据え置きカーナビが売れなくなる心配はない? スマホアプリに参入したパイオニアに聞いてみた

0

2024年04月09日 14:41  ITmedia Mobile

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia Mobile

パイオニアが2023年9月にリリースしたスマホ専用カーナビアプリ「COCCHi」

 車やバイクで目的地に向かうとき、スマートフォンのカーナビアプリを利用することは全く珍しいものではなくなった。実は「スマホでカーナビ」が普及してから既に10年以上が経過している。iOSやAndroidにプリインストールされている純正マップアプリのカーナビ機能は使いやすく進化し続けているし、各社から登場している専用カーナビアプリも機能性に優れている。量販店などに足を運べば、車両にスマホを安定して取り付けられるアクセサリーも豊富だ。


【その他の画像】


 そんなカーナビアプリと、据え置き型カーナビそれぞれのメリットデメリットはいくつもあるが、2023年9月にちょっとしたトピックがあった。それは据え置き型カーナビメーカー大手のパイオニアが、スマホ専用カーナビアプリ「COCCHi」をリリースしたことだ。


 カーナビメーカーがスマホアプリをリリースすることはこれまでもあったが、据え置き型カーナビとの連携を前提としたコンパニオンアプリなどが多く、純粋なカーナビアプリをリリースしたのは珍しい。


 昨今の流れからして「据え置き型カーナビが売れなくなってしまうのでは?」と余計な邪推をしてしまいそうになるが、どのような意図があるのか。パイオニアに聞いてみた。


●DIN非対応の新車や、カーナビ専用機を使ったことがない若者の増加


―― まず、カーナビメーカーとしてスマホのカーナビアプリに参入した狙いを教えてください。


パイオニア 長年に渡りカーナビを開発/販売する中で、高度な技術およびユーザーのフィードバックを含めた経験値を蓄えてきました。その使いやすさ、見やすさ、正確さについてお客さまから高い評価をいただいております。


 しかし昨今、DIN(カーナビやカーオーディオを装着するスペースの統一規格)装着できる新車の減少や、車内でスマホの利用が増えるなど、車における環境が著しく変化しています。「過去にパイオニアのカーナビを使っていたが、それらの理由で今は使えない/使っていない」という方がいらっしゃいます。


 また、若者を中心にスマホのカーナビアプリを主に使っていて、パイオニアのカーナビに触れた事が無い方も多数いらっしゃいます。そのような方にパイオニアのナビゲーションを使っていただいて、その良さをより多くの方に実感して頂きたいとの思いからカーナビアプリへの参入を決めました。


―― 「COCCHi」はどのようなユーザーをターゲットにしていますか。


パイオニア まずはパイオニアのカーナビを使っていた、もしくは現在使っている方をターゲットとしています。また、他のカーナビアプリを使っているが狭い道路を案内されてしまったり、地図の見え方などにちょっとした不満をお持ちだったりする方も対象になると考えております。


●カーナビアプリは据え置き型カーナビの売り上げに影響を与える?


―― 「COCCHi」が、自社の据え置き型カーナビ(サイバーナビ、楽ナビ)の売り上げに影響を与えるか、どのようにお考えですか。


パイオニア 当初、社内でもその様な懸念の声が挙がっていました。しかし、企画段階の調査において、車載専用機にはオーディオやDVD/地デジの視聴などハードウェア全体としての価値があり、ナビゲーションという機能や価値だけで購入されている訳ではないことが分かりました。


 現時点でもカーナビアプリへ参入したことによる車載専用機の売り上げへの影響はほとんど出ていないと認識しています。また、COCCHiの登録者アンケートからも、パイオニアのカーナビと併用されている方も多くいらっしゃることが分かっております。


―― 「COCCHi」において、無料プランと有料プラン(月額350円)を用意した意図を教えてください。


パイオニア “パイオニアのナビゲーション”という価値に対して対価を頂くビジネスモデルを主と考えています。そのためには、まずナビゲーションの良さを多くの方に体験して頂く必要があると考え、無料プランと有料プランの1カ月無償体験を用意しました。


―― CarPlay/Android Auto対応など、機能追加を積極的に行われていますが、今後はどのように進化させていきたいと考えていますか。


パイオニア COCCHiはナビゲーションというアセットを車載機器ではなくクラウドに構築するため、幅広い展開が可能だと考えています。


 運転中に困った事を解決する機能や個人に合わせて成長していくパーソナライズ化、コンシューマーのみならず配送業務などに利用できる機能、EV向けやCO2排出問題を解決する機能なども考えています。


 また、4輪だけでなくβ版を提供している2輪向けの「MOTTO GO」や、歩行者向けなどマルチモーダル化も可能です。弊社は“未来の移動体験を創ります”という企業ビジョンを掲げておりますが、移動社会に貢献できるさまざまな新しい機能/価値を提供していきたいと考えています。 


●ユーザーに選んでもらうきっかけ作りが重要か


 パイオニアはカーナビ・カーAVブランド「カロッツェリア」として、サイバーナビや楽ナビといった人気製品を生み出してきた老舗でもある。カーナビとしての実力は抜群に高いのは間違いない。現状の課題は、無料で“それなり”に使えてしまう他社カーナビアプリのユーザーから、「お金を払ってでもパイオニアのナビを使いたい」と選んでもらう必要があることだろう。


 カーナビアプリの機能比較は日常的に使い込んでいないと難しいからこそ、まずはユーザーにアプリのインストールを促して使ってもらう“最初の一歩”が重要そうだ。


 個人的にはパイオニアのノンストップミックス再生アプリ「MIXTRAX」(2023年に提供終了)が好きだったので、何かしらの形で再びアプリとして使えるようにならないかなと思っている。


    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定