狭い「水槽」の中で育って…悪徳ブリーダーから救われた2匹の猫 愛あふれる新生活、虎太朗くんはがんも克服

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2024年04月10日 12:40  まいどなニュース

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虎太朗くん(左)とすももちゃん

「すももは、お父さん大好きっ子。隣を死守し、席を立つと鳴きながら追いかけます。虎太朗は動物病院の待合室で気に入っている看護師さんの声が聞こえると、キャリーケースから頭を出して探すんです」

【動画】抗がん剤治療を頑張る虎太朗くん

愛猫たちのかわいい瞬間を、そう話す飼い主・すみれさん。今の日常に目を細めるのは、すももちゃん(スコティッシュフォールド×マンチカン)と虎太朗くん(ノルウェージャンフォレストキャット×マンチカン)が乗り越えてきた壮絶な日々を知っているから。

実は2匹、狭い水槽で育てられた過去が。動物保護団体「この子のあした」にレスキューされ、伸び伸び過ごせる日常を手に入れたのです。

狭い水槽で育った2匹の保護猫と家族になった

すももちゃんとの出会いは、保護猫カフェ。当時、5匹の先代猫を見送った飼い主さんは久しぶりに夫婦で旅行。船旅のため、大阪府の泉大津を訪れました。

予定より早く到着したため、飼い主さんはひとりで近くにある保護猫カフェ「ねこんチ」へ。すると、店内に先代猫を彷彿とさせる子が。それこそが、すももちゃんでした。

飼い主さんは、すぐ旦那さんに連絡。人の手が届かない高所で退屈そうに過ごす姿が気になりました。

「すももは私にも他のお客さんにも塩対応だったのに、なぜか主人には好意的でした(笑)」

飼い主さんは、すももちゃんが悪徳ブリーダーのもとにいたことや水槽で暮らしながら子育てしていたことを知り、お迎えを決意。

「水槽で育ったことから、今後の足の状態や病気などが心配になったので、何かあった時、力になってあげたいと思ったんです」

その後、飼い主さんはすももちゃんを保護してくれた保護団体「この子のあした」のシェルターへ。成猫なのに2kgほどしかない小さなすももちゃんにパワーを授けたいと考えていたところ、大らかで生命力あふれる虎太朗くんを紹介され、お迎えを決意しました。

虎太朗くんも、水槽で育った子。すももちゃんと血のつながりはなく、5弟妹で保護されました。

遠方から来ていた飼い主さんはトライアル代わりに、「ねこんチ」で1カ月ほど2匹の相性を確認。その後、自宅へ迎え入れました。

大らかな性格の虎太朗くんが秘めていた繊細さ

人見知りで神経質そうに見えたすももちゃんは意外にもお迎え後、すんなり新しい環境に適応。お迎え当日からトイレや水飲みを使いこなし、まるでずっと飼い主さん宅で暮らしていたようにリラックスしてくれたそう。

対して、大らかだと言われていた虎太朗くんには繊細な一面が。ひと月ほど、夜鳴きやトイレの失敗が見られました。

「保護猫カフェではたくさんの仲間に囲まれ、かわいがってもらってもいたので寂しかったみたいです。けれど、たくさん遊んであげるようにしていたら落ち着いてくれました」

身動きが取れない狭い水槽に5kgのボディを押し込められていたからか、虎太朗くんは後ろ足の踏ん張りが弱く、疾走時に空回りすることも。

しかし、家での生活に慣れてくると、遊びたくて、すももちゃんを全力で追いかけ、元気に構ってアピール。年上で運動神経のいいすももちゃんにヒラっとかわされては挑む日々を送るようになりました。

その後、飼い主さんは「ねこんチ」から新たに、ほたるちゃんというサビ猫をお迎え。

ほたるちゃんは、長足タイプのマンチカンだったことから、悪徳ブリーダーにネグレクトされていた子。お迎え後、虎太朗はほたるちゃんにべったり。仲睦まじい姿を見せてくれるようになりました。

多頭飼いライフを楽しむ中で発覚した愛猫のがん

3匹の猫を迎え、賑やかな暮らしを楽しんでいた飼い主さん。その日常が一変したのは、すももちゃんたちをお迎えしてから3年後のこと。くしゃみをしたり鼻を痒がったりする虎太朗くんの行動が目立つようになったのです。

「毎年、春になると似た症状が出ていたのですが、片鼻から血が出たので、かかりつけ医に診てもらいました」

すると、「鼻腔内リンパ腫」であることが判明。日本小動物医療センター付属日本小動物がんセンターで治療計画を立て、抗がん剤と放射線を併用して治療を行うことになりました。

病気を早期発見できたのは、かかりつけ医であるピジョン動物愛護病院に鼻腔内リンパ腫の治療をしていた猫ちゃんがいたから。CT検査やMR検査の予約がなかなか取れず、治療開始までには2カ月の月日を費やしました。

「予約が取れるのを待つ間、虎太朗は呼吸が苦しくて寝られない時期もあったので、酸素室セットを購入。ほたるが大活躍してくれたのですが、家族みんなで虎太朗の体を保定し、仮眠をとっていました」

虎太朗くんは若くて体力もあっため、強めの抗がん剤をピジョン動物愛護病院にて週1回×9回、投与。日本小動物医療センター付属日本小動物がんセンターではピンポイントに放射線を当てられる機械が導入され、放射線での治療回数が大幅に減らせるようになったそうで、虎太朗くんの場合は入院し、全5回の放射線治療を行いました。

「維持期は、抗がん剤を2週間に1回×8回投与しました。褒められるのが大好きな虎太朗は、お気に入りの看護師さんに格好つけたい一心で積極的に治療へ参加してくれました」

適切な治療により、虎太朗くんのがんは見事寛解。現在は誰よりもおいしそうにいい音させながらフードを味わうなど、幸せな日々を過ごしています。

「治療が順調に進み、寛解に至ったのは病院関係者さんと、携わってくださったみなさんのおかげ。喫煙者がいないのに鼻腔内リンパ腫が発症したのは、もしかしたら幼児期のストレスや危険な交配に原因があるのかもしれません」

劣悪な環境から救われ、我が子として迎えられて本当によかった。そんな喜びを噛みしめる飼い主さんは縁があって出会えた宝物のような命を、これからも守り続けていきます。

出会う人によって、その子のニャン生は大きく変わる――。すももちゃんや虎太朗くんの生い立ちと今を知ると、そんな言葉が頭に浮かび、自分にできる猫の守り方を考えたくなります。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)

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