液冷システム搭載モデルも! 新冷却機構でよく冷えるゲーミングPC「Legion」「LOQ」の新モデルはどこが変わった?

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2024年04月08日 12:11  ITmedia PC USER

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APAC地域におけるゲーミングPC事業の責任者であるクリフォード・チョン氏(イベントの基調講演で撮影)

 Lenovoは3月27〜28日、アジア太平洋地域のコンシューマー事業に関する説明会「Lenovo Innovate '24」をタイのバンコクで開催した。本イベントでは、1月に米ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2024」に合わせて発表したプレミアムブランド「Yogaシリーズ」と、ゲーミングブランド「Legionシリーズ」「LOQ(ロック)シリーズ」の詳細が紹介された。


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 本イベントに合わせて、同社は日本を含むアジア太平洋(APAC)地域におけるゲーミングPC(Legion/LOQシリーズ)事業の責任者であるクリフォード・チョン氏に対するグループインタビューを開催した。LenovoがゲーミングPCに対してどう取り組んでいるのか、同氏が基調講演で話したことと合わせてお伝えする。


●今シーズンのLegion/LOQノートは「背面放熱」の効率を改善


 Legion/LOQシリーズの最新ノートPCでは、最新の本体冷却システム「Coldfront Hyperchamber」が採用されている。


 ゲーミングPCには、非常に高性能なCPUやGPUが搭載されている。これらが発する熱をどう処理するか――ゲーミングPCでは、この問題をどう解決するかが、パフォーマンスを左右する。


 とりわけ、部品が密集して内部スペースにも限りがあるゲーミングノートPCでは、これが大きな課題となる。ハイエンドモデルを見てみると、背面だけでなく側面にも排気口を用意して排熱するケースも少なくない。少し言い方を変えると、フルパフォーマンスを維持するには、背面と側面の“両方”から排熱しないと追いつかないということでもある。


 その点、Coldfront Hyperchamberは背面排気のみで優れた冷却性能を実現していることが大きな特徴だ。チョン氏は、基調講演において時間を掛けて本機構を説明していた。


 Coldfront Hyperchamberは、デュアルファンに複数のヒートパイプを組み合わせた冷却システムだ。これだけを聞くと何の変哲もないように思えるが、最大の特徴として本体内部にもエアフローを確保している点がある。


 一般的なノートPCの冷却システムは、ファンのエアフローをヒートパイプと繋がるヒートシンクに向かって確保する。それに対して、Coldfront Hyperchamberでは本体内部のファン側面にあえて穴を開けて、本体内へのエアフローを確保している。


 さらに、内部の空気を届かせる空間には“隔壁”を設け、熱を持った空気が漏れることなく排気口に向かう「密閉空間」としている。ファンから空気が届くと、密閉空間の気圧は周囲よりも高くなる。この気圧差をうまく使って、エアフローの効率を高めているのだという。


 隔壁の内側には、CPUやGPU、電源回路、メモリなどといった発熱しやすいパーツを集中配置している。エアフローの工夫と組み合わせることで、背面排熱だけでも高効率な放熱を実現したのだ。


 チョン氏によると、このColdfront Hyperchamberを搭載するLegionノートPCは、電力が25W増えた状態でも従来モデルと比較して本体の表面温度が2度低く、ファンノイズも2dB低減するという。


 実際に、Coldfront Hyperchamberを搭載する2024年モデルと、従来の空冷システムを搭載する2023年モデルを利用した比較デモを見る限り、新冷却機構を採用する2024年モデルの方が高負荷時の動作音がはるかに静かで、キーボード面に触れても温度が低かった。これは、ファンがより低回転でも十分な冷却が行えている証拠で、Coldfront Hyperchamberの効果はてきめんだ。


 その上で、チョン氏は「従来はLegion ProとLegion 9iでのみ『Core HXプロセッサ』を採用していたが、最新モデルではLegion(ノートPC)の全シリーズにCore HXプロセッサ(第14世代)を搭載した。これは、Coldfront HyperchamberでCore HXプロセッサの発熱に対応できるようになったからだ」という。


 他社では「Core Ultraプロセッサ(シリーズ1)」を搭載するゲーミングノートPCが登場している。一方で、Legion/LOQノートPCの2024年モデルには、同CPUを搭載するモデルが用意されていない。


 これから「AI PC」が盛り上がりそうな中、LenovoはなぜCore Ultraプロセッサの採用を見送ったのだろうか。


●「ゲーミングPC」と「AI」の関係性、どう考える?


 Lenovoといえば、コンシューマー向けのプレミアムブランド「Yogaシリーズ」ではNPUを統合したCore Ultraプロセッサ(シリーズ1)を採用し、AI PCであることを積極的にアピールしている。


 それに対して、Legion/LOQシリーズにCore Ultraプロセッサ(シリーズ1)搭載モデルはない。しかし、これはLenovoがゲーミングPCにおけるAIを軽視していると受け取るのは早計だ。グループインタビューで、チョン氏はゲーミングPCにおけるAIについて以下のように語っている。


 現在のRPGでは、ゲーム内の操作できないキャラクター(いわゆるNPC)と話をする場合、プレーヤーの問いに対して、あらかじめ設定されている返答しかできません。しかし、AIを活用すれば、実際に存在している人と同じように、NPCとチャットで会話が行えるようになると思います。 ゲームの状況に応じてAIが自然な言葉を作成し返答できるようになると、ゲームへの没入感は大きく高まるでしょう。ゲーミングでのAIの可能性は、こういった部分にあると考えています。


 加えて、AIという観点では、LenovoはLegion/LOQノートPCの一部に独自のAIチップ「Lenovo LA AI chip」を数年前から搭載している。今回の新モデルにも同チップが採用されており、システム動作の効率化に使われている。


 チョン氏によると、Legionシリーズでは同チップがCPUやGPUや冷却システムの動作や各種センサーの挙動を監視し、それらの動作を最適化することで最大限の性能を引き出しているという。これを「Legion AI Engine+」として訴求していくとのことだ。


 チョン氏とのグループインタビューでは、これ以外にもいくつか質疑応答が行われた。簡単ではあるが、主なやりとりを紹介する。


―― 日本市場におけるゲーミングPCの位置付けについて、どのようにお考えでしょうか。


チョン氏 日本は家庭用ゲーム機の本拠地といっていいと思います。そのこともあり、日本では多くの人が家庭用ゲーム機でゲームを楽しんでいると考えられています。


 しかし、近年は日本でもPCゲーム人口が増加しているのは間違いありません。実際に、当社のLegionシリーズは2023年、日本で驚異的な成長(販売台数の増加)を遂げました。日本にもPCゲームが好きなゲーマーが多数いるということです。


 また、日本にはゲーム開発者が多く、日本語で開発され日本だけで販売されるゲームも数多く存在します。レトロゲームが好きなゲーマーが多いことも特徴だと思います。そういったところは非常に素晴らしいことですし、ゲーミングPC(の普及)において重要な要素だと思います。


―― 新しい「Legion 9i」には、世界初となる内部循環型の液冷システムが採用されてます。そちらにはどのようなメリットがあるのでしょうか。


チョン氏 Legion 9iに搭載した液冷システムは、デスクトップPCにおける液冷(水冷)システムとは大きく異なります。利用する液体の量は非常に少ないですし、CPUやGPUをより効率良く冷却することを目的とするものでもありません。


 ゲームプレイ中は描画の状況によって、CPUやGPUの稼働率が常に変動します。CPUやGPUの処理が多くなると、当然発熱が大きくなり急激に温度が高まります。すると、CPUやGPUがそれを察知して、動作クロックを下げてしまいます(いわゆる「サーマルスロットリング」)。


 今回Legion 9iに搭載した液冷システムは、CPUやGPUの急激な温度上昇を抑えることを目的として搭載されました。液冷システムで温度の急上昇を抑えることで、動作クロックが安定し、快適なゲームプレイを実現します。


―― Legion/LOQシリーズは、(デスクトップモデルも含めて)どちらかというとゲーミングPCらしくないデザインの製品が多いように思えます。何か意図があるのでしょうか。


チョン氏 我々は、常にユーザーの声を聞いています。そういった中で「ゲーミングPCらしいデザインが好き」という人もいれば、そうではない人もいます。私自身は「いかにもゲーミングPC」なデザインよりも、「シンプルなデザイン」が好きです。


 Legion/LOQでは「ゲーミングPCらしいデザイン」「RGBライティングを多く取り入れたデザイン」「シンプルなデザイン」といった感じで、多くのユーザーに対応できるようにラインアップを整えています。


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