Intel N100搭載の小型PC「AOOSTAR R1 N100」でNASをDIYしてみた 3.5インチHDDが2台搭載できる

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2024年04月01日 12:51  ITmedia PC USER

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Intel N100を搭載したNAS型のPC、「AOOSTAR R1 N100」

 筆者はこの頃、「Intel N100」プロセッサ(4コア、最大3.4GHz)を搭載した小型PCをいろいろと試しているが、最近になって「AOOSTAR R1 N100」という非常に興味深いPCが目にとまり、買ってみることにした。


【その他の画像】


 AOOSTAR R1 N100に搭載されているIntel N100は、モバイル向けの第12世代Coreプロセッサ(開発コード名:Alder Lake-N)ファミリーの中ではエントリー向けとなる。低消費電力でありながらパフォーマンスが高く、筆者も積極的にIntel N100を搭載した小型PCで自宅サーバをどんどん入れ替えている状況だ。


 参考までに、下記環境で「Unixbench」を実行した際のベンチマークテストの結果を紹介する。Intel Xeon プロセッサの「E3-1225 v5」(4コア、最大3.7GHz)と比べて、Intel N100のパフォーマンスの高さ、ワットパフォーマンスの高さは光る物がある。


テスト環境


・Intel N100(TDP 6W)、メモリ32GB


・Xeon E3-1225 v5(TDP 80W)、メモリ32GB


ベンチマーク結果


【Unixbench 1 parallel copy】


・Intel N100:2354ポイント


・Xeon E3-1225 v5:1163.7ポイント


【Unixbench 4 parallel copies】


・Intel N100:6506.3ポイント


・Xeon E3-1225 v5:3720.7ポイント


 Intel N100の紹介はこれくらいにして、今回紹介するAOOSTAR R1 N100は最近よく話題に上がる小型PCと比べるとボディーサイズがかなり大きいのに、なぜ筆者が非常に興味深いと感じたのか詳しく見ていこう。


●3.5インチHDDを2台搭載可能なNASボディーを採用


 AOOSTAR R1 N100は、ボディー上部にあるカバーを外すと、3.5インチHDDを取り付けるトレイが2つ用意されている。NASでよく見られるツールレスHDDトレイに、HDDをセットして上部から差し込むことで、Intel N100を搭載するような小型PCの弱点であった大容量のストレージが搭載しにくい、というデメリットを補えるようになる。


 メーカーとしては、オールインワン小型PCとうたっているが、NASのために生まれたようなPCだと個人的には感じた。そのため、今回はこのAOOSTAR R1 N100を使ってNASをDIYしてみたので、本記事で詳細をご紹介しよう。


●NVMe SSDやメモリを搭載する


 今回購入したモデルはSSDもメモリも搭載されていない構成だったので、ケースを空けてSSDとメモリを搭載する必要がある。まずは底面にある4つのプラスねじを外してケースも外せるようにした。


 底面のプラスねじを外したら、あとはケースを上に持ち上げるだけで内部にアクセスできるので、SSDとメモリの換装も簡単に行える。


 Intel N100の小型PCはファンレスが主流だが、AOOSTAR R1 N100は3.5インチHDDを2台搭載できるためか、CPUファンと大きなヒートシンクが採用されている。


 NVMe SSDとメモリはCPUファンが付いている側の反対にそれぞれスロットが用意されている。自作PCと同じように装着すれば完了だ。AOOSTAR R1 N100は底面に90mm、厚さ15mmのPWMファンが搭載されているが、静音性やパフォーマンス向上のために「Noctua NF-A9x14 PWM」へ換装している。


●日本国内で利用する際に注意すべき事


 AOOSTAR R1 N100にはIntel AX201 Wi-Fiモジュールが搭載されており、Wi-Fi 6とBluetooth 5.2が利用できるしかし、筆者が2024年1月に購入したモデルに搭載されたモジュールには技適(技術基準適合証明/技術基準適合認定)のマークが載っていなかった。本体にもマニュアルにも記載が無かったため、恐らく技適の認証がなされていないと思われる。


 今回NASとして利用するため、Wi-FiやBluetoothの利用はそもそも想定していないので、電源を入れる前にモジュールの取り外しを必ず行う必要があるため注意が必要だ。ボディーの中身が詰まっている関係から、カバーを閉じるとアンテナケーブルがマザーボードに接触してしまうため、アンテナケーブルのコネクターを絶縁処理することも忘れず行いたい。


●2.5G LANを2ポート搭載


 製品ページには2.5G NICを2ポート搭載と記載されており、確かに背面を確認するとRJ-45ポートが2つ搭載されていることが分かる。ただ、採用されているイーサネットコントローラーの情報が一切記載されておらず、NASのようなサーバとして動作させるのであれば、どのコントローラーが採用されているか最低限確認しておきたい。


 AOOSTAR R1 N100に後述するNASシステムをインストールした後に、udevadmコマンドを使って確認したところ、ID_VENDOR_IDが「0x8086」、ID_MODEL_IDが「0x125c」であることが分かった。つまり、採用されているイーサネットコントローラーは「Intel I226-V」のようだ。


 Intel I226-Vであれば、LinuxのIgcドライバでサポートされているので、新規でLinuxサーバを構築するのであれば、基本的にインストール用イメージをダウンロードしてブートするだけで問題ない。


●OpenMediaVault 6のインストール


 今回はAOOSTAR R1 N100をNASとして利用するので、Debian系のフリーのNASシステムであるOpenMediaVault 6(以下OMV6)を採用することにした。


 Intel N100端末にLinux OSをインストールしようとすると、X Window Systemが内蔵グラフィックスに対応していないため手を加える必要があるが、OMV6では、TUI(テキストユーザーインタフェース)でインストールが進むので、特に手を加えずにインストールできる。


 OMV6のインストールが完了したら、ブラウザ経由でAOOSTAR R1 N100に割り振られたIPアドレスへアクセスすると、ログイン画面が表示される。でUser nameに「admin」、Passwordに「openmediavault」と入力して「Log in」をクリックすればOMV6の管理コンソールにログインできる。


 ログイン後に右上の人アイコンをクリックして、「言語」→「日本語」をクリックして言語設定を変更した後、「パスワードの変更」から必ず初期パスワードの変更を忘れずに行いたい。


 これでOMV6の導入が完了したので、最低限設定しておきたい項目について、概要をピックアップしていこう。


●ソフトRAID構築とSMB/CIFS共有設定


 OMV6をインストールしただけでは、システム用として使ったNVMe SSDしか認識されていないので、以下の4点を設定する必要がある。


・ソフトウェアRAIDの設定


・ファイルシステムの作成


・共有フォルダの作成


・SMB/CIFSの設定


 ソフトウェアRAIDの設定は「ストレージ」→「ソフトウェアRAID」メニューをクリックし、AOOSTAR R1 N100に接続したHDDを選択してソフトウェアRAIDの設定を行う。


 AOOSTAR R1 N100にはHDDが2台搭載できるので、同じサイズのHDDを接続して「Mirror(ミラーリング)」として設定すると良いだろう。


 ソフトウェアRAIDの設定が完了したら、「ストレージ」→「ファイルシステム」メニューをクリックし、先ほど設定したソフトウェアRAIDで作成したMD RAIDデバイスにEXT4ファイルシステムを作成し、マウントまで行う。


 ファイルシステムを作成すれば、OSからはファイルの読み書きができるようになるが、NASとして利用するのであれば、さらに共有フォルダの作成が必要となる。「ストレージ」→「共有フォルダ」メニューをクリックし、共有フォルダの作成を行う。


 これで、クライアントPCからファイルを置くための共有フォルダが作成できたので、最後にWindows PCから、共有フォルダとしてアクセスできるようにしていこう。


 「サービス」→「SMB/CIFS」→「共有」メニューをクリックし、先ほど作成した共有フォルダを指定してSMB/CIFSの共有設定を行う。ここまで設定すればadminユーザーでSMB/CIFS共有アクセスできるようになる。


 SMB/CIFS共有を複数ユーザーで行いたい場合は、必要に応じて「ユーザー」→「ユーザー」メニューからユーザーアカウントを作成し、共有フォルダへのアクセス権限を設定しよう。


●SMB/CIFS共有以外にも幅広いサービスが使えるOMV6


 NASのコアサービスとなるSMB/CIFS共有設定について概要を紹介してきたが、OMV6はファイル共有以外にも幅広いサービスが利用できる高性能なNASシステムだ。利用できるサービスは多岐にわたるので主なサービスを紹介しよう。


 まず、最近の大手NASメーカーではエントリーレベルの製品でも仮想マシンを作成できるようになっているが、OMV6はどうだろうか。


 OMV6もOMV-Extrasを追加導入すれば、仮想マシン(KVM)環境も利用可能だ。特にIntel N100はEコアしか搭載されていないが、Xeon E3-1225 v5より高いパフォーマンスを発揮する。仮想マシン(KVM)環境も難なく利用できる。


 消費電力がXeon E3-1225 v5と比べて非常に小さいにもかかわらず高いパフォーマンスを発揮できるので、AOOSTAR R1 N100でOMV6を利用する大きなメリットの内の1つといえるだろう。


 あくまで筆者の感覚値で恐縮だが、メモリを16GB搭載している場合、Windows Server仮想マシンを2台、Linux仮想マシンを2台くらいであれば何ら問題無く動作する。そのため、NASと仮想マシン環境を1つにして利用できるため、わざわざ端末を分ける必要もないので省スペースで済む。


 「仮想マシン(KVM)環境も動作するのであれば、Dockerも導入できないか」と考える方もいるかと思うが安心してほしい。Dockerを使ったコンテナサービスももちろん利用可能だ。Dockerを導入するのであれば、GUIでDocker環境を簡単に管理できるPortainerを導入することをオススメする。


 今回は、Intel N100小型PCの弱点であった、大容量ストレージを気軽に利用できないというデメリットを解消したAOOSTAR R1 N100でNASをDIYしてみた。本記事で構築したDIY NASは今でも筆者のメインNASとして利用しており、特に大きな問題も発生せず快適に利用できている。


 既製品と比べると何か問題が起きた場合、自分自身で対処する必要はあるが、イニシャルコストを抑えながら自分好みのNASを構築できるので、興味がある方は一度是非試してみてほしい。


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