手術で死んだウサギは「家族同然」…病院側に66万円賠償命令 京都地裁がペットに「高額慰謝料」を認めた理由【弁護士が解説】

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2024年04月16日 20:10  まいどなニュース

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獣医師から十分な説明がないまま受けた手術で… ※画像はイメージです(NiDerLander/stock.adobe.com)

 先日、獣医療過誤でウサギを喪ったことについて慰謝料60万円が認められたというニュースが各所で報じられました。

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 ペットは法律上「物」として取り扱われています。そして、通常、物を壊されたことに対する慰謝料は発生しません。これは、物の賠償額=価値とはあくまでその物の経済的な価値である、という考え方が背後にあるためです。

 しかし、最近では、ペットになにかしら被害があった場合は、飼い主に慰謝料が認められるようになってきています。ペットは単なる「物」ではない、大切に飼養されているペットは家族の一員である、という考え方が、裁判所にも少しずつ浸透してきているのです。もっとも、慰謝料の額はせいぜい10万円程度というのが現実です。

 この点で、原告夫婦合わせて60万円(各自30万円)の慰謝料が認められた、という裁判結果は耳目を引くもので、そのため多数の報道がなされました。

 そこで私は、この判決を閲覧してまいりました。京都地方裁判所令和6年3月26日判決です。特定を防ぐため、一部の事情を簡略化しています。

食欲不振を起こしたため受信した動物病院で…

 この裁判は、ウサギを飼っていた原告夫婦が、ウサギに外科手術を受けさせたところ、術中に死亡してしまったため、担当医らを被告として、慰謝料各々300万円ずつ、弁護士費用各々30万円ずつの、合計660万円の支払いを求めて起こしたものです。

 原告夫婦は、平成30年にウサギを迎え入れました。ウサギのために広い家に引っ越すほどに、ウサギをかわいがっておられたそうです。

 令和3年8月15日、ウサギが食欲不振を起こしたため、被告の動物病院を受診、翌16日にCT検査をしたところ、腸管内に異物が発見されました。

ウサギ自身はそこまで衰弱した様子を示していなかったのですが、被告動物病院の担当獣医師は外科手術が必要と判断し、直ちに外科手術することを原告夫婦に勧めました。

 原告らは、様子見をしたいと手術を拒否したそうですが、担当医は「このままでは腸が破れて死に至る危険がある」「手術するならば今日したほうが救命できる」「自分の子供だったら今すぐ手術する」などといったことを述べて外科手術を強く勧めてきたため、最終的には手術に踏み切ることになりました。

 もっとも、ウサギの食欲不振(食滞)は、誤飲等で何かが詰まった物理的要因によるものと、ストレスなどによる機能的なものがあるそうですが、後者の場合外科手術は禁忌とされていますし、そもそも開腸手術自体が、危険性の高いものでした。

 しかし、原告夫婦は、担当医からそのような説明は受けず、したがってそのような事実を知らないままに、外科手術に同意したのです。

 そしてウサギは開腸手術を受けましたが、腹部腸管を切開中に心拍が低下し、そのまま死亡してしまいました。

裁判所の判断は…「獣医師としての説明義務に違反」

 裁判所は、概略、以下のように判断しています。

   ◇   ◇

  ウサギの食滞には様々な原因があり、必ず手術しなければならない症状ではない。ウサギは当日も著しく衰弱はしていなかったのだから、獣医師としては内科的治療を継続する選択肢も当然あったはずである。

 そうだとすれば、担当医は、飼い主である原告夫婦に対して、外科手術を勧めるだけではなく、他に選択可能な治療方法(内科的治療の継続)もあること、その方法と外科手術との比較検討や予想される結果(予後)の内容等を説明して、手術について真摯な同意を得る必要があったといえる。

 ところが担当医は、外科手術が必要という結論を前提とした説明しかせず、外科手術自体の危険性の説明も、他の選択肢についての説明もしなかった。むしろ、「このままでは腸が破れて死に至る危険がある」「手術するならば今日したほうが救命できる」「自分の子供だったら今すぐ手術する」などと述べて、外科手術の選択を求めていた。

 このような態度が、獣医師としての説明義務に違反することは明らかである。

 原告夫婦がもともと手術に反対していた経緯からして、担当医が十分な説明をしていれば、原告夫婦が外科手術に同意しなかったことは明らかで、外科手術をしなければウサギは死ななかったといえるから、担当医の説明義務違反がウサギの死亡という結果を招いたといえ、担当医には不法行為責任が成立する。

   ◇   ◇

  慰謝料については、ペットがかけがえのない家族の一員と言えること、特に本件のウサギは原告夫婦から並々ならぬ愛情を受けていた存在であり、それが突然失われてしまったことへの原告夫婦の絶望感は察するに余りあるものであること、当初は謝罪していた被告動物病院側が途中から態度を冷たく豹変させたこと、といった理由から、各々30万円という額を認めました。

 また、本件では、被告動物病院側が裁判の途中で説明不足を認め、適正な賠償額を支払う意向を示しており、このことも考慮されたものと思われます。

ペットたちに注がれた愛情に見合った賠償額へ一歩

 しかし、愛情を注ぎ続けた原告夫婦にとってこの額は決して十分なものではないでしょう。

 残念ながら、ペットを喪ったことに対する慰謝料がいきなり人間並みになることは期待できません。けれども、ペットが家族の一員となって久しい現代において、本件のような裁判例が少しずつ積み重なっていくことで、その賠償額も、ペットたちに注がれた愛情に見合った金額になっていくことを願いたいと思います。

◆石井 一旭(いしい・かずあき)京都市内に事務所を構えるあさひ法律事務所代表弁護士。近畿一円においてペットに関する法律相談を受け付けている。京都大学法学部卒業・京都大学法科大学院修了。「動物の法と政策研究会」「ペット法学会」会員。

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このニュースに関するつぶやき

  • 高額な医療費で仕事するんだから、それなりの責任は求められるだろうな。安易にぼったくれると思ってたんなら大間違い
    • イイネ!2
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