【漫画】“才能”という言葉に覆い隠された大切なこと SNS漫画『水野と彩木』が描く青春の機微

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2024年04月19日 08:40  リアルサウンド

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『水野と彩木』より

 大して努力もしていなさそうなのに、自分よりはるかに優れた成果をあげる人を見たとき、多くの人の頭をよぎる言葉は「才能/天才」ではないだろうか。しかし、その“レッテル”が覆い隠してしまうものも小さくないはずだ。3月下旬にXに投稿された創作漫画『水野と彩木』では、「才能」の差に葛藤を抱く若者の感情の機微が丁寧に描かれた作品である。


(参考:凡人と天才のそれぞれの葛藤……SNS漫画『水野と彩木』を読む


 美術部部長を務める水野は、才能に恵まれ、それでいて部活を頻繁にサボる美術部員の彩木に嫌悪感を覚えている。そんななか、美術部の先生から文化祭で彩木と2人でライブペインティングをするように提案される水野。しぶしぶ了承して彩木と接するようになると徐々に彩木に対する感情に変化が生まれる――。


 本作を手掛けたのは、将来的に本業漫画家になることを夢見て、芸術系の大学に通っているという夏頃れぬさん(@aki_renu)。若者の苦悩と成長の軌跡が描かれた青春漫画がどのようにして生まれたのかなど話を聞いた。(望月悠木)


■ライブペインティングを2人に託す


――『水野と彩木』を制作した経緯を教えてください。


夏頃:もともと“天才と秀才(凡人)”という関係性がとても好きで、「そのことを形にしたい」と思って制作しました。


――“天才と秀才(凡人)”という関係性を形にするため、なぜ美術部を舞台に選んだのですか?


夏頃:実体験をベースにしたことが大きいです。私の高校時代に所属していた美術部には、コツコツ何ヶ月もかけて作品を制作する先輩と、3日ほどで作品を完成させる先輩がいました。そして、長い間頑張って作品を完成させた前者の先輩より、3日で作品を完成させた後者の先輩が大きな賞を受賞していました。この経験を思い出し、「漫画にしよう」と考えました。


――「文化祭でライブペインティングをする」というアイデアはとても“今風”な切り口でしたね。


夏頃:高校時代に書道部の書道パフォーマンスなどを見て、「自分たちもライブペインティングがやりたい」と思い続けていました。「自分のやりたいことを水野と彩木の二人に託そう」と思って2人にライブペインティングをさせました。


――水野と彩木という2人のメインはどのように作り上げましたか?


夏頃:水野のある意味直観的で、パッと思いついたビジュアルや性格をベースにそのまま練っていきました。一方、彩木は当初はもっと明るい性格だったのですが、途中から人見知りという設定を加えたことに伴い、ビジュアルも薄いクマを入れたり前髪を長くしたりと変更していきました。


■コンプレックスに支配されている人


――水野と彩木が順調に仲良くなっていくも、彩木に絵をほめられたことをキッカケに軋轢が生まれる、という山場があったことでストーリーがより厚みのあるものになりました。


夏頃:“2人の関係性の危機と和解”をストーリーに組み込むため、和解できるギリギリのラインの危機を2人に与えられるように工夫しました。そのことが緊張感ある山場を作れたと思います。


――そういった危機があったからこそ、“才能”に囚われずに絵を描くことを楽しむ、というラストがグッときました。


夏頃:本作全体を通して水野の成長を描きたかったので、「とにかく最後は水野がちゃんと成長してしっかりとハッピーエンドで終わらせたい」と思った結果、こういった締めくくりにしました。


――彩木に絵をほめられたことに惨めさを覚える水野の心理がとてもリアルだったように感じます。


夏頃:とにかく水野が“コンプレックスに支配されている人間”であることを意識して、「コンプレックスに支配されている状態では他人の言葉はどう感じるのか?」ということを深く考えて制作しました。


――最後にこれからの創作活動の目標などを教えてください。


夏頃:今後は今以上に読切漫画を制作していく予定です。また、最近担当編集さんがつきましたので、賞獲得、読切掲載、連載獲得を目指しています。私が目指し続けている『ちばてつや賞』受賞に向けても頑張っていきたいです。


(望月悠木)


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