【漫画】顔を出したくない少年と優しいお兄さん……コンプレックスと純愛を描いた創作漫画が尊い

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2024年04月15日 12:10  リアルサウンド

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『顔を出したくない少年と優しいお兄さんの話』より

 自分のコンプレックスを全く気にせず、愛情を注いでくれる人に出会えたらーー。3月上旬にXに投稿された『顔を出したくない少年と優しいお兄さんの話』は、年齢も立場も超えた純粋な愛情を描いた創作漫画だ。


(参考:漫画『顔を出したくない少年と優しいお兄さんの話』を読む


 ベビーシッターとして男の子の世話を依頼された若者・ベン。コンプレックスの顔を隠すために頭にダンボールを被っている少年・クレッグが出迎える。頑なに顔を見せないクレッグの顔を見ようと可愛い“嘘”をつき、ダンボールを脱がせることに成功。クレッグは怒り心頭するが、徐々にベンに心を許していく――。


 学生時代は自己満足で漫画制作を実施していたものの、社会人になって以降は10年以上制作から遠ざかっていたという作者の坂野道さん(@michisakano)。体調を崩して仕事を休んだタイミングで、漫画制作が好きだったこと思い出して再びペンを持つようになったと話す。独特の色気をまとった本作をどのようにして描いたのかなど話を聞いた。(望月悠木)


■クレッグが赤髪だった理由


――なぜ『顔を出したくない少年と優しいお兄さんの話』を制作したのですか?


坂野道:ハロウィンの日に単発でオバケの仮装で顔が見えない少年がお兄さんにグイグイ行く1ページ漫画を描いたのですが、「その時の2人をストーリー化してみよう」と思ったことがキッカケです。ただ、その1ページ漫画とは全くの別物になりました。


 もともと海外の子供の友情や成長を描いた作品が好きでよく見ていました。同年代同士の物語も大好きですが、年齢や境遇の違う二人が出逢ってお互いに良い影響を与えていく物語を好んで見ていた過去もあり、それを思い出して「自分でも描いてみよう」と思いました。


――だから海外が舞台だったのですね。


坂野道:どちらかというと、この年齢差なら「ベビーシッターとして出会うほうが自然では?」と考えたことが大きいです。「高校生がアルバイトでベビーシッターをするのが当たり前の世界線ならやはり海外かな」と。


――ベンとクレッグはどのようにして生まれたのですか?


坂野道:まずクレッグから浮かびました。『にんじん』や『赤毛のアン』といった小説が好きだったので、赤毛の主人公にした部分はあります。とはいえ、そうした作品の主人公のような性格にすると強く逞しくなってしまうため、優しくて弱い性格にしました。


――一方、ベンは?


坂野道:王道の清潔感のある人当たりのいい青年にしたかったので、ビジュアルは私の好きな海外俳優さんを集めて凝縮した感じです。性格は「スクールカースト上位だけれど、誰にでも優しくて男女問わず人気のある」みたいな青春映画の主人公を意識しました。はっきり言ってしまうなら『ハイスクールミュージカル』のザック・エフロンです。


■ダンボールを被っていた深いワケ


――なぜ顔を隠すためのアイテムとしてダンボールを選んだのですか?


坂野道:自分の顔が原因で意地悪されていることを母親に知られてしまうと、「母親がショックを受けてしまう」とクレッグは心配しています。とはいえ、顔は隠したい。年齢的に自分のお金で顔を隠すアイテムを買うことはできず、かといってあからさまに顔を隠せるアイテムをほしがると母親に気づかれてしまうかもしれません。


――クレッグの心理を紐解いて段ボールにいきついたと。


坂野道:はい。当たり前に家庭にあり、なおかつ小さい子供が母親に「使ってもいい?」と聞いても不自然ではないアイテムとしてダンボールになりました。こういったクレッグの心理を想像して「ダンボールなら自然だろう」と思ってダンボールを被ってもらいました。


――ベンは自己評価の低いクレッグに愛情を注ぎ、元気づけます。「じゃあ僕が大人になった結婚して 僕が会った中で一番優しい人」というピュアな言葉もあり、双方が特別な感情を抱いていきますね。


坂野道:ベンもクレッグに特別な感情を抱きますが、2人のやりとりや背景を見てくれた読者さんに、ベンの気持ちは「特殊な性癖などではなく純愛である」と意識してもらうため、プロポーズも最初のキスもクレッグからしています。


――最後に今後はどのように漫画制作をやっていきたいですか?


坂野道:少しでもたくさんの“好き”を形にできたらと思っています。そのために日々学んで描いてまた学んで、なにより楽しく描き続けていきたいです。


(望月悠木)


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