Back Marketの「リファービッシュ製品」が中古と違うワケ 売れ筋はiPhone 13、バッテリー“100%保証”の計画も

0

2024年04月17日 12:51  ITmedia Mobile

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia Mobile

リファービッシュ製品は中古品よりも品質がよく、新品よりも安いことを特徴としている

 スマートフォンを中心としたリファービッシュ製品を取り扱うBack Marketが4月16日、メディア向け説明会を実施。同社が掲げるビジョンや日本における戦略を説明した。日本では成長率が世界で最も高く、一般的な中古市場とは異なる属性のユーザーが利用しているという。


【その他の画像】


●中古より品質が高く、新品よりも安いのがリファービッシュ製品


 Back Marketは、リファービッシュ製品を販売するためのプラットフォームを提供している企業。2014年にフランスで設立し、当初は欧州と米国で展開。2021年に日本で事業を開始し、現在は18カ国で事業を行っている。


 リファービッシュは日本でいうと「整備済製品」。中古品として回収した製品を検査、クリーニングし、必要に応じて修理した製品。全ての機能が正常に動作することを確認している。中古品との違いは、製品の品質を担保しているところにある。Back Market Japanの山口亮取締役は、「基本的には、中古品よりも品質が高く、新品よりも安い、いいとこどりをした製品」だと説明する。


 Back Marketが掲げるミッションは、買い取りや修理を通じて電子機器の寿命を延ばすこと。創業者であるティボー・ユグ・ドゥ・ラローズCEOは、「リファービッシュ製品を第1の選択肢にしたい」と意気込む。


 加えて、同社はリファービッシュ製品を提供することで、環境への負荷を低減することも目指している。電子機器を製造することで多量の二酸化炭素が排出されるが、リファービッシュ製品が浸透すれば、二酸化炭素の排出量を減らせる。ラローズ氏は「iPhoneの新品を生産して納品するまで、84.4kgの二酸化炭素が排出されるが、同じ機種のiPhoneでリファービッシュ製品を提供すると、二酸化炭素の排出量は7kgで済む」と例を出す。「新品ではなくリファービッシュ品を選択する度に、90%の二酸化炭素排出量を削減できる」(同氏)


 リファービッシュ製品はBack Marketが直接販売しているわけではなく、販売業者が中古製品を売るための場所を、同社が提供している。Back Marketは「販売業者」と「ユーザー」を仲介する役割を担っていると考えると分かりやすいだろう。マーティン・ウグリCCO(Chief Commercial Officer)は、「Back Marketの役割は需要と供給をマッチさせ、業界基準を作っていくこと」だと話す。この基準があることで、例えば中古端末が盗品であっても判別できるという。「Back Marketの中核には品質がある。品質があって初めて、供給と需要をマッチさせることができる」(ウグリ氏)


 Back Marketのビジネスモデルは「手数料」に基づいている。製品に販売に対して約10%の手数料を、プラットフォームの使用料として製品価格から1%未満の手数料を販売業者から徴収している。また、同社はカスタマーサポートや保証サービス、物流や決済サービスも提供しており、こられの手数料も同社の売り上げにつながっている。


 販売業者はBack Marketの厳格な審査を通過する必要があり、販売する際も、Back Marketが設けた28のチェックポイントを検証する必要がある。チェックポイントはボタン、カメラ、各種センサー、Wi-FiやBluetooth、マイク、スピーカー、タッチパネル、バッテリーなど多岐にわたる。日本では40〜50社の販売業者がBack Marketに登録しているという。


●バッテリー容量は80%以上を担保 夏には“100%保証”サービスも予定


 品質面での1つの基準が、バッテリー容量が80%未満のものは販売しないこと。「80%を切ると、デバイスの機能が劣化していると考えられる。また、バッテリーを節約するためにパフォーマンスを落とす可能性がある」(イノベーション・ラボを率いるケウィン・シャロン氏)というのが理由だ。


 ただしBack Marketでの購入時にバッテリー容量が何%かの数値は提示していない。Back Marketで販売している製品には、A〜Cの3グレードで分けられているが、バッテリー容量とは関係なく、あくまで外装の状態を示すもの。Aグレードで購入した場合でも、バッテリー容量が80%の可能性もあれば100%の可能性もある。


 あえてバッテリー容量を明記しないのは、Back MarketのWebサイトの作りにも関係している。他の中古サイトだと、例えば同じiPhoneでも、状態の異なる複数の製品を掲載しているが、Back Marketでは1つの機種で1製品しか掲載していない。1機種ごとの詳細を見たいというニーズもあるだろうが、煩雑な面もある。「それをやりたくない人もいる。それこそ、デバイスに関してそこまで関心が高くない人はやらないのでは」(山口氏)と考え、個別には掲載していない。


【更新:2024年4月18日18時20分 山口氏のコメントについて、一部、趣旨にそぐわない点があったため、修正しました。】


 ただ、Aグレードの製品を購入したのに80%のバッテリーが当たるのは納得がいかないだろう。そこで、Back Marketでは、30日以内なら他の製品と交換する保証サービスを無料で提供している(他に1年以内の製品保証もある)。「この保証があるので、安心して買っていただきたい」と同氏。


 さらに、欧州ではバッテリー容量100%を保証するグレードを提供しており、日本でも2024年夏に提供する予定だという。これは、既存の価格に数千円をプラスすることで利用できるそうで、例えば外装はCグレードでもバッテリーは100%の製品を購入することも可能になる。


●日本の成長率は世界一 売れ筋は「iPhone 12」や「iPhone 13」


 日本でのリファービッシュ市場は2.9兆円といわれており、そのうち携帯電話やスマートフォンの市場規模は700億円。全体の中では2〜3%にすぎないが、2022年から2023年の成長率は17.1%と、他のカテゴリーよりも高い数値を示している。


 一方で、日本ではまだ中古やリファービッシュの製品を所有する率が低く、Back Marketの調査では、中古・リファービッシュのスマートフォンを使用している割合は8.7%にすぎなかった。ただ、品質が高ければ中古スマホの購入を検討すると答えたユーザーが49.2%おり、中古でも品質が高いことが伝われば、成長の余地がまだある。


 実際、Back Marketの日本での取り扱いは右肩上がりに伸びており、山口氏によると、成長率だけを見れば世界一だという。ただ、日本での売り上げ比率は「1桁パーセントほど」といい、市場拡大はこれから。Back Marketは日本での事業を強化すべく、社員数を2023年から倍増して15人にした。カスタマーサポートだけでなく、エンジニアやデザイナーも日本人を採用している。「日本の需要に合わせた開発が成長の一因だと考えている」と山口氏は手応えを話す。


 そんな日本市場で特徴的なのは、Back Marketでスマートフォンを購入するユーザーの中で、若年層と女性が多いことだ。年齢で見ると18歳〜30代前後が7割、性別だと女性が3分の1ほどを占めている。これは、Back Marketのサイトに、若者が好むポップなデザインを採用していることが1つ、功を奏しているようだ。検索による流入も強化しており、例えばGoogleで「iPhone 中古」と検索すると、Back Marketのページが上位に表示される。オンラインやオフラインの広告も積極投下し、認知拡大に努めている。


 売れ筋の製品も一般的な中古スマホ市場と異なり、発売から2〜3年程度の、比較的新しい製品が売れる傾向にあるという。2023年10月〜2024年3月のベストセラーを見ると、iPhoneでは「iPhone 13」「iPhone 12」「iPhone 13 Pro」がトップ3に並ぶ。他の中古市場だと「iPhone 8」「iPhone SE(第2世代)」が売れ筋の中心だが、より新しく、スペックの高い製品がBack Marketでは売れている。


 iPhone 12は5万円台、iPhone 13は7万円台、iPhone 13 Proは9万円台なので、中古端末としては安くはない。それでも売れているのは、1台目のスマートフォンとして購入しているからだと山口氏はみる。新品よりも安く、中古よりも高品質というリファービッシュ製品のメリットが受け入れられていることがうかがえる。


●「修理する権利」の動きが活発化も、日本では「技適」の壁


 欧州ではリファービッシュ市場で追い風となる政策が決定した。2025年から、欧州で販売されるスマートフォンやPCが、誰でも容易に修理できるようにすることと、メーカーは発売から7年、製品に関わるスペア部品やパーツを保持することが義務付けられる。この件についてラローズ氏は「電子機器の供給に関わる大きな成果だ。製品の寿命をより長くできる」と歓迎する。


 こうした動きは、所有する電子機器をユーザー自身が修理可能にすべきという「修理する権利」という考えに基づく。Back Marketは、EUやフランスに対して、修理する権利の法制化に向けて、EUや政府各国に働きかけを行っており、この動きは世界中で広がっている。「米国でもこの動きは広がっており、日本でも注目が集まっている」とラローズ氏は期待を寄せる。


 ただ、日本では修理をすることでアンテナなど通信品質に関わる部分に影響を及ぼすと、技術基準適合証明等などの「技適」に違反する可能性があるため、個人で修理をすると違法になる可能性がある。


 Back Marketも当然、日本の技適に関しては理解しており、技適に違反するような修理は行っていない。「日本では、ほとんどの販売業者が修理までは行っていない。クリーニング、検査、動作検証したものをわれわれの中で売っている。修理する場合は、総務省の登録修理業者が必要に応じて修理している」(山口氏)といい、政府の認可を持っているかどうかを確認しているとのこと。


 ただ、登録修理業者に認可されるには高額な費用がかかるため、修理のハードルが高いのも事実。山口氏も課題として認識しており、「本社の渉外チームと連携し、日本ではどうやって政府と話していくか、検討を始めている」。具体的には、業界団体、他の販売者やマーケットプレースからの声を合わせて検討を重ねていくとした。


    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定