比率がより高まっていくでしょう。


―― 「MWC 2024」では、透明ディスプレイを搭載するコンセプトノートPCを展示しました。ただ、そういったコンセプトモデルが製品化に至ることは少ないように思いますが、Lenovoがそういったコンセプトモデルを示す意味はどういったところにありますか。


ユー氏 それは私たちの革新性や優れた技術力を示したい、ということに尽きます。すぐに製品化できないものであっても、将来的には実現可能というものもあります。


 有機ELディスプレイを例に取ると、以前は非常に高価でしたが、現在では比較的安価なノートPCでも搭載できるようになりました。私たちが革新的で技術的にも優れた製品を開発するという意欲を持ち続ける限り、コンセプトモデルのような製品も(長い目で見れば)実現できると考えています。


●「大和研究所」を通して日本市場のニーズが世界品質に


―― 日本のユーザーは、世界と比べてPCに求めるものが違っていると思います。そういった中、Lenovoは日本に大和研究所(横浜市西区)を構えて、主に(ビジネス向けの)ThinkPadシリーズの開発を行っています。日本のユーザーがPCに求めるものは、ワールドワイド向けの製品にどういった影響を与えているのでしょうか。


ユー氏 レノボ・ジャパン(日本法人)の大和研究所の開発チームには、日本人が多く所属していますし、日本市場に関しても非常に詳しいです。


 例えば彼らに「日本人の多くはとても小さくて軽いノートPCが好きで、常にノートPCを持って仕事に行ってるんだよね?」と聞いたところ、「日本のノートPC需要の大半は持ち運びを考慮していない15.6型モデルで、会社での仕事はその日のうちに終わらせて、会社にノートPCを置いたまま帰宅する人がほとんどだ」と言うのです。これは、私からすると大きな驚きでした。


 しかし、日本市場がPCに求めるものとして重要な「品質と丈夫さ」は、ワールドワイドの製品にも生かされています。例えば、ミリタリーグレードの耐衝撃性能や耐環境性能を実現したり、優れた性能と長時間のバッテリー駆動を両立したりといった部分は、ワールドワイドでも広く求められています。そういった意味で、日本市場(の要望)は、ワールドワイドの製品に対してさまざまな影響を与えていると考えています。


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